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佐藤は胃腸が弱めだったがシュクルの胃はマジックバッグ

「酷い目にあった⋯⋯」


 巨大うなぎは私の尻からなかなか離れてくれなかった。さすがうなぎパワー⋯⋯先ほどやっと離れてくれたが尻が痛い。

ちなみにギルド長はその間大笑いしていた。


「シュクル消毒するから尻を出しなさい」


「?!大丈夫です!」


尻なんて出したらアノ暗黒尻尾を見られてしまう。それは絶対に阻止したい。


「駄目よ~うなぎ魔魚には毒があるのよ?しっかり消毒しましょうね~」


「魔魚?!これは魚ですよね??ギルド長は魚だって言いましたよ?」


「そう?魚も魔魚も同じ魚系でしょ?いいじゃない細かい事は」


やっぱり変だと思ったんだよな。蛍光イエローのうなぎ型淡水魚が普通な訳ないもの。


「あら~お尻を見せるのを恥ずかしがるお年頃なのかしら~?じゃあここに薬置いておくわね~私は報告書書きましょ~」


これはやっぱり討伐の仕事だったんだな。何が寄り道してお魚食べて帰りましょう~だ!全くけしからん! 食べ物に釣られて簡単に騙されたー!



「しかしせっかくだからうなぎ魔魚食べようかな?おや?ナイフが入りにくいぞ?ブヨブヨしてるなぁ。きっとアンコウみたいな感じかもしれない。どう調理しょうか?」


うーんまずは出汁たっぷりの鍋?味を染み込ませて唐揚げ?あっさり塩焼きはどうだろうか。


「じゅるじゅる涎が出てしまいますなぁ~皮は引っ張れば剥けるね~うーん見た目が完全にシュールだけど内臓取ってぶつ切りにすれば大丈夫」


切った魚肉を銀のトレイに乗せていく。あぁ得物のカトラリーはこの為の物だったのだな。ギルド長の お膳立てが憎いぜ。


そばに生えていた笹の様な植物を切り、葉を落として串状にし、ぶつ切りの魚肉を刺してブロシェットにする。そして茂みに隠しておいたバッグから火付石を出し、拾い集めた小枝と落ち葉に火をつける。


「塩しか手元にないけど、それはそれでシンプルで良し!」


ブロシェットを火にかける。後は待つだけだ。


「所で生はイケるのか?カルパッチョとか刺身とか好きだぞ。今とれたてで新鮮だし、きっと美味しいだろうな!」


残念ながら醤油が無いので塩とそばに生えているハーブ味になるが食べてみるかな。魔魚を薄く切り塩を振る。それを一口食べる。


「おぉ?やわらかいな!噛むと甘味も出る。もう一口!お美味い!もっと!」




「シュクル何してるのよ?!」


「この魚最高に美味しいです!!」


「何言ってるのよ!!それは討伐対象の魔魚で、食用の魚はあっちの有名なレストランで食べようと思ってたのよ?!」


「えぇ?!なんと!」


私は冷静に食べ散らかした魔魚を見る。生で一口食べてから怪しい薬のごとく口が止まらなかった。絶対におかしい。見ればすでに巨大うなぎの七割を食べ終えているではないか!


自分のお腹をよく見るが少々もっこりはしてはいるものの七割の魚肉が入った様には見えない。私のお腹はマジックバッグなのか?

それにまだイケる。 シュクルのお腹にはまだ空間がありますよ。


「ギルド長、私はこれをすべて食べてからレストランへ向かいます!お先に行ってて下さい」


「本気?それ毒あるって言ったわよね?はぁ~まあいいかぁ~先に飲んでるわ~」


「フンフ~ン次はこのハーブと一緒に食べてみような」


そこに生えていたバジル風の葉で魚肉を巻き塩と共に食す。うむ。さっぱりしていていいんじゃないの?もっと!


モグモグ。おお~初夏の爽やかな風を感じる味だ!美味いもう一つ!


ムシャムシャ。あぁ爽やかイケメンの纏う芳香の様な味だな!青春よろしい!もう一丁!


パクパク。こ、これはまさか四月に入学して、夏を迎える頃に芽生えたクラスメイトへの淡い恋心の味だったのだな!爽やか甘酸っぱい青春の味!次!⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯



「こ、恋は終ワタ⋯⋯苦い、ホロ苦い」


正気に戻った頃にはうなぎ魔魚を食べ尽くしていた。周りを見るとハーブも食べつくしていた。冷静に考えると魔魚を食べてる時の高揚感は一体何だったのだろうか。



「うーうー?(行こう?)」


「ガガ(そうだね)」


ニーチェとギルド長の待つレストランへ向かう。随分とお高そうなレストランだがドレスコードがあるのではないか?私は今の服装を見下ろす。薄汚い。そして魔魚との戦いでびしょ濡れだし、作業着であってレストランへ行く服装ではない。


どうしょうか。スマホがあれば店内にいるギルド長に聞けるのだがな。



「ウーウー(あそこ)」


「ん?えぇぇ?マジか?!」


湖にあの魔魚のうなぎがもう一匹いた。


「えぇ?どうすんの?!私が討伐する感じ?!」


ギルド長だったら私にまた討伐を命令するだろう。それに人を襲う魔魚なのでこのまま放置はできないな。うぅ有名レストランでの洒落た食事が⋯⋯


仕方がないのでまた元の場所へ戻って同じ作業を繰り返した。三回もだ! シュクルがイギリスで執事になる日も近いのかもしれない。カトラリーは大分マスターしたからな。




「ちょっとお!シュクル!私ずーっとレストランの個室に一人ぼっちで待ってたのよ!どうして来なかったのよ?⋯⋯まさか、あなたまだ魔魚食べてるの⋯⋯?」


「ふぅ。やっと両想いのハッピーエンドで終わりました」


「何言ってるのよ?大丈夫?」


「はい。三度目でやっと恋が叶ったんです⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「はい?シュクル?!大丈夫?!ちょっと?!」


私は意識を失った。

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