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サバン魔術師の慟哭Ⅱ

「おや?気がつきましたか?」


「あれ?ここはどこです?」


気が付くと俺は医務室のベッドの上にいた。


「サバン魔術師はいきなり倒れたのですよ。まぁ私もですが」


「はぁ?あれ?クロワサント伯爵?⋯⋯あぁ!そういえば俺が廊下にもう一人いたんです!ドッペルゲンガーです!なら⋯⋯俺は死んだ⋯⋯?」


ドッペルゲンガーを見たら死ぬと聞いた事がある。俺は死んだのか?そんなぁ!

俺はまだ結婚もしてないし、彼女もいない。こんな寂しい死に方は嫌だ。


「生きてますよ。これは魔力切れです。でもさすがサバン魔術師ですね、すでに魔力量が回復してきています」


「魔力切れ?」


魔力切れも何も⋯⋯俺は今日はまだ魔力など使っていない。酷く空腹で疲れてはいたが⋯⋯あれ?よく考えると魔力切れの症状だった気もする。でも理由がわからない。


「お恥ずかしながら私もあの卵に魔力を奪われてしまいました」


「?あの卵?」


あの卵とはセリーヌから渡された卵か?でも卵に何が出来る?卵は卵だよな?


「どうもあの卵は魔力を奪って、その魔力主に姿形を真似るみたいですね。私はそれほど魔力が多くないので、あの卵は私にはなれなかったみたいですが」


「マジですか?!あれはヤバい卵だったんですか?」


あぁぁまたしてもセリーヌに嫌がらせされた。あの卵は俺の魔力を勝手に盗んで俺に変身したんだな。なんて危険な物を説明もなく、軽々しく俺に渡すんだよ!


「その俺になった卵はどうなったのでしょうか?」


「危険なので魔術師塔にある魔力を封じる牢獄に収監したそうですよ」


「⋯⋯何だか微妙な気分です」


俺そっくりの物が牢獄にいるのか。

俺は体に魔力量以外の問題はないので医務室を出た。



「え?!キャア!!」


「ん?何ですか?」


廊下に出たら何故か女性に悲鳴を上げられて逃げられた。

仕方がないのでそのまま廊下を歩き続ける。すると――


「え?何でいるの?」「出ちゃったの?」「すぐに魔術師に報告!」


「はい?俺が何か?ええええ?」


またしても逃げられた。どうして?俺の服装は普通だよな?顔も大丈夫だよな?窓ガラスに映った自分の姿を見るが特に変わった所はない。


たまにこういう事が起きる。いつも理由はわからないが、今日のはあからさまにおかしい。怯えられている気がする。


「ここだ!」「サバンⅡ!お前どうしてここにいるんだよ!」「牢獄から脱獄したのか?」


「おおお?おい、何だよ?!」


俺に向かって魔力攻撃の準備がされている。何で?!俺は魔力暴走も魔力攻撃もしてないんですけど?!


「取り押さえろ!!」「おう!」


「おい待て!んー!ん!!」


俺は一瞬でミノムシ状にされた。


「んー!んー!」


「うるさい!大人しくしろ!!」


一体何なんだよ――?!


「ヤダ!またなの?」「マジキモい!」「ショックよね!」「高位貴族なのに」


「⋯⋯?」


ミノムシ状にされて担がれていると人々から嫌な目線を受けた。軽蔑というか汚物を見る目だ。俺は一体何をしてしまったのだろうか⋯⋯?


俺はそのまま魔術師塔に連れて行かれた。


「塔を開けてくれ」


「え?ええ?待って下さい、どうしてサバン魔術師Ⅱがここにいるのですか?」


「脱獄したんだろ?お前らちゃんと仕事してるのか?」


「そんな訳ありません!この扉は一切開かれておりませんから!」


「え?じゃあこれは本物のサバン魔術師?」


「⋯⋯」


大体状況がわかってきた。俺に姿を変えた卵が脱獄したと思ったんだな。

真偽の確認の為、そのまま魔術師塔に入って俺のそっくさんが牢獄内にいる事を確認した。


「サバン魔術師!みませんでした!!」「申し訳ございませんでした!」「すまん!」


「ははは⋯⋯」


まぁ分からなくもないのか⋯⋯?だがどうしてあれほどまでに女性から軽蔑された目線を受けたのかが分からない。俺は同僚と後輩に聞いてみた。


「あぁ、実は――」


それは頭を抱える話だった。


俺の魔力を得て俺に変身したをしたソレは、部屋から出て真っ裸で廊下に立っていたそうだ。それを数人の魔術師たちが見つけ、取り押さえた。が、その瞬間、ドアから俺が出てきた。


驚いていきなり倒れた俺を心配し、ソレから手を放して俺を抱き留めた同僚。二人いる俺に驚き、ソレを拘束する手を緩めてしまった後輩⋯⋯拘束から逃れたソレは走り出したそうな。


全裸で廊下を走る俺そっくりのソレに驚き悲鳴を上げる人々。ソレは意外と逃げ足が速く、騎士と違い体力のない魔術師が捕まえるにはかなりの時間がかかったそうだ。


「捕獲は本当に大変でした。今日は会議が多かったのか驚くほど廊下に人がいて、とても危ないので捕縛の魔術攻撃が出来ませんでした」


ソレは終始笑顔だったらしい。大勢いる中を右に左にプルプル全裸で逃げ回るソレ⋯⋯それに伴い起こる阿鼻叫喚、地獄絵図⋯⋯


「⋯⋯」


俺は思考を遮断した。何も考えたくない。


「その⋯⋯お聞きしてもよろしいでしょうか?アノ生き物の顔はサバン魔術師で間違いないですよね?その⋯⋯アレにはお尻にハート型の痣がありますが、アレ固有の紋章か何かですか?」


「え?!」


俺は牢獄内でぼーっと立っているソレの尻を見た。見慣れたハート型の痣があった。⋯⋯俺と同じ。


「アレは顔だけサバン魔術師なのですか?それとも体も似ていますか?」


俺はソレの体を見回す。俺の体を第三者目線見た事はないし、鏡越しでしか見た事のない後ろ姿だが、マジで俺だ。アソコも俺だ。もう穴があったら入りたい。


「あ!アイツがいかがわしい動きをしているぞ!止めろ!そんな事人前でするな!」


「あぁ⋯⋯俺の社会的人生オワタ⋯⋯」


「サバン魔術師!!」


俺はまた意識を失った。

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