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佐藤は高乗車率の原因はねずみだと思っている

 その後も毎日何かに挑戦しては失敗する日々を送っていた。


そして私は六歳になった。


「クラリスは刺繍、ノエルはお勉強、シュクルは採集と薪割りね」


六歳になった私達には明確に兄妹間で格差が生まれていた。産まれた時から感じていた格差。勿論私の扱いが一番酷い。


「いいけど~!『カコン』私元大人だし~!『カコン』薪割り瞬殺だし~!「カコン』」


でも、寂しいのも事実。


「今日も元気に木の実摘みしちゃおうかな~⋯⋯」


今日も一人寂しく山へ採集へ向かう。初夏の山の中では食べられる木の実や天然芋などが採れる。それを一日中探し回って家族のために集める。一日のほとんどは食事のための労働だ。


「これだけ頑張って集めても、食べると一瞬で無くなるんだよな⋯⋯」


食事なんてコンビニに行って買って適当に食べてそれで終わりだった。不味ければ残したし、よく食べ忘れて賞味期限切れにして捨てた。


今更だが思う所はあるよな。


――カサカサ――


「ん?何だ?何かいるのかな?」


――シューシュー――


「え?動物?」


前方の木の上から音がする。


「ねずみ??デカいし⋯⋯怒ってる?ど、どうしょう?!」


とりあえず採集用のナイフでは短くて太刀打ちできないので足場の悪い時に使う木の杖を構える。


「来ないでー!今世は可愛い顔なんだから!傷できたらどうすんだよ――!」


――シャ!――


「うが!来たぁ!エイエイエイエイ」


恐怖のK点越えによりアドレナリンが出過ぎて、見境なくねずみを滅多打ちにする。


「私はな!人面ねずみ国のある町に住んでたんだよ!ウキウキでげっ歯類の耳付けて帰宅の電車に乗る人々の夢を、一瞬で冷めさせる疲れたリーマンが私だ!」


何言っているのか自分でもわからないが、ねずみに勝利した。



「これ食べられるかな?毛皮とか売れるのかなぁ?」


私はボコボコのねずみを持ち帰る事にした。


「お父さんこれ食べられる?」


「え?これヌートリア?どうしょう?お母さんに聞いてみよう」


私のお父さんはこの国の王都出身らしい。結婚してここへ来て七年。まだまだ田舎の生活をよく知らない。


「どうしたの?あら?森ねずみの中でもかなり大きい個体ね。これボスじゃないの?」


「食べられる?これ?」


「そうねぇ出来れば捕まえた後にすぐ内臓を取り出して欲しかったわね。でも刃物でぐちゃぐちゃに切られていないから毛皮も丸ごと使えるし、まぁ新鮮だから食べられるでしょう⋯⋯でもね⋯⋯」


「お、お肉!!!食べたい!!」


「あなたウサギ獣人なのに肉食べられるの?」


「え?」


「私は食べられないわ。獣臭いし、体が受け付けないの」


「そんな⋯⋯」


絶望だ。肉という名の希望を失った。


「とりあえず捌いて調理しましょう。シュクルも見て捌き方覚えなさいね」


「肉肉憎い」


「それと、あなた多分ボス個体を倒したのよ?明日から森ねずみに敵認識されるわよ。気を付けなさい」


「え?」


 それから母に肉の捌き方を教わりながら私が捌いた。血や内臓がかなり怖かったけれど、この世界で生きる以上必要なスキルだ。捌いた後、手をよく洗ったが内臓の匂いがこびりついて取れない。母が肉を嫌がる気持ちもわかった。


「今日は御馳走よ~シュクルがお肉を獲って来てきてくれたのよ」


「凄い!シュクルありがとう!」


「天使クラリスよ沢山食べてね!」


「ありがとうねシュクル」


「ウム。ノエルもしっかり食べて元気になってね」


「お肉久しぶりだな。何だか感動するよ」


「父もどうぞ」


さて私も食べてみるかな。無理だったらそれはそれで仕方ないよな。


「いただきます⋯⋯⋯⋯あぁなるほど」


昔食べた外国の臭い肉というか、年老いた羊の羊肉というか⋯⋯⋯⋯


「うーん食べられなくはないけど⋯⋯⋯⋯すっごい腹ペコなら食べるけど⋯⋯⋯⋯」


「おいしい!!」


「やわらかいね!」


「あ~幸せだな~」


なるほど。これが人間と草食獣人の差か。改めて自分が獣人なのだと気づかせてくれた。


「あらシュクルあなたお肉食べられるの?私は匂いすら厳しいわ。あなたも人間の血が流れているのね」


「そうなのかな?」


「そうよ」

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