サバン魔術師の慟哭Ⅰ
「遅いわよ~サバン~」
「いきなり緊急呼び出しって何だよ!お昼ご飯の一口目を食べ始めた所だったんだぞ!」
「あら~さすがサバン!いいタイミング~」
ナルシスは倒れてからすぐに医務室に運ばれた。命に別状は今の所ないそうだ。
いきなりナルシスが目の前で倒れて驚いた騎士が、卵を危険物だと勘違いして遠くの壁に投げつけた。だが卵は割れなかった。超怪しい⋯⋯この卵。
「サバンはこの卵の面倒を見てね~肌身離さず、言うならば最近冷たい恋人の浮気調査のごとく監視するのよ~それが任務~」
「はぁ??何だそれ?俺は魔術師団員だから騎士団の任務とか受けないぞ。でもまぁ、卵くらいいいか⋯⋯」
体よくサバンに危険な卵を押し付けられてよかったわ~
サバンは卵を抱いて食事へと戻って行った。
――魔術師サバンの慟哭――
「この卵ツルツルしていて落としそうだな」
先ほど幼馴染のセリーヌになぜか卵を押し付けられた。昔から無理難題ばかり言われる事に慣れていた俺は、卵を預かるくらいいいかな?と思って預かったが⋯⋯
「落としたらまずいよな。袋もないし、お腹に入れておくか」
おれは魔術師団のローブを背中に流し、中に着ていた服のボタンを外して腹部に卵を入れた。大きめの服でよかった。
そして一口だけ食べた食事を再開させるために、急いで食堂に戻った。
「お、おばちゃん⋯⋯俺のメシどこ?」
「ん?ああ、ここに置きっぱなしだった食事?そりゃ片付けたわよ。困るのよね。きちんと片付けてもらわないと。あ!アンタ常習犯だね?いっつもほとんど残して食器片づけないで行っちまって!何かここの食事に不満でもあるのかね?」
「あぁぁ⋯⋯俺の昼メシ⋯⋯」
俺が昼メシを食べようとすると緊急の呼び出しとか仕事が入る。大体大した事はないのですぐに食堂に戻るが、いつも食器が無くなっている。
「アンタ食べようと思ってたのかい?悪かったね、でもその腹じゃ食べない方が男前になるよ。じゃあね」
「この腹?いや、違いますから⋯⋯!」
いつの間にか昼の休憩時間も終わり、食事にありつけなかった俺はフラフラと空腹のまま職場に戻った。物凄く疲れた気がした。
セリーヌから預かった卵を給湯室にあった果物籠に入れ、机の上に置く。午後は書類仕事が溜まっていた。
「はぁ、何だか集中できないな。ところでこの卵は一体何の卵なんだ?」
大きさからみても鶏の卵ではないし、魔鳥の卵だろうか。
仕事を続けるが書類を見ていても内容が頭に入らない。やっぱり食事を抜いた影響で血糖値が下がっているのかもしれないな。何か食べ物を⋯⋯と給湯室を探したが、いつもは誰かが置いたお菓子があるのに残念ながら今日は何もなかった。
酷い眠気がする。少しだけ寝よう。俺は目を閉じて机に突っ伏した。
「きゃあ!変態!」「え?サバン魔術師?!」「信じらんない!!」「あらぁ?ムフフ」
うーん、廊下で誰かが騒いでいるのか?どうしたんだろう?でも眠いし、力が出ない⋯⋯
「サバン!何してんだよ!」「サバンを取り押さえろ!」「誰か隠す物を!」
うるさいな⋯⋯俺が何かしたか?酷く重い体を起こして廊下へ行く。すると⋯⋯
「はぁ⋯⋯先ほどから何事ですか?⋯⋯え?ええええええええ?!ドッペル⋯⋯」
素っ裸の俺が取り押さえられていた。驚き過ぎた俺はその場で意識を失った。




