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サバンの恐怖

 あれは先週の休みの日、サバンが王都の路地裏を歩いていると目の前に古い本屋が現れたのだった。


「こんなところに本屋なんてあったかな?」


かなり古い感じのお店だったので興味が沸かず見逃していたのかもしれない。サバンはこういう古いお店にはたまにレアな魔術書があるのを知っていたので入ってみる事にした。


「こんにちは」


「⋯⋯どうぞ⋯⋯チッ、野郎かよ」


あれ? 何だか暴言を吐かれた気がしたが気のせいだろう。狭いお店の中は本が天井まで積まれており、どの様な本がどこにあるのか全く分からなかった。 この中から魔術書を探し出すのは骨が折れるなぁと考えていると⋯⋯


「お前が探している本はこの本だろうよ」


「え?」


困っているサバンに年老いた店主は一冊の本を投げ渡して来た。

随分と態度の悪い店主だなぁと思いつつも、その本の表紙を見てみる。すると⋯⋯


「『淫魔の祝福~性転落人生と新たな性界隈の発見』何だこの本?」


卑猥な本だよな? え? この本を探している様な人物に見えた俺って⋯⋯


「それじゃあ嫌なのか? じゃあこれだ」


店主がもう一冊投げてきた。


「何これ?『極めし怒M道。初心者にも安心のプレイから公開SM処刑まで』? はぁ?」


俺のイメージって⋯⋯ 酷くない?


「帰ります⋯⋯」


そんな変な事が先週あったのだ。


そういえばあの本の表紙の文字⋯⋯『淫魔の祝福』って確かシュクルが北の淫魔って呼ばれているよな。確か俺が女性から変態扱いされ出したのもシュクルに会ってからな気がする。まさに『性転落人生』じゃないか。いや、でもシュクルに会った時にはすでに俺の悪い噂は女性の間で広まっていると言っていたから違うか。


でも『新たな性界隈の発見』⋯⋯アーディ王国滞在中に、シュクルにシルヴァン王子のベッドへと押し込まれたからこそ、あの事件は起きたんだ。

いや、でもシュクルはシルヴァン王子からダンジョンに向かう前の健康診断をするから俺を連れてこいと言われて俺を連れて行っただけだし、シルヴァン王子が悪いのだろう。


う~ん。それにシュクルと一緒に夜会の警備をしていた時に俺がマッチョな男に⋯⋯でも媚薬入りのワインは俺の意思で飲んだのだからシュクルのせいでもないか。


じゃあ二冊目の『極めし怒M道。初心者にも安心のプレイから公開SM処刑まで』は何だろう? あれ? 今日の俺って学院の舞台上で公開処刑されなかった? SMのSって俺のあだ名のSで、Mはマゾ? まさか『公開S(サバン)M(マゾ)処刑』だったのか??  ヒィ!


「お疲れ様です。団長、どうしされましたか?」


「あ、ルイ、実はこの魔術師がね――――」


「あ、サバンさんではありませんか。随分と⋯⋯趣味に走って⋯⋯今日は学院の文化祭を見学されていましたよね?」


「あ、ベレンガー辺境伯、そうです~。舞台を見ましたかぁ~?」


頭が先ほどよりも回るようになってきた。二回目の媚薬なので体が解毒を始めたみたいだ。闇魔法持ちでよかった。


「舞台も見ましたが、シュクルさんの研究発表があった講堂でずっと愚痴っていましたよね? 声が丸聞こえでしたよ」


「え? えええ?!」


は、恥ずかしい⋯⋯これは『初心者にも安心のプレイ』?恥ずかしい心の内を不特定多数の人に聞かれてしまう羞恥プレイ?


「すまんルイ、俺はもう帰らなくては」


「いいですよ。私が変わりますから」


「すまんな! じゃあまた明日」


第二騎士団の団長が帰り、副団長のベレンガー辺境伯と二人きりになった。



「で? サバンさんはどうして学院内でそんな恰好をしていたのですか?」


「裸に、されて、これしか無くて⋯⋯」


俺は舞台が終わってからシュクルの寮に行って、誤って媚薬入りのお菓子を食べてしまった事、そしてお土産をもらって途中まで精霊に送ってもらい、シュクルの犬に会って気づいた裸だった事、仕方がないのでお土産にもらったマントとパンツを履いて歩いていたら警備員に捕まった事を話したのだが⋯⋯


「⋯⋯」


辺境伯の機嫌がどんどん悪くなっていくのを肌で感じた。


「⋯⋯まず、文化祭に来た一般客は最後の舞台の後はすぐに学院から出ましたよ。なのにどうしてあなたがシュクルさんの寮に行くのですか? おかしいでしょう? しかも女子寮に男性は入れません」


「え?」


そういえばそうだな。でもシュクルの寮は寮じゃなくて家だったし、家の中も男ばっかりだった気がする⋯⋯でも精霊には性別はないのかな? 動物は性別関係ないし⋯⋯骨もレイス神官も生きてはいない。あれ? でも、そもそもシュクルは本当に女性なのか? どうも男の先輩っぽい雰囲気がある。面倒見がいい系の。だからつい俺も頼ってしまって⋯⋯


ん~でもシュクルは女性だし、もしかして俺って女子寮に忍び込んだ変態⋯⋯?


「それに時々シュクルさんの腰にしがみついてますよね? 痴漢行為ですよ」


「え?」


婚約者でもない貴族の淑女の腰にしがみつく男⋯⋯へ、変態じゃないか。


「極めつけにその恰好」


「え? ギャア!!」


媚薬の影響か、視界がぼんやりとしていたので気づかなかったが、今初めて自分の服装に気づいた。な、何だよこの丸見えパンツ!! 恥ずかしい!! それにこのど派手なマントは何だ?!


こ、こんなの完全にド変態じゃないかぁ!!


「いいですか? 今回は見逃しますが、今度シュクルさんのそばをウロウロしたら消しますよ?」


「?!?!?」


礼儀正しいベレンガー辺境伯から向けられた強烈な敵意に光る犬歯。

俺は腰を抜かしそうになりながら真っ赤なマントきっちりと体に巻き付けて家に逃げ帰った。

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