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佐藤の新たな生活

「今日も元気に夕食を探しに行くぞ~!」


今日は休日だ。朝から森へ行き採集と狩猟をする。自分も含めて子供達三人の食事量が増えてきているので大物獣肉が欲しい所だ。


「うーん。いないな何で?いつもならこの辺りにいるはずだけど」


今日は全く生き物の気配もないし、獣のフンも落ちていない。森の中が普段より静かな気がする。私はいつもより森の奥深くに獲物を追って入り込んで行った。


しばらくすると開けた所に出た。


「何だあれ?」


開けた所に太い枯れ木が一本生えていた。そしてその木の上に大きな枯れ枝を積んで出来た巣のような物があった。


「はぁ?何だ魔獣の巣か?!うわ~~~何か飛んできた!隠れなきゃ~~!」


あれはヤバい。二メートルはある空飛ぶ魔獣が巣らしき所に帰って来た。


私は気配を消して木の裏に隠れながら魔獣を観察する。


「私は詳しくないがグリフォンとかそういった魔獣か?鳥と獣のキメラっぽいな。あいつのせいで森の生き物が逃げちゃったのかもしれない」


なんてこった。この魔獣がいる限り森での狩猟が絶望的になる。今はまだ暖かいからいいが、本格的に冬になる前に魔獣のお肉を沢山手に入れて瓶詰めにしたり、ジャーキーを作ったりして冬籠り用の保存食作りもしたいのに⋯⋯


でも今の私にこの魔獣をどうこうできるだけの力は無い。だからと言ってギルドに討伐を依頼するお金もないし⋯⋯⋯⋯


「あ、魔獣が飛んで行った」


私は近場の木に登り、巣を観察する。すると――


「た、卵!!!3つもある~~!!!」


巨大卵が三つあった。


卵、それは完全栄養食。煮て良し焼いて良し茹でて良し。 そしてなにより美味しい。


「食べたい卵を!いいよね?親今いないし、一つくらいバレないよね?!」


龍は自身の卵に執着が凄いと聞いた事はあるが、あの羽根つきキメラは鳥頭でアホそうだし、一つくらいいいよね?


「うん。今夜は卵焼きだ」


私は親魔獣が周辺にいないことを確認して近づく。巣のある枯れた木を登り巣になんとかたどり着いた。


「うえー想像以上に卵デカいな。こりゃ籠とか必要だな」


卵を抱えて木から降りられそうにない。どうするかな、面倒だが一度家に戻って網か籠を取に戻るか。


「ガーガー」


「ん?うわ!やべぇ!親が帰って来た!急にはちょっと降りられないぞ」


ここはポツンとある広場の真ん中の木の上。他の木に飛び移る事も出来ない。困った私は三つの卵の間に挟まって身を隠した。


「⋯⋯⋯⋯(ひぇ!食べられたくない!こんな時こそ気配遮断!)」


私は気配を消し、三つの卵と同化する。自分は卵自分は卵――


「⋯⋯⋯⋯(どうしょう卵の上に魔獣が乗ってる。卵温めてるんですけど!)」


動けない、絶対に今は動けない。私はグリフォンの卵だ!と自分自身にマインドコントロールを施し思いこませ、グリフォンのお腹の暖かさを感じてたらいつの間にか寝ていた。




「ガーガー(ゴハン)」「ガーガー(食べたい)」「ガーガー(ちょうだい)」「カーカー!(メシ!)」


「ウ~~~(誰にあげようかね?)」


「カーカー!!(私んだ!!)」


「ウーウー(またミミかぁお前は食い意地ばかりだねぇ)」


私はグリフォンのミミだ。春にこの巣で産まれた。卵から孵った三頭の兄弟と毎日ここで過ごしている。


親から魔獣の生肉をもらい、兄妹でご飯の取り合いバトルをしながら食事をし、巣から落ちないように羽ばたく練習をしたりして過ごしている。


「ガーガーガ?(ミミは羽がないね。どうやって飛ぶんだよ?)」


「カーカー(気力だ)」


「ガーガー(?それに頭に耳?が生えてるの何で?)」


「カーカー(情報通になるためだ)」


「ガ?(は?)」



それからも四兄弟で寝起きを共にし、来る巣立ちの日のための様々な練習をする。


今日は母が傷ついた魔獣を巣に持ち帰り、子供たちに狩りの練習をさせた。


「ガーガー(この獲物を捕まえなさい)」


「カーカー(瞬殺)」


「ガーガーガガ(後はミミは飛べれば合格だが)」


「ガーガー(すごいねミミ)」




星の綺麗な夜には四頭で将来について語る日もある。


「カーカー(みんなは巣立ったらどこへ行くの?)」


「ガーガー(遠くに行きたい)」「ガーガー(ゴハンが多い所)」「ガーガーガーガー(飛べないミミがここに残るならここら辺)」


「カーカー⋯⋯(カミーユ⋯⋯)」




そしてとうとうこの日が来た。


「ガーガー(子供達よ行きなさい)」


「ガーガー(まずはあそこの木まで行くね)」


「ガーガー?(ミミ大丈夫?)」


「カーカーカ(気にせずに行って)」


私は飛ぶのが苦手だ。なぜなら羽が無い欠陥品だからだ。だが家族のみんなも羽だけで空を飛んでいるわけではない。この巨体にこの大きさの羽では飛べるはずがないのだ。ではどのように飛ぶかというと。


「カーカーカ!(行きます!)」


私は助走をつけ、体に風魔力を纏わせる。本来はこれで進むのだが⋯⋯⋯⋯


「カーカカ(私は滑空が精々だ)」


「ガーガー?(ミミどうするの?)」


「カーカーカカー(気にするなカミーユ。行ってくれ。ありがとう。元気でな)」


カミーユは何度も振り返りながら巣立って行った。別れの時まで優しいヤツだったな。


「⋯⋯⋯⋯(みな巣立った。これから私はどうしょうかな。飛べないグリフォンなどグリフォンではない)」


私はしばらく誰もいなくなった巣で無気力に佇む。これからどうしょうか?


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?」


私はしばらく記憶を整理する。


「あ?あ――――私グリフォンじゃねぇ!!!!」


自分自身にかけたマインドコントロールでグリフォンだと思い込んでたようだ。


「自分やべぇ。早く帰ろう⋯⋯今何月何日?!」



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