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佐藤はイケメンを痛メンにする

「シュクル変な人があそこから見てるよ。少し怖いかも⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯やっぱりか。大丈夫だよクラリス、私が退治してあげるからね。先に帰っててね」


始めて会った時から何か嫌な予感がしたんだよな。


「何してるんです?建物の影から覗きですか?」

「おおシュクル、君も感じるか?この町に何かあちら側の者が侵入した気配を」

「えぇ感じますね。この町で幼女を盗み見る汚穴男がロリコン側に堕ちた気配を」


「⋯⋯俺はまだ安全そうな南を調べようと思う。シュクルはどうする?」

「私は北を。そしてクレマンさん、あなたは絶対北側に侵入しないで下さいね。命の保証は無いです」

「シュクル本気で行くのか?北は邪悪な気配がするぞ⋯⋯そうか、君は私を庇うのか。俺は不甲斐ないな。こんな幼い子を一人行かせるとは」

「はい。ではさようなら!」


あいつはマジでヤバいな。てか、人の家がある北を邪悪とか言ってんじゃねぇよ。

クラリスがいる時点で極楽浄土だろ。


「⋯⋯⋯⋯シュクルよ」

「あ、あなたは脳筋戦斧の⋯⋯」


背後にいたのか?全然気配を感じなかった。出来るなこの男。


「カミーユという。すまんなシュクル。クレマンは私の護衛対象なんだ」

「え?」

「あれでも一応侯爵家の跡取りなんだ。貴族が通う学園に来年から通うのだが、その前に冒険者になりたいといい出してな。それで魔獣が多い北の町パックに来たんだ」


カミーユはクレマンの護衛だった。その事をクレマンは知らないそうで、ただ同時期にこの町に来た新人の冒険者同士だと思っているという。

クレマンはたった一人で家を出て冒険者としてこの町に滞在していると思っているらしい。


「後継者として優秀な人ではあるんだ。だが何て言うのかな、ちょっと浮世離れしているというか。だから彼のご両親も市政を知り、社会に実際に触れて学んで欲しいようだ。まぁ何故か君を気に入ったらしい。すまない。悪い人じゃないんだ。むしろバカいい人だ」

「いえいえいえいいえ?全然大丈夫っす!」


ヤバい。侯爵家の嫡男の美尻を公開してしまった⋯⋯あのパンツも絹とかだったかも。沢山のお蚕様が一生懸命に糸を紡いで、やっと出来たおパンツを切ってしまったのかもしれない。悲しい。


「そうか?そう言ってくれるとありがたい。これからよろしくな」

「はぃぃ」


これからって何だろう?



「やあ!シュクルおはよう!昨日は無事だったようで安心したよ」

「あざーずクレマンさん。昨日は南で何か気になる事はありましたか?」


それから暇なクレマンは毎日通学路に現れた。


「あぁ南の家屋で獣の悲鳴を聞いてね、すぐ現場に駆け付けたんだが、すでに事切れていた。凄惨な現場だった」

「そこ屠殺場ですからね」


まあな。佐藤だったら悲鳴を上げる現場だよ。日本は色々目隠しされてるよな。シュクルになって徐々に慣れてしまったけど、侯爵家の坊ちゃんにはキツイ現実かな。


「そうなのか。初めて見たよ。もうお肉残すの止めよう」

「そうですね⋯⋯」


単純でいいヤツなんだよな。でもクレマンの食べなかったお肉は侯爵家につかえる人々の食事になると思うのだが。


「キャア!クレマン様よ!」「ハアハアかっこいい!!」「いいわ~ヘっヘっへへ」「おしりおしりおしり齧りたい~」「毛下さい。ケッケッケッケツノ」


「クレマンさん人気ですね?」

「ひぃ!何故ここにまで不穏な空気が!!ダークサイドだ!シュクル逃げるぞ!!」

「えぇぇぇ」


どうやらクレマンの言う不穏な空気、ダークサイドとはチョっとアレな女性達の事だったようだ。 初対面時の先入観でクレマンを誤解してたな。今度から相手をこちらの想像で決めつけるのは止めよう。


シュクルは今まで全く分からなかった、イケメンの辛さを始めて知った。



「はあはあ、なんて危険なんだ。この町にまで伝染が拡大してるとは」

「えぇ?ではクレマンさんの家の方も酷かったんですか?」

「あぁ危険過ぎて家を出たんだ」


クレマンは語る。見目麗しい侯爵家嫡男クレマン。物心ついた時にはすでに老若男女に狙われていたそうだ。北に来た理由は冒険者になり、S級魔獣のようなゴリゴリな漢になる事だとか。


「このまま学園へ入学したら本当に私が狩られてしまう。入学前に何とかしなくては」

「これは私の母と同じですね。クレマンさんにも我が家の術が必要かもしれません」


私はクレマンを連れて帰ることにした。



「おや?お客さんかな?」

「父よ、困っている侯爵家嫡男を連れて来ました」

「侯爵家?!え?どうされましたか?」


私は父に事の経緯を話した。


「そうですか。よくわかりました。私も同じでしたから」

「父よ!そうだったのか!」


そういえば私の父もイケメンだ。父も学園での苦労があったのだろう。しみじみ語り出した。


「私は低位貴族ですから高位貴族の女性達に逆らえませんでした。そんな時、妻と出会いました」

母は同じく狩られそうになっている父を何度も助けたそうです。


「父も気配を消したり、窓から逃げたりしたんですか?」

「いや、ラリッサと相談して女性の嫌がる人間を装った。例えば女性は不衛生な感じは嫌いだし、臭いのも、姿勢が悪いのも、いかがわしい感じも嫌いだろ?それを装った」

「な、なるほど?」

「ただそのせいで王宮文官への夢は絶えた」

「うぅ涙が出ますね」


「シュクルの父、ロバートさんだったかな?僕も同じ事をすれば大丈夫でしょうか?」

「それは無理かもしれない。あなたは侯爵家の嫡男だ。身だしなみは整えられてしまうし、侯爵家の評判を下げるかもしれない。私は貧乏子爵家の三男だったから許されました」


「そうですよね⋯⋯やはりギンギンに鍛える他なさそうだ」

「待って下さい。もう少し考えましょう!例えばダサい謎の包帯を巻くとか、誰にも理解されない変わった毒草趣味を持つとか、無機物しか勝たん!みたいな特殊性癖を持つとか、半世紀前の眼鏡をかけるとか、ローマ服しか着ないとか、人形と寝るとか、とにかくやってみましょうよ」


「そうだな。時間はあるし色々試してみよう。ありがとうシュクル、ロバート」


――後日――


「いらっしゃ~い。おや?今日は弟子の弟子が来たのかな?」

「この方はクレマンさんです。今日からトーマス先生の一番弟子です」

「クレマンです。よろしくお願いします」

「おぉ?すでに白布を愛用してるのかい?いいじゃないか~!短期間で二人も弟子が来るなんて毒草研究ってもしかして人気~?」

「す、凄い⋯⋯トーマス先生は元の顔は多分いいのに、それをぶち壊すおかしな布巻き服、博物館級の年代眼鏡、綺麗な外観をぶち壊す室内の異様さ、変な薬草臭、所々設置してある裸婦の彫刻⋯⋯⋯⋯まさかあれらと一緒に寝てるのか⋯⋯?」

「ん?一緒に寝るのはキャサリンだけ~ちょっとお腹が出た感じがいいんだよ~石膏ってひんやりしてていいよね~!」


「先生よろしくお願いします!!」

「いい弟子だね~」


「うむ。良い仕事をしたな」


さり気に一番弟子を譲っておいた。これで私の周りは安泰だ。


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