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ストーカーⅢダークマタージョエル

「⋯⋯なるほど⋯⋯そうでしたか。お二人が私の野菜を⋯⋯」


「「ごめんなさい!!お詫びに王都で大人気のパティスリーで人気のガトーを沢山買ってきます!!」」


「⋯⋯まぁ、うん。そういう事なら?研究じゃあしょうがない。うん」


あれだけ泥棒にブッチしていたシュクルのくせに、甘い物の前に一瞬で手のひら返した。心の中で『沢山って具体的に何個かな?』とか考えている。


「それでですね、私たちは魔瓜とトマトを分析したのです!」


「凄い結果でした!それに凄い人達にも見てもらったのですよ!!」




 二人はパクった野菜を持って魔術師棟にある自身の研究室に帰り、呪いの土人形の股間に念を込めて釘を打ち付け、すっきりしてから研究を始めた。


まずは鑑定魔法だ――


「ぼ、ぼぼぼ僕の鑑定魔法ぅ?いいいいいいよ。か、かかっか鑑定するよぅぅぅ」


「「⋯⋯お願いします⋯⋯」」


この変な人物は鑑定魔法の精度で右に出る者はいないと有名な魔術師だ。

だがちょっとあがり症ではある。


「かかっか鑑定いいいい!!は!!!ななななんと?!魔瓜でででですううぅ」


「「⋯⋯知っています。それ以外にわかる事はありませんか?」」


「ちちちちょっと、せ、せせっく⋯⋯精霊ののの魔力がありますううぅ!!」


「「やっぱり!!!」」


魔瓜には精霊様の魔力が含まれていた。当然だ。



二人はとても緊張したが、研究の為に魔術師団副団長の研究室へ向かった。副団長は植物魔法の使い手としてはこの国一である。


「「失礼します。先ぶれを出しましたエメとアデリーン・ラ・マンシュですが、植物魔法について教えていただけますか?」」


「チッ⋯⋯何を知りたい?」


うぅ、怖い。副団長は不愛想な黒髪黒目の暗黒そうな大男で、可愛いと対極にある存在だ。第三騎士団の団長並みに怖い。絶対に女の子にモテない。


「「この魔瓜とトマトなんですが⋯⋯ひゃあ!」」


「ん?何だ?この魔瓜は?ずいぶんと大きいな。あむ⋯⋯」


副団長はいきなり魔瓜を鷲掴み、一気に半分以上食べた。怖い。いきなり怖すぎる。


「んんんん~?ぞおおおおお???」


「「ヒィ!!」」


いきなり叫び始めた副団長が恐ろし過ぎる。エメとアデリーンは震える体をお互いに抱き合って耐えた。


「何だ?!この魔瓜は!魔力が回復する!!ポーション並みだ!!それに美味しい!!」


「「ええ?!さ、さすがは精霊様です!!」」


精霊様の植物魔法で育てた魔瓜は、魔力豊富でポーション並み。そして美味しいとの結果が出た。


「それでこの魔瓜はどこで手に入れたんだ?精霊とは何だ?」


「「し、植物の精霊様が精霊の館に住んでいるのです!そこの魔瓜を――」」


「詳しく教えろ!!」


「「ギャア!!!」」


エメとアデリーンは精霊様との出会いからサバンの奇行までを涙目で、だがしっかりと副団長に話した。


「なんと!この王宮内に植物の精霊様が居られると?!こうしてはいられぬ。植物魔法の使い手として精霊様を見守らなくてはああああああああ!!!!」


「「ウギャアアア!!」」




「なるほど⋯⋯それでアレもいるわけですか⋯⋯」


シュクルは最近双子によるストーカー被害以外にもおかしな経験をしていた。


例えば食事だ。日に三度食事がワゴンで運ばれてくるのだが運び手は見た事がなかった。通常であれば特に気にしないが、ここでの食事にはいつも手紙がついていた。例えば⋯⋯


『植物の精霊様へ。精霊様はどんな花が好きですか?僕はヒマワリが好きです。小さい頃はよくヒマワリの様な子だね。って言われていました。』


「⋯⋯⋯⋯子供の日記か?だが『子供の頃』って書いてあるし⋯⋯まさか大人?怖!王宮怖!!だがこの手紙の意図がわからん⋯⋯」


そして気を取り直し食事を始めると、ズズズと感じる重苦しい暗黒な視線。シュクルは食事を止め、フォークとナイフを構え、臨戦態勢で暗黒視線の発信元を見ると⋯⋯


「ひぇぇぇぇ!!木から半分出てる!!!怖い!!怖いよう!!」


遠くの木の後ろに隠れてはいるがデカ過ぎて半分だけ隠れ、半分丸見えの暗黒大男がいた。


「いやいやいや、この手紙はお前じゃないよな?!ヒマワリ感ゼロどころかマイナスだし、ダークマターの様な子だったとか、そんなのだろ?」


たまたま、あそこに散歩中のダークマターがいただけだ。この手紙も私宛じゃない。私は植物何とかじゃない。


その後シュクルは食事を続けたが不思議と味がしなかった。



ある時は⋯⋯


『僕の気持ちです。』


手紙と共に種があった。ダークマターは感じられない普通の種だ。


「何だ?花の種か?気になるな⋯⋯植えてみるか」


種に罪はないのでシュクルは別働班の家の庭に植えてみる事にした。


耕した土に種を蒔き、そこに魔力を注いで成長させる。そうすると可愛らしい黄色い花が咲いた。


「この花に何の意味があるんだ?わからないな。綺麗だしまいっか~」


「あらシュクル~お花も植えているの?いいじゃない~いつも野菜ばっかりだし~あら?これはキルタンサスって花よ?ふふふふ~」


「ギルド長は知っているのですか?この花って面白いんですか?」


どうやらギルド長はこの花を知っているらしい。ふふふふ笑う理由が気になる。


「花言葉が面白いのよ~黄色いキルタンサスは『恥ずかしい』って花言葉があるのよ~」


その言葉を聞いた瞬間、あの暗黒物質の目線をまたしても遠くの木の方から感じた。

シュクルは全身に悪寒を感じ、瞬時に家の中へ入ってカーテンをしっかり閉め、窓のない部屋に籠った。



またある時は⋯⋯


「⋯⋯何だこの迷路の布切れは⋯⋯」


食事の配膳用ワゴンに食事用マットが付属してあり、それに昔懐かし迷路が描かれていた。

シュクルはちょっと迷路に興味を持った。


「懐かしいな。佐藤は迷路とか結構得意だったんだよな~」


でも真逆なシュクルだしな⋯⋯もしかしたら不得意かもしれない。でもせっかくだし挑戦してみよう。シュクルは鉛筆で布に直接線を書いて迷路を解き、完成させた。


「単純だったけど長い迷路だった。でも最後まで出来るとスッキリするな~」


ゴール出来て満足していると、ふとこの迷路が文字に見えてきた。


「⋯⋯この文字を読んだらアレだろ?もう二度と光は見れないだろう⋯⋯」


シュクルは見たら闇しかないにも関わらず、その文字が気になってたまらなかった。


「あぁぁぁ!こんなの鶴の機織り並みに見たくなるじゃないかぁ!えい!」


シュクルは耐えきれず迷路の文字を読んだ。


「『ジョエル(/・ω・)/銀杏の木』って何だ?」


その瞬間、外から暗黒物質の気配を感じて、つい窓からそちらを見てみると⋯⋯


「あぁぁ⋯⋯銀杏の木⋯⋯ダークマターはジョエルって名前なのか。そうか⋯⋯」


私は知りたくもないのに、それを許さないダークマター。


王宮はやはり塵魍魎が跋扈しているブラックホールだったのだ。

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