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佐藤は当て逃げされた事がある

「シュクル~来たわよ~」


「ギルド長!待っていましたよ」


ギルド長が騎士を連れてローヌにやって来た。すでに森の捜索は八割方終えているのだが、我々も連日の捜査で疲弊しているので状況を説明し、残りの森の捜索をお願いした。


「始めまして。私がここローヌの冒険者ギルドのギルド長ゴティエ・ラ・ボスジュと申します」


「獣王のセリーヌ・ラ・ソバージュよ~よろしくね~」


「では初めに――」


遺体が安置されている場所にギルド長を案内する。


「こちらの遺体ですが、ポケットの中に本人を特定する物はないか確認した所、これが⋯⋯」


「ジュラ・ル・モーザン辺境伯⋯⋯そうなるとこの遺体がご本人かしらね?」


亡くなってから時間が経っているので顔の確認は難しいのだが、一人の騎士が素早く検査を行い、本人と断定された。不謹慎だがこの騎士は鑑識みたいでかっこいい。


「シュクル~卵は全部でいくつあるの~?」


「八つとエロチェリーですね。袋に詰めて部屋にありますよ」


「そんなにあるの~?シュクルは大丈夫なのかしら~?」


「夜な夜な人の布団に入って来ますが、その度にデコピンして再度袋に詰め直します」


全く困った奴らだ。痴漢集団め。


その夜、騎士団の捜査が終わり、もう一つ卵が見つかった。


「シュクルが預かってね~もうこの辺りに卵が無さそうなら王都に行くわよ~」


「え?王都に行くんですか??」


街道の安全が戻ったので、次は王都での任務のようだな。初めての王都なので緊張する。きっと王都にはエロチェリーみたいな男がミルフィーユのごとく折り重なって可愛い獲物を待っているに違いない。気合を入れなくては。


シュクルは夜なべをして愛用のロープを丹念に洗い、硬い木の実の選定を慎重に行った。


そして次の日、王都に旅立った。


「シュクル~ポワールちゃんは遅すぎよ~急がないとサバンが⋯⋯まぁそれもいいわ~」


「ポワール一頭ではこれ以上速度は出せませんよ。可哀そうです」


今日もゆっくり街道をゆく。騎士達は先に行ってしまった。これから王国内の森で卵調査を行う準備をするのだとか。


一路王都のある南西を目指す。


しばらく行くと暖かい春の日差しが出てきた。ムース辺境伯領やローヌは山間にあり、そこからずっと下山してきた感じだ。


「ギルド長は寝ていてもいいですよ?移動ばかりでお疲れですよね?」


「え~?卵が怖くて寝られないわよ~」


九つの卵は袋に詰めて荷台に置いてある。ニーチェが葉っぱを食べつつ見張っているので特に危険は感じないのだが。


その日の宿は二部屋借りて、ギルド長は卵と一緒の部屋で眠る事を拒否した。

何をそんなに恐れているのだろうか。


次の日も街道を進む。お昼頃には王都が近づいて来たのか、建物と人が次第に増えてきた。


「気合を入れなくてはな」


きっとお上りさんを罠にかける詐欺師もいるだろう。安全そうな日本だって、四月に都心で新生活を始めた子が狙われるのだ。うちのニーチェに因縁をつける輩や当たり屋が馬車の前に出て来るかもしれない。


「この卵は硬いよな?投げたらいい武器になりそうだ」


「シュクルそれは駄目よ~!!」


ギルド長は滅茶苦茶に卵が怖いみたいだ。確かにこの卵は何人もの命を奪ったモンスターだが、それほど強くはないのに変だな。獣王の方が強いだろ?


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