佐藤の記憶はどこに存在しているのだろうか?
気を取り直し、危険な魔植物のいない別室で話をする事にした。
「トーマス先生、うちの子が先ほど芥子っぽい植物を食べてしまったのですが⋯⋯」
「へぇ~すごい~何ドラゴンなの~?でも魔植物をパクりと食べる位なんだから芥子くらい大丈夫じゃない~?それに野生動物は鼻がいいから食べられない物は食べないと思うよ~?野生の感だね」
「確かに⋯⋯それとニーチェはグリーンドラゴンです。多分」
「グリーンドラゴン?嘘~?絶対違うって。僕見た事あるもん~!彼らの前足太かったよ?その子二本足で歩いているじゃ~ん」
「えぇ?!マジっすか?」
トーマス先生曰く、グリーンドラゴンは四本足で歩いていたそうだ。ニーチェは二本足で歩くし、先生の見たグリーンドラゴンは綺麗な緑色だったらしい。ニーチェは色が濃く何色とも言い難い色をしている。
「あはは!見てシュクル~この子きゅうりを手で掴めるよ!!器用掴んで食べてる~!!」
「おやまぁ可愛い!やっぱりうちの子天才!」
「――そんな感じですね」
私はトーマス先生にニーチェとの出会いから今までの成長を話した。
「なるほどね~僕は専門家じゃないから予測だけれど、まず親ドラゴンは緑ではなかったんだね?そして産んだ時期の異なる卵が三つあったと。一つは白身がこぼれ出るほど最近産んだと思われる卵、二つ目もまだドラゴンになっていなかった卵、そして三つ目のひと際小さかったのがニーチェの卵。この卵は羽化寸前だったんだね。そうなるとニーチェは父親が違う可能性があるね」
「えぇ?そんな事ありえますか?!」
「ドラゴンが爬虫類の仲間とするのならあり得るかもね~結構爬虫類は亜種ができやすいのだよ~その他の可能性は托卵かな?ニーチェの母がそのドラゴンの巣に卵を産んでどこかへ行ってしまったとか?またはドラゴンは光るものが好きだから、たまたま日の反射で光って見えたニーチェの卵を巣に持ち帰ったとか?まぁ何にしろニーチェは父親と母親の竜種?が違うんだよ~」
「さすが先生」
瞬時に色々な仮説を立ててくれる。見た目と性格を抜けば優秀な人だ。
「僕的に興味深いのは、シュクルがドラゴンの怪我を治す時に魔力を注いだ事だね~もしかしたらそれで謎の魔改造が起きたのかも~!ちょっと調べさせてよ!」
マッドサイエンティストがまた始まった!危険だ話題を変えよう。
「先生最近私の胃がおかしいんですよ。魔魚とか魔獣はいくら食べても満腹にならず、果てしなく食べられるんです。しかもそれが魔力になるそうです」
「うわ~本当に~??いいな~」
「しかも魔獣や魔魚の生前の記憶みたいな物が断片的に見えるんです。これが凄く不思議で――」
「ちょっと待ってて!」
トーマス先生が急いで奥の部屋に何かを取に行った。何だろ?
「まずはこれ食べて!」
⋯⋯何だこれは?何かの種かな?毒草の専門家が食べていいと言うのなら大丈夫だろう。
「いただきます。んーひまわりの種っぽい」
この世界でひまわりの種は割とポピュラーなおつまみだ。塩と共に食べると美味しい。
あ、情景が始まった。
「多分森の中ですが獣道の真横にいます。色彩の感覚が人間とは違いますね。それと動くものに反応します⋯⋯あと熱かな?太陽の熱で熱せられた所が見えますが動きがないので興味はありません」
「すご~い!!次も行こう!」
次は⋯⋯瓜系野菜の輪切りだな。きゅうりに似た味がする。
「あれ?ここは先生の家の庭ですね?」
「正解!次はどう?」
何かの葉だな。苦い⋯⋯これ単品で食べるの微妙だな。
「変だな⋯⋯何も見えないし感じない。ただ不味い」
「正解!!これは魔植物じゃなくて、ただの毒草だよ~」
「おい!」
ただの毒草って何だよ!?まさか私で実験していた?!
「大丈夫だよ~これは毒性低いし~でもシュクルは本当に面白いね!魔植物から魔力や記憶も得られるんだね~」
「やっぱり記憶ですよね。先生はどうして私にこれが見えるのだと思います?」
魔力は食べ物から栄養素を吸収する感じをイメージできるが、記憶についてはわからない。
「さあ?でもシュクルは記憶ってどこに宿ると思う~?」
「大脳皮質ですか?シナプスもだったかな?」
「じゃあそれらの数ある細胞の中のどれ?どの細胞?一つの脳細胞にどんな記憶が入っているの?シナプスはよくわからないけど、それにすべての記憶があるの?それとも一つに一つなの?視覚情報は?匂いも?触覚も?そもそも何をもって一つと数えるのかな~?」
「う⋯⋯」
困った。移植をした人物の性格や嗜好が変わるのはよく聞く話だ。でも移植されたのはもちろん脳細胞ではないし。ドナーDNAの影響?
いやしかし脳に損傷を受けた人はやはり記憶を無くしてしまったりもするよな⋯⋯
記憶とは何だろう?前世の記憶がある人とかもいるし、これに関してはどう説明する? 記憶を持ったまま人生をやり直している私は何だ?
「僕もよくわからないけど、魔力にも少し記憶が含まれるのかもね~それをシュクルは見れるのかな~?」
「そんな気がします。やっぱり先生はすごい~」
「じゃあ次はこれね~」
「⋯⋯これ何ですか?食べられます?」
「乾燥まりも」
「⋯⋯まりもの記憶に価値はありますか?」
「わかんない」
「⋯⋯あの、ちなみに一番初めに食べたひまわりの種風の種は何の種でしたか?」
「勿論さっきの魔植物から飛んで来た種だよ~」
「ウェ~!!」




