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佐藤と同じ穴のムジナ

 今日も元気にクラリスと登校する。ノエルは男の子のお友達と登校だ。最近は体調が良さそうなので安心する。


「はい。皆さんこれから学校の花壇に花の種を植えますよ」


今私達は学校の庭に出ている。ノスタルジーな校舎の横にある花壇で、子供達が花の種を植えるのだ。それは古き良き昭和を感じる、とても懐かしい光景だと思われる。是非廊下には微妙に下手糞な習字を飾りたい。


「では少し間隔を開けて種を植えましょうね。『お~い!』じゃあ種を配ります『お~い!』」


「⋯⋯⋯⋯」


「ねぇ? シュクル、あそこに変な人いない? こっち見てるよね?」


「⋯⋯⋯⋯」


「種を植える『こっちだよ~!』のは第一関節辺りの深さで『シュクル~』すよ」


「あのおじさんシュクルの知り合い?」


「ん? どうしたの? 私は今、土の中に人差し指の第一関節まで差し込む事に忙しくてね。やはり十センチは間隔を開けるかな。種は楕円だが、どちらを上に向けた方が発育効率がいいのかな?」


花の種を植えるのは一体何年振りだろうか。佐藤が小学生の頃に植えた朝顔以来ではないだろうか。


「シュクルさんいい? あそこにいる人がシュクルさんを呼んでいるのだけれど、知り合いかしら? ちょっと授業の邪魔なのよね」


「⋯⋯はあ」


何でここにいるんだよ⋯⋯⋯⋯毒草のおっさん。



「いや~シュクルさんは小学生かぁ~小さいとは思っていたけどね~」


「それでどうしたのでしょうか⋯⋯」


「僕の家そこだよ~学校の隣なんだ。 ちょうど窓から弟子が見えたから来ちゃった」


「来ちゃった⋯⋯」


ふとシュクルは考える。このセリフはこんな場面で使われるべきでは⋯⋯?


『ごめん、来ちゃった。最近会えなかったから寂しくて』  


『ごめんな最近鬼忙しくて、時間できたら連絡するからさ、ごめん。もう行かなきゃ』


『あ、うん、連絡待ってるね⋯⋯』


『来ちゃった』はこんな感じだろ。断じておっさんのセリフじゃない。こんな『来ちゃった♡』初体験ポイントは嬉しくない。


「はいこれ、弟子に差し入れだよ~」


「⋯⋯⋯⋯ありがとうございます」


これも。差し入れとはこうあるべきだろ?


『佐藤さん、お疲れ様です。あ、あのとても忙しそうで、体を壊したらいけないなと思って⋯⋯これ差し入れです。食べて下さい! きゃあ!』


だろ? なんでまた『初差し入れ♡』がおっさんでしかも⋯⋯


「これは何ですか?」


「君用の白い布だよ~! 君は小さいから小さめを探したよ~着替え用も二枚用意したよ~!」


いつの間に私は弟子になったのだろう? そしてローマ服を強制されてないか? しかも学校の横に住んでるなんて毎日この布の着用を確認されるのか? 着替えまで用意されて、洗濯中です~とか言い逃れ出来ないじゃないか⋯⋯でもこの人は人間の貴族だしな⋯⋯うちなんて弱小獣人男爵家だ。この布の着用を拒否できない。


「さあ! 着てみて!」


「ここでですか? ちょっと恥ずかしいので、のちほど⋯⋯」


「大丈夫だよ~! 布は沢山あるんだよ~! 僕が布を広げて隠してあげるよ~! ささどうぞ!」


えー? 昔女性が時間内に着替える番組あったよな? 時間になると布が落ちるのだけれど、大抵着替え終わってるみたいな。今考えるとすごいよな。


「分かりました。じゃあ着替えます」  


「腰あたりをこの紐で縛ってね」


仕方なく服を脱ぎ、布を広げて肩から乗せる。そして適当に腰辺りを紐で縛る。こ、これは⋯⋯


「何これ、いいかも⋯⋯⋯⋯」


できればもう少し貫頭衣みたいだとより良い。少し縫うか? でもこれは着心地が最高かもしれない。

この世界の女の子は丈の長いワンピースを着ている。ゴムはないからウエストなどは紐で縛るし、化学繊維もないから布の収縮性が無いので正直動きにくい。だがこの布は緩さや長さが調節できるし、スカートをひざ丈にすればいい感じだ。


「ほらね~? いいでしょ~? 解放感あるよね~もう手放せないよ? 冬はこの上から布を掛けるだけ~!」


「おおおお! お手軽ぅ!」


これは家で娘の体操着を着るオカンと同じ気持ちなのか?! 着心地がいいから見た目を度返ししてしまう様な。


「すみません、あの今授業中ですから、ここで着替えたり、部外者の方が来られるのは困ります」


「は! そうだった! 私は今から毒草を植えるのだった!」


「おや~?! 流石僕の弟子だね~早速なのかい~?」  


「シュクルさん何を言っているのですか! 花壇にお花の種を植えるだけです!」


「先生、花壇の綺麗な花には基本的に毒があります!」  


「な、なんて覚えのいい弟子なんだい~!! 僕の後継者は素晴らしいぞ~! 将来安泰だぁ~!」


やはり基本がおじさんの私はトーマス先生と気が合ってしまったのだった。

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