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佐藤とシュクルとグリフォンと

「おい!何事だ?!」


「お?ギルドのサムスンさん?」


「え?えええ?シュクルか?!お前生きてたのかよ!いや、とりあえずお前のその覇気を止めてくれ。何があったのかは知らないが俺もキツイんだ」


「は?覇気とは?」


「その魔力だよ。止めてくれ」


「あ?はい」


深呼吸をして止める。どうもグリフォンの頃の癖になってるな。餌の取り合いや喧嘩では魔力を纏って主張するんだよな。無意識でやってしまったようだ。


「シュクル今まで何してたんだよ?ちょっと話を聞かせろよ?」


「母よ。ちょっと冒険者ギルドへ行ってくるので先に帰ってくれ。え?!大丈夫か母よ?あいつらのせいか?」


母はフラフラしているぞ!なんてこった。あのナンパ野郎マジ許さんぞ?


「だからヤメロ!シュクル、お前の母さんを辛くさせてるのはお前自身だ」


「え?あのナンパ痴漢野郎ですって」


「違う。お前の魔力だ。お前の魔力はウサギ獣人であるお前のお母さんを酷く怯えさせるんだ」


「⋯⋯え?」


まさか?私が?


「シュクルのお母さん大丈夫ですか?私は冒険者ギルドの副所長のサムソンですが、ちょっとシュクルさんとお話ししてきます。歩けますか?よしギルドの者に送らせましょう」


どうしょう。私のせいで母がフラフラだ。本当にそんなつもりはなかったんだ。


私は三年間のブランクが無性に怖くなった。どうしょう?人間の常識がわからない。ただでさえ佐藤の記憶もあるんだ。この世界の常識はどれだった?私のアイデンティティーは一体どこにある?


次々に耳に入る大量の音に声。様々な物が交じり合った匂い。森には無い色の波。情報過多だ。私は目の前が真っ暗になった気がして目を閉じて俯いた。




「おい、シュクル行くぞ」


「え、はい」


今ここで悩んでもしかたがない。元社会人の私は感情を割り切り気を取り直して早歩きのサムソンさんの後ろを必死に追いかける。


冒険者ギルドはすぐだった。


「副所長お帰りなさい。何事でしたか?あれ?ウサギ獣人?」


「ああ、ちょっと上の部屋使うわ」


「はい。わかりました。うーん?あの子どこかで見たような?」


三年ぶりのギルドはあの頃と変わりないようだった。


サムソンさんと緑の扉の部屋へ入る。毒薬おっさんは元気だろうか?


「さてシュクル、お前この二年間何してたんだ?」


「あぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


私は正直にすべてを話した。卵欲しさに巣に行った始まりから、グリフォンが巣立ち、シュクルの記憶が戻るまで。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯お前マジ?」


「はい」


「どうすっかな?」


完全に呆れられてる。それに私が森から帰らず、ギルドのみんなが心配してくれていたそうだ。おじさん冒険者達は私を探すために森の探索までしてくれたらしい。結局森の中で服の欠片さえ見つからず、同時期にグリフォンの巣が発見されたため、グリフォンに連れ去られて食べられてしまったのでは?と結論が出たそうだ。


「お前がグリフォンの家族だったなんて⋯⋯グリフォンに育てられてたなんて⋯⋯」


「すみませんでした。あの、グリフォンとは会話が可能ですから、今後グリフォン絡みの案件は私にご相談下さい」


「何だそれ?『私〇〇語の同時通訳できますが?』みたいなノリは。どこの世界に魔獣と会話できるヤツがいるんだよ。お前か。そうか」


そう言われると変だな。久しく忘れていたが、こりゃ相当死後ポイント稼いだだろうな。


「まぁいい。とりあえずお帰り。無事でよかった」


「おお!サムスンさん優しい。私なんて藁人形の顔をサムソンさんにしたり酷い事したのに!」


「え?あれは強い俺と戦う臨場感が欲しかったんだよね?そうだよね?」


「⋯⋯はい!」


「あれ以来、訓練用の藁人形はすべて俺の顔だよ?そのおかげでみんな真剣に訓練を受けるようになったんだよな。でも攻撃が顔に集まるのは何故だろうな?」



「それでお前の覇気だが抑えられるか?感情が高ぶっても絶対に抑えて欲しい」


サムスンさんは先ほど私から出た覇気を感じ取り、何事かとギルドを飛び出して確認に向かったそうだ。敏感な獣人や魔力のあるものは強い魔力を敏感に察知してしまうそうで、町にいた獣人や魔力持ちはみな驚き歩みを止め、私の方を見てたわけだ。


「そんなに凄いのですか?確かに震える母の姿を見てしまいましたし、もちろん抑えるようにはしますが」


自分自身では全く覇気とやらを感じない。魔力は多少感じるが、覇気とは魔力の一種なのか?私は相当グリフォン化してしまってるのかな。


「正直王族や上位魔術師並みだよ。子供でこの魔力量なんて将来どうなるのか心配だ。いいか?今はお前の身の安全のためにも隠せよ?今日の事はこちらで何とか隠すから。そして将来は王国騎士団か王宮魔術師になるしかないな」


「え?」


サムソンさんは私の多すぎる魔力が皆に知られると、まだ弱い子供の内にどこかへ攫おうとする輩が出たり、魔力が欲しい国に売られたりする危険性を教えてくれた。


もちろん大人になってからも危険性はある。だがこの国の騎士や魔術師になれば国と組織に守られる。もちろん私もこの国に忠誠を誓わなくてはならないが。


だから母は私の魔力に困ってたんだな。


「まだ時間はあるがどちらに将来なるにしても早いに越した事はない。王都の奴らはもう魔力訓練や剣の稽古もそれなりに進んでいるだろうよ。並行して勉強もしなけりゃな。それにお前は一応貴族だから王都の貴族学院へ入学するべきだ。貴族の子女なら悪いやつらも手を出しにくい。

⋯⋯まだ子供だし言いたくはないが、ここにいては駄目だ。お前ん家の男爵家は名ばかりでお前を守れないし、もし北へ連れ去られたらもう手の出しようがないんだ。家を出る事を念頭に置いておけ」


「⋯⋯はい」


グリフォンの家族も巣立ったし、私も実の家族から巣立つ日も近いのかもしれない。


せっかく家族の元へ帰れたのにあとどれくらい一緒にいられるんだろうか。



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