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佐藤は非モテ草食系

 使役魔獣登録も終わり賑やかな町を歩く。ニーチェはきちんと登録したので堂々と姿を晒せるのだ。


「おぉ?使役魔獣連れもいるんだな」


今まで気にしていなかったが使役動物や使役魔獣連れの冒険者もたまにいる。何故か勝手に仲間意識を持ってしまう。これが噂の愛犬家同士に通じる同好意識(?)か。私の行きつく先は「可愛いワンちゃんですね~?」から始まるドッグラン情報交換会なのか。


「いや、しかし『可愛いドラゴンですね~何か月ですかぁ?』『生後一日です~おたくのドラちゃんも可愛い子ですね~女の子ですかぁ?』てな会話はありえないな。そんな仲間一生できないだろうよ」


例えるならば平和なドッグランに無機物有機物すべてに噛みつくす狂犬か、全生物に腰を振る異常発情犬が現れた感じだろう。瞬時にドッグランは無人化する。だってうちの子ドラゴンだもの。いつでも勝手に貸し切りだわ⋯⋯


「シュクルもうお昼よ食事にしましょう。お腹空いていない?」


「はい!」


我々は町にある一般的な大衆食堂に入店した。


「魔獣肉二人前下さい。生で」


「⋯⋯はい?あ、魔獣用ですか。少々お待ちください~」


お店の従業員も使役魔獣に慣れている感じだな。ドラゴンだが特に気にも留めていなかった。


「お待たせしました~」


肉を切るだけなのですぐに出てきた。私は一人前をニーチェに渡したが食べられるだろうか。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


ニーチェは肉の匂いを嗅いで肉と私を交互に見ている。食べないのだろうか。


「カーカカカー(食べて)」


「⋯⋯ウー(⋯⋯うん)」


そうか、きちんと言わないとわからないのだな。まだ生後一日だもの。私は見本として生肉を食べて見せる。するとニーチェは恐る恐る肉を口にした。


「カカーカカッカカ(食べると成長するよ)」


「⋯⋯ウー(⋯⋯うん)」


良し良し。やっぱり飼い主的には少しでも食べてくれると安心するよな。この世界には四つ足用最強食品チュ~ゥル はないからな。



「ちょっとシュクル何してんのよ?!」


カウンターでお酒を飲んでいたギルド長がこちらのテーブル席にやって来た。


「どうしましたか?」


「それ魔獣の生肉でしょ?!どうしてあなた達が食べてるのよ?」


「あ~私も魔獣だったのでイケる口なんですよ」


私はグリフォンとの三年間を簡単に話したのだが⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


「あなたおかしいわよ!!絶対に変よ!どうして魔獣と会話出来るのよ?!魔獣肉を生で食べるなんて毒で死んでしまうわよ絶対!」


「さぁ?でも世の中に絶対はないんですよギルド長」


そうだ。絶対など無いのだ。俺は絶対に今週末は休む!と決めていても上司に休日出勤を臭わされたら断れないし、親友に明日世界が滅亡するぜ!と言われて全財産(学生時)を使い果たしたが世界は滅亡しなかった。残ったのは残高ゼロの侘しい現実なのだ。


「そうね。ウサギ獣人がドラゴン使役して獣王になるのも普通ではなかったわ。考えるのは止めましょ。お酒お代わりよ~」


全て食べ終わったらニーチェがモコモコ変な動きを始めた。これは昨日のアレだ。


「カカッカーカー(便(カカ)はこっち)」


私は急いでニーチェを食堂の中庭にあるトイレに連れて行き、便器に尻を乗せてやるが尻尾が邪魔だ。


⋯⋯フッ尻尾など⋯⋯⋯⋯尻尾など邪魔な存在ではないか!我にはいらぬ!

久々にアノ尻尾の存在を思い出してしまった。



「カカーカー(ここで)」


――ブリッ――


「ちょっと~うちの子天才なんじゃないの?!トイレトレ一日でできちゃったわよ~ いやだわぁ飼い主に似ちゃったのかしらねぇ?自惚れじゃないのよ~自慢だけど」


「カカカーカ(手を綺麗に)」


トイレ横にある小さな手洗い場へニーチェを連れて行き、水が汲んである桶から柄杓で水をすくい、ニーチェの小さな手を洗う。体の割に前足が小さくて可愛い。Tレックスみたいだな。 だが⋯⋯


「ニーチェよ水を飲むのか?!」


ニーチェは桶の水を飲み始めた。私は三年間水を飲まずにグリフォンの巣にいたのでビックリした。⋯⋯ でも水分補給の重要性は生き物共通か。


「ニーチェよ、今度はそれかい?!」


ニーチェは中庭に生えている草を食べ始めた。まさか、まさか?


「草食だっかのかぁ?!」


グリーンドラゴンて名前からしてそんな気配がする。肉に躊躇していたのも草食だったからか?! 私は肉食を強要してしまったのか?!



「ギルド長!ニーチェは草食でした!」


「えぇ?そりゃそうよ~肉食の竜なんて使役魔獣どころか即討伐よ~あははは」


「うわ!飲み過ぎですよ!」


フラフラするギルド長とニーチェを連れて怪しいギルド長の馬車の方へと戻る。


「まぁ!なんてしっかりとした十歳児なのでしょう!天才かしらねぇ?うちの息子の嫁にしたいわぁ~」


私的に気に入ったおばちゃんごっこをしながら馬車に乗る。


「ギルド長、次はどこへ向かうんですか?」


「いったんかえります~」


「帰りましょう!近所のスーパーでお惣菜買って~夕食にお風呂の準備に洗濯物もしなきゃだわ~」


「⋯⋯あなたさっきからなあに言ってるのよ?」


「おばちゃんごっこです⋯⋯」


「そうだったわシュクルはチビっ子だものね~ごっこ遊びするわよね~ぐーぐーZzz」


私は家に帰れる事になった。家族は元気だろうか?お惣菜ではなくお土産買って帰ろう。


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