佐藤の知らない世界~女の戦い
「やべぇ~!もうすべてトーマス先生のせいだ!私じゃないからな!」
後ろを振り返ったら皆が先ほど育て終わり、後ろに並べていた植木鉢に大量のマッシュルームが山盛り生えていて、勝手に歩いているマッシュルームまでいた。
しかも私が育てた蓮もグングン成長を続けていて教室の後ろは水も無いのにジャングルになっていた。
「どうしよう。ゲルマンさん残して出ちゃった⋯⋯」
さすがに心配になってきた。ゲルマンさんがマッシュルームになってしまうかもしれない。
「よお!シュクル!今日は変な事してないだろうな?」
「あ!サムソンさん!いい所に~!助けて下さい」
よかった!きっとサンソンさんならどうにかしてくれるはず。
「お前何かしたのか?今度は何だよ!」
「赤い扉の部屋が怖いんです。怖くて扉を開けられない、強いサムスンさんが行って中を確認して下さい」
「はは~ん?お前暗い部屋にいるとか言う悪魔だかお化けが怖いのか?そんな物はいないんだよ!でもシュクルが面白いから見てきてやるよ~お前も子供っぽい所があるじゃないか!」
「アザス!」
サムソンさんは階段を上り二階へ上がって行った。そして例の赤い扉を開けて――
「うおおおおおお?!何だこれぇぇぇぇぇぇ?!」
野太い叫び声を上げた。きっと悪魔と遭遇したのだろうな。
――バタン――
そして扉を閉めた。
「シュクル!!これは何だぁ?!」
「植物の悪魔ですサンソンさん!ですがその中にゲルマン講師がいます!超強いサムソン副ギルド長が救助して下さい!」
「マジかぁ?!だがもうダメだろう⋯⋯ゲルマンはマッシュルームの培地になっている」
ゲルマン培地⋯⋯植物をこよなく愛したゲルマン氏の最後にこそ相応しい。チーン
「どうするかな、火魔法で丸っと焼きたいが室内じゃ無理だしな。それでシュクル、どうしてこんな事態になったんだよ?」
「トーマス先生が悪いんです!」
「?そうか、おい誰かトーマス毒草博士を呼んできてくれ!直ちにだ!」
トーマス先生が来るまでの間、サムスンさんに講習で起きた事態を話したら頭を抱えられた。
「はぁ~はぁ~どうしたのですかぁ~?おや?シュクルもいたのかい~?」
「トーマス先生!赤い扉の部屋が大変なんです!魔植物やらマッシュルームの無法地帯です!それにゲルマン培地がぁ」
「ふ~っ久しぶりに走って疲れたよ~でも何だか楽しそうな事態じゃないかぁ~早速見て見ようか~」
先生はルンルンで赤い部屋に消えて行った。しばらくして――
「シュクル~来て~面白い物見つけたよ~」
「何ですか?」
「これ見て!マッシュルーム人間だよ~はははは~」
「マッシュゲルマンさーん!!進化してる!」
きのこに侵されたマッシュゲルマン氏が発見された。今後ゲルマン氏がより一層トーマス一味を目の敵にするのは止められないだろう。
「これも回収しょうね~!蓮の地下茎!これ美味しいんだよ~全部白布に包んで持ち帰ろうね~」
「はい!」
なんと頼もしい師匠だろうか。この不可侵領域だったバイオハザード部屋を恐れず剰え資源回収するなど。
「それに蓮の種も食べられるんだよ~収穫しょう~!」
「はい!でもマッシュルームはどうしますか?」
「火を通せば食べられるよ~でも逃げるから気をつけないとね~袋詰めにするといいよ~」
なんと食べられたのか!袋に詰めて持ち帰り、一気に火にかければいいんだな。だがどうしょう?!こんなにマッシュルームだらけじゃないか!全部食べきれるかなぁ?
秋の味覚をギルドで収穫できるとは。神はこの間の学校行事、秋の味覚狩りで収穫ナシだった私を可哀そうだと思ってくれてたんだろう。
「でもどうしてこんなに成長したんだい~?」
「さぁ?植物に魔力を注いで成長させたんですよ。そしたらジャングルになってしまって」
「魔力を注ぎ過ぎたのかもね~特に蓮~」
そういえば蓮に魔力を注いだ時、他の植物よりも多く魔力を使った気がする。
「きっと土とか水にまで魔力を注いでいたんだよ~それを養分に魔瓜とマッシュルームが爆発的に成長~魔植物もどんどんジャングル化して~マッシュルーム系人類が誕生したのかな?」
「マッシュルーム人類は元々人間でしたから。でも蓮は魔植物ですか?」
「蓮は謎らしいよ~神の植物だとか言われていて~調べたり研究したりするのはご法度だからね~」
「それを先生は食べているわけですね?」
「美味しい神の恵みだね~シュクルも食べるでしょ~?沢山採れたね~」
「もちろんいただきましょう」
その後植物の種も収穫出来たし、マッシュルームに関しては多すぎてギルドのみなさんと山分けした。
蓮は明日にでも沼地に持って行こう。そうすればまた蓮根が食べられるだろう。
「シュクルさんマッシュルームありがとうね」
「ははは良かったです」
ギルドの受付嬢にお礼を言われてしまった。
「シュクルさんは色々な講習を受講してますよね?楽しいですか?」
「知識と経験が増えるので嬉しいですよ。でも今日はよくわかりませんでした⋯⋯」
良い機会なので私は今日の講習で起きた女性達からの嫌味について、私の何が悪かったのか聞いてみた。
「あぁあるほどね。シュクルさんは何歳だったかしら?」
「春で十一歳になります」
年に何か関係があるのだろうか。生意気だとか?年の割におっさん臭いとか?
「そう、少し早いけれどすでに始まったのよ、女の戦いがね」
「は?」
彼女曰く、これは女の蹴落とし合いの幕開けらしい。今までは子供と分類されていたのだが、女へのシフト段階へ移行しているのだとか。
「これからは増えますよ。シュクルさんはものすごく可愛いから。容姿で文句の付け所が無ければ獣人だとか身分とかを攻撃対象にしてきます。男性と会話するだけで男好きとか言われたり、色目を使ったとか言ってくる人が必ず出てきますよ」
「うぇ――」
今日の女性たちは私を敵認識していたという事なのか?私はまだ十歳なのに信じられん。だがこれは経験者である母に相談するべき事項だ。それに自衛の出来ないクラリスだって危ない。
「あら~シュクルじゃない~家族とは楽しく過ごしてるかしら~?」
「あ、ギルド長こんにちは!ギルド長聞いて下さい!実は――」
私は今の話をギルド長に伝えてみた。なぜならギルド長はゴージャスな美人なのでそちら方面の経験が豊富そうだからだ。きっといいアドバイスがもらえるだろう。
「ふふふ~いいじゃないの。それこそが美人の指標になるのよ?女は自分より劣った者には嫉妬しないのだから」
⋯⋯あぁギルド長はメンタルも最強だった。
「それよりシュクル、雪が降り出す前にこの町を出ないといけないわ。雪が降り始めたら馬車が動かなくなるからね。来週には出発よ~」
「はぃぃ?冬の間は何をするんですか?」
どうやら今年の冬は家で過ごせない方向のようだ。まぁ冬の間はする事が無いので学院への受験勉強用の本でも読もうと思っていた程度だし、経験値を上げるのなら外にいた方が断然いい。家の保存食も一人分浮くしな。
「まだ考え中なのよ。沢山計画があるのだけれど、どれにしようかしらね?」
「優しいのでお願いします」
「もう!シュクルは控え目なんだから!じゃあ全部かしら?でも時間的に厳しいかしらね?うーん。シロクマ対決も外せないし、雪山巡業もしたいし、冬の魔獣狩りもいいわ~氷系、雪系の魔獣は冬の風物詩よね。季節感は出したいわ~」
おいおいこれはさすがに死亡するわ。北の暴君シロクマ対観賞用うさぎ獣人の対決っておかしいだろ?そんな賭け決闘があったら全員シロクマに賭けるわ。賭け不成立だ。それに巡業って何だ?信仰深い信者か?何の信仰だ?あぁ戦闘信仰か。ギルド長にとっては魔獣の討伐が風物詩なのかよ。驚くぜ。こんなに心躍らない風物詩があるんだな。血みどろな風情などいらん。
これは何としてでも回避しなくては。
「⋯⋯でもギルド長、寒い時には温かい地方へ行きませんか?その方が優越感がありますし⋯⋯それに私は全然勉強していないですし、正直学院への入学も心配です」
「勉強ね、確かに。うーんじゃあ~そうしますか」
やった!これでガチシロクマ対決から逃れられたな。 寿命が延びたぞ。
こうして翌週から冬季限定の新しい生活が始まった。




