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佐藤は結構聞き上手

シュクルは少し嬉しかった。なぜなら⋯⋯


「ギルド長ここはどこですか?」


産まれて初めて遠出をしているからだ。いつかこの世界でも海を見たいな~。佐藤は毎日電窓から海を見ていたから海が好きだ。休みの日は水族館へマグロを見に行った事もある。ちなみに隣の獣人系ランドには行かない。なぜなら彼女も子供もいなかったからだ⋯⋯リア充はフナ虫にでも襲われればいい。


「ここは王国の北西ヴィアンネイ辺境伯領よ。お隣のコンスタント王国との国境がある領ね」


「おおお~」


社会科で聞いた名前だが実際訪れると感動する。確かコンスタント王国とは友好関係にあると習った。


「まずは何か食べましょうね」


「はい!」


旅の醍醐味は食事だよな。この領は何が美味しいのだろうか。


この町の大通りから少し外れた脇道をギルド長は迷わず進み、一軒のお店へ入って行った。急いで私も後を追うが⋯⋯


「こんにちはぁ~♡マスタぁ私達今日この町に来たんですけどぉ~初めてで何もわかんないのぉ~色々教えて下さるぅ??」


「おお!美人なねぇちゃんだな!いいぞ!この町で生まれ育った俺に何でも聞けよ!可愛い子も一緒か?」


「⋯⋯はぃ」


「この子可愛いでしょ?でもうさぎ獣人だから繊細で人見知りだから優しくしてね♡」


「勿論だ!!へへへへ」


おかしいと思ってたんだよな。今日はフリフリピンクな洋服着せられたから。


それにギルド長からの命令も酷いのだ。


「素敵なマスタ~ぁ私ね、隣国で有名なパッチワークが欲しいから隣国に行ってみたいの。行けるかなぁ?」


ギルド長の命令通り無邪気な子供の振りをする。だがパッチワークとは何だろう?多分布の継ぎはぎだったか。自分自身の声と態度に虫唾が走る。


「おお?お嬢ちゃんはコンスタントに行ってみたいのか?だが通行料が高いらしいぞ?それに可愛い子は危険なんだよ~悪い事は言わないからここにいような!」


「じゃあマスターみたいな強くて頼りになりそうな人と一緒なら大丈夫かなぁ?」


私は命令通り両手をお祈りポーズで固め、顎を引き上目使いで見つめる。そこで少し片耳を曲げる。う、耳付近の変な筋がピキピキする。


「え?え~う~んそうだなぁ~いやいや、あの騎士達やべぇし、危険だから駄目だな。うん。ごめんな、美味しいお菓子あげるからな!」


「ありがとう!!」


その後ギルド長と普通に食事をし、店を後にする。次は少し薄汚いバーに入った。


「シュクル見てなさいね。行くわ」


ギルド長は私達がいたカウンターから店の奥にいる反社的なおっさんの元に向かう。


「あらいい男ね。素敵な筋肉だわ~」


「あ?何だ?いい女じゃねぇか。一緒に飲むか?」


「あらいいの?」


ここから声は聞こえないが何か話しているみたいだ。私はカウンターにいる萎れたバーテンダーのおじいさんの仕事を見つめる。手が小刻みに震えていて磨いているロックグラスを割りそうで怖い。


「マスターこの道は長いですか?」


「え?あぁそうだね。だがもう腰が痛くてね、この商売も潮時だよ。だが私の若い頃はそりゃ凄くてね、私も少し悪で⋯⋯悪い男で⋯⋯悪さをして⋯⋯ベラベラベラべラベラベラ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯(続く)」


おじいさんの「昔の俺は悪だった」系マシンガントークが始まってしまった⋯⋯誰か教えてくれ。どうして「昔の俺は悪だった」トークをかますおっさんが一定数存在するんだ?どんなアンサーを求めているんだよ?




「シュクルお待たせ。行きましょうね」


「おじいさんまたね!」


「はいよー」


ギルド長と私は町の宿に泊まりながら数日間情報収集を続けた。




「シュクル今日は対人戦よ!嬉しいでしょ?そろそろ暴れたい頃合いですもの」


「え?え?」


いやいや何の頃合い?!何するの?!ギルド長言ってたじゃん!うさぎ獣人は繊細だから優しくねって!


「この地にクソみたいな輩がいる事は分かったわね?今からヤりま~す」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


私達が得た情報は国境付近で国に無断で通行料を取る輩がいて、そいつらに攫われた人もいるそうだ。だが困った事にこのヴィアンネイ辺境伯所属の騎士が絡んでいるので市民は何も言えないし、通行料の高さに商人は行き来を断念する事もあるそうだ。このままでは隣国との友好すら危うくなる。


「いい?現職の騎士がいるけど人間よ。私達獣人で獣王だから何も問題ないわ」


「そうですか?!本当ですか?!じゃあギルド長が騎士担当ですよ!!」


ヤるとか怖いので、なりふり構わずギルド長に押し付ける。


「まぁ!シュクルったら控え目ねぇ~。じゃ騎士はぜ~んぶシュクル担当よ。よい子はご褒美をもらえるのよ」


「しししし正気ですかぁああああああ?!私悪い子です~!もう昔はすっごい悪でしたぁ!!」


「ふふふ~自分が悪だなんていう子は全く悪い子じゃないの。本当の悪人は悪い事が悪いだなんて概念はないのだから」


こうして私は騎士相手に対人戦に臨まされるのだった。

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