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佐藤は上からの命令を反故にできない。

「あのぅどこへ行くのでしょう?あのお屋敷はギルド長のですか?」


「ふふ違うわよ。さて景気づけにまずは辺境伯家のガラスでも全部割りましょうね」


「はぁ?!」


ギルドから強制連行された私は怪しい馬車に乗せられてどこかへ運ばれた。そしてなぜか熊の着ぐるみの様なパジャマの様な物とブーツに着替えさせられた。


「いい?あの屋敷のべレンガー辺境伯家は犬っコロの集まりよ。犬っコロは弱っちいっから集団行動するの。でも私たちは単独でも最強の獣王なのだから歯牙にも掛けないわ」


「⋯⋯」


え?どうすんの?べレンガ-辺境伯家って確かうちの男爵家の寄親だよな?ヤバくね?それに高価なガラスを全部割るって何?ピンポンダッシュ的な?いやいや昔のヤンキー風な?佐藤は廃墟のガラスすら割るタイプじゃないんだよ?シュクルは高価なガラスのコップ学校で割っちゃって落ち込んだからね?


「では行きましょうか。シュクルは右半分で私は左半分よ。終わったらここで合流だからね。じゃ私は行くわ」


「えぇぇぇ」


これはやるしかないのか?!顔バレしないように熊パジャマのフードを深くかぶり近くに落ちていた棒を握り締める


「こんな事がバレたら一家離散だぞ!!もう速攻で割って逃げる!!シュクル行きます!!」


あぁ憧れの〇〇行きます!って掛け声は宇宙空間でロボ発射時に言うセリフであって、人の家のガラス叩き割りに行く時の掛け声ではないのに⋯⋯




辺境伯家の広い庭を気配を消して走り抜けながら屋敷の右側へ向かう。


「三階建てだな。ガラスは一階から割るべきか三階から割るべきか⋯⋯」


――ガシャン――


ガラスが割れる音がした。どうやらギルド長の襲撃?が始まったらしい。


「こんな大きな音出してたら即行バレるじゃないか!もういい!手あたり次第割る!」


――ガシャン――ガシャン――ガシャン――ガシャン――ガシャン


「襲撃だ!!全員出撃せよ!!」


「やべぇ。本物の騎士が出て来たぞ!!まだ半分も割れてないのに!」


辺境伯家には国境を守る騎士団がいると聞いた。ヤバすぎる。十歳のうさぎ獣人の敵う相手ではない。だが根がクソ真面目な佐藤シュクルはギルド長に言われた「全部割る」のお約束を無意識下で反故にできない。


「全速力!!」


全身の筋組織を百パーセント使い、普段オフにしているすべての五感もフル活用。一階が終わり二階のバルコニーへ木を伝って這い上がる。


「マズイな足音がこっちに近づいて来てる。どうするかな、いや考えている暇はないな。とにかく割る。一枚でも多く割る」


――ガシャン――ガシャン――ガシャン――


「侵入者!ここで何をしている!!」「こっちだ!」


「⋯⋯チィ」


参ったな。六人の騎士が前から来てしまった。まだ三階が手つかずだぞ。私は後ずさりしながら先ほどの木に近づき飛び移り、三階のバルコニーへ一気に上る。


「マズイ。ヤバすぎる。私は木の棒しか持ってないのにあちらは武器持ちじゃんかぁ!!」


成人の騎士六人に一斉に武器を構えられた時、その迫力で腰抜かす所だった。




「⋯⋯侵入者、何が目的ですか?」


「へ?!」


月明りを背後に自分の目の前に剣を構えた細身の騎士が立っていた。⋯⋯声を掛けられるまでこの騎士の気配も音も感じなかった。⋯⋯こいつはヤバい。


「返答が無いようですので排除します」


「?!」


間一髪で剣を避けたが動きを目視できなかった。遅れてこの騎士に切られたらしい私の前髪が床にパサリと落ちる。その光景にゾッとする。こんなに命の危険を感じた事は今までないし、下手に動けない。月明りの中、お互い見つめ合う。あぁこれが俗に言う一秒が十分に感じる瞬間か。


「すごいですね。避けましたか」


「⋯⋯」


「何者ですか?随分と身体能力が高いですし、獣人でしょうか?」


「ワタスハ外人ネーワカラナイネー⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯殺します」


⋯⋯命のかかった大事な場面で完全に大失言した。




「坊ちゃん大丈夫すか?!」「今助けます!!」「お前ら侵入者はここだ!」


「サヨナラヨ~~」


「あ!待ちなさい!」


騎士達が来てくれて二人の緊張状態が緩んだ瞬間、私は体に風魔法を纏い下へ滑空する。


「本気で危なかった~!!でも何だろ?あいつすっごいムカつくな」


こんな場面なのに敬語で丁寧な対応されたが、なぜか存在が物凄く気に食わない男だった。腹いせに庭に落ちている石を拾い三階の割り残したガラスに投げる。


――ガシャン――ガシャン――ガシャン――ガシャン


「これで全部だな!あばよ!坊ちゃん!ハハハ!」


完全に悪役なシュクルであった。今日はポイントUP祭りだった。




「坊ちゃん大丈夫でしたか?あいつら何者なんですかね?」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「何すかこれ?髪の毛っすか?」


「ええ」


落ちている髪の毛を拾う。綺麗なピンク色の髪の毛だった。




「遅いわよシュクル!でも初めてにしてはよくやったわ」


「もうギリギリでしたよ。命がいくつあっても足りませんから!」


やっとギルド長と合流できてホッとする。ギルド長はすでにガラスを割り終えて私を待っていた。


「でも駄目よシュクル、あなた屋敷の表側しか割れていないわ。屋敷の裏側を忘れているわよ」


「そんなぁ!!」


マジ無理ゲーっす。


「それじゃ行きましょうね~次は何をしましょうか~」


「うぅぅぅいつか死ぬ⋯⋯」


私とギルド長との旅は始まったばかりだ。

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