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佐藤はイケメンクラッシャー

「さてさて図書館は久しぶりですね~」


三年ぶりに図書館に来たが匂いも雰囲気も変わっていない。さて教科書でもサクッと見て十歳児に追いつきますかね~


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯教師よ何をしてるんです?」


「え?気づいたの?」


あの銀髪モテ(WW)が図書室のカウンターの中で丸まって隠れている。どんなに隠れようがシュクルには呼吸音とか気配でわかってしまうのだが。


「変わったご趣味があるようですね。小学校の図書館カウンターで丸まるなんて」


大体事情は分かるが、あえてイケメンを無知な子供の振りをしてイジメるシュクル。

イケメンに対する僻みは生まれ変わっても消えないのだ。


「え?違うよ?ちょっと定規がカウンター下に落ちてしまってさ、取ろうとしてるんだ」


ふーん?とっさにイケメンwのくせに嘘つきよった。


「では私が取りますよ。先生は座ってて下さいね!ここですよね?」


親切な振りして架空の定規を探す健気な生徒を演じる。


「え?あぁーテーブルに置いてあったよ。勘違いしていたみたいだごめんね」


「え?そうですか?でももしかすると二本あったのかもしれませんよ?一本は本当にカウンターの下に落ちてるかもしれません。先生は落ちたと思ったのでしょ?落ちた音や気配を感じたのでしょ?でしたら落ちてますよ」


無駄にイケメンを追い詰める。別にクラリスを取られた感じがして、そのイラついた気持ちをぶつけてる訳では⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ある。


「う、君は確か行方不明だった男爵家の子だよね?本当に十歳?」


「シュクルです。ノエルとクラリスと私で三つ子ですね。先生は王都から来たのですか?」


きっとこんな見た目のヤツは汚れた王都出身に違いない。紫の目をアメジストブドウでいいだろとか宝石に例えられているはずだ。


「王都出身て分かるんだ」


その後私が聞いてもいないのに自分語りを始めた。


王都の伯爵家出身のジュールは次男であったため、教師を目指していた。学院を卒業後、学院の教授の補佐を始めたが生徒である高位貴族のお嬢さんに目をつけられ纏わりつかれた。生徒との恋愛など興味はないというのにあっと言う間に二人の噂が広まり学院の教師として相応しくないと解雇された。


破廉恥な噂が広まると教師として雇ってもらえる場所が無い。結局仕事を求めてこの最果ての地にたどり着いたそうだ。


「はぁ。私の人生は終わってるよ」


「終わってる?失礼だな。ここで産まれ育った私の前で言いますかね普通。今まで起きた問題の元を辿ればそういう所じゃないですか?

まぁジュール先生という人生は一度切りなんですから好きに生きたらいいじゃありませんか」


「⋯⋯こんな田舎で何が出来るんだい?」


「それはあなた次第ですね。ではいい所をご紹介しましょう」




「まずはここですね」


「冒険者ギルド?」


私は先生を冒険者ギルドへ連れて行く。


「先生の怒りをあの藁副ギルド長へ当てるのです!」


「え?やってみようかな?よし」


ボンボンそうな先生にお菓子とジュースを購入してもらって、ボケーっと先生を見ながら食べる。久々のお菓子は美味しい。もっと欲しい。


「いいですよ!最高です!先生の思いをもっと込めるのです!!凄い~」


「ああ!気持ちいいな!」


先生をおだてて追加で買ってもらったお菓子を頬張りながら空を眺める。青空の下で食べるお菓子は最高だ。


「次はこちらです」


ギルドのバーカウンターへ連れて行く。先生にお酒を進める。


「え?お酒?強くないんだよなー」


「よ!兄ちゃん飲まないのかい?ほらほら男は飲めてナンボだよ?」


先生はおっさんたちに勧められるままお酒を飲む。おっさんは私にヘタなウィンクを送る。私は目で合図を返し、先生達を見ながら美味しいジュースをボコボコのテーブルに座りながら眺める。本当にいいカモ⋯⋯じゃなくていい先生ではないか。 あ~美味しい。


「は~かなり酔いが回ってしまったみたいだ」


「先生まだですよ?次に行きましょうね?」


私はこの町に一つしかない娼館へ酔った先生を連れて行く。


「こんばんは~リンさん、お客さん連れて来たよ~」


「まぁ!シュクルちゃんじゃないの!噂では聞いていたけど、本当によかったわ無事で!あら?お客さん連れて来てくれたの?じゃあ十パーセントシュクルちゃんにお返しよ」


「ありがとう!じゃお願いしますね~!先生また明日!」


先生を娼館へ任せて、娼館への客紹介料で得た小銭片手に帰宅する。今頃先生も楽しんでいるだろう。まぁリンさんは少しプロ歴が長めだがその分、巧であろう。酔っていて暗ければわからん。


「いい仕事したな~うぅ食べ過ぎたな」


その日を境に先生から出ていた憂いの表情が消えた。真面目なヤツほど大人になってから覚えた遊びに羽目を外しがちだ。


「クラリスも目を覚ますだろう。それに我が地元をこんな所扱いするヤツはこの地のカモにしてやる」



だが⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯先生は私の想像と違う魔改造をしてしまった。


「ははっは!シュクル!君はプロテインとダンベルが足りてないな?速筋がすごいからって安心してるのか?だがそんなんじゃ遅筋は私に勝てないぞ?ははは。ほら早くギルドへ向かおうじゃないか!今日は夜まで筋トレだ!!」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


先生は酒でも女でもなく、一番初めに連れて行って藁副ギルド長へ攻撃させたときの快感がやみつきになり、その後おっさん冒険者と筋トレについてお酒を交えつつ語ったらガチ筋トレオタクになってしまった。


美しかった?銀髪は短く刈られ、サイドに謎の模様まで入れてるし、細身だった体は冬なのに何故かムキムキ白ランニング姿だ。ギルドのタグが雄パイに挟まって輝いている。これは正に海外の悪役プロレスラーだ。


「またしてもこの世からイケメンを消してしまったな」


そのうちイケメンクラッシャーとして世の女性から反撃を食らう日も近いかもしれない。

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