佐藤はデコピンの威力が弱かった
それは深夜に起こった。
「ムヒヒ」「フフフ」「ムヒヒ」「ムチチ」「ムフフ」「チチ」「イチチ」「クフフ」「ハフハフ」
「⋯⋯?ん?何だ?」
何か音がした気がする。まぁいいか。まだ夜だし寝よう。
「ムフフ」「フフフ」「ムヒヒ」「ムチチ」「ムフフ」「チチ」「イチチ」「クフフ」「ハフハフ」
「⋯⋯何だ?何なんだよ!!」
シュクルはベッドから飛び出た。
「あぁぁぁぁぁああああああ!!!何でこんなにいるんだよ!!!」
ベッドの中がチェリーだらけだった。
「卵型に戻れ!ピン・ピン・ピン・ピン・ピン・ピン・ピン・ピン」
とりあえずデコピン攻撃でエロチェリー以外小さくする。この生き物は攻撃を受けるたびに小さくなる。今は卵型になった。
「でも卵じゃないんだよな。卵みたいな感じなんだよな。ダンゴムシや亀みたいなシェルター持ちっぽい何かだ」
この卵を叩いても変化はない。これが最小状態だと思う。ちなみにすごく硬い。
「でもよく見るとつなぎ目が見える。この隙間に工具とか入れて開けたいな」
動物愛護団体に怒られそうな発言である。
「お前ら寒い所が好きなんだろ?熱いお風呂に入れたらどうなるんだろうな?」
「くぅん(涙)」
エロチェリーが反応するのだから熱いのは駄目そうだな。
「おいエロチェリー、お前だろ?あの卵を袋から出したのは。それにお前の魔力を与えたな?だからあいつらお前そっくりなんだろ?」
「ムヒヒ(好)」
勘弁して欲しい。エロチェリー集団なんて痴漢犯罪組織でも結成する気かよ?
ここ数日の卵討伐でわかった事は、この卵は生き物の魔力を吸収し、その魔力主と同じ形状になる事。成長には三段階くらいあり、攻撃を受けると魔力を使って体の修復をするのか小さくなる。
ちなみに動きは魔力主の本能的なものになる。寝る、食べる、動く⋯⋯など。
魔猪や魔鹿はいきなり突撃して来たが、ごく単純な動きだった。
街道沿いにあった遺体はこの卵達が魔力欲しさに襲ったのだろう。平民でも多少だが魔力はある。いきなり魔力を奪われた人は死なないまでも、深い眠りについたり、仮死状態になったりする。真冬の森でそんな事になればすぐに凍死だ。
亡くなった冒険者の中には穴の開いた遺体もあった。その者達は魔力持ちの冒険者で、多分臓器か体内に魔力が沢山あるので卵が穴を開けたのかもしれない。まだ仮説だが。
第四日目
今日はムース辺境伯領辺りの森の探索だ。
「シュクルさんの仮説が正しいとして、人から魔力を奪った卵は人の形になりますよね?でもまだ一人も会っていませんが⋯⋯」
「まぁそうでしょうね」
人間の魔力を吸収し、人間になった卵は裸で森や街道をフラフラしたのだと思う。もしそんな状態なら一瞬で魔獣や動物に攻撃される。特に今年は食物が無くて厳しい冬だったのだから。
そしてまた卵になり、森の魔獣を見つけて魔力を奪って成りすまして⋯⋯の繰り返しだったと思う。
「でももし町に卵人間が潜んでいるとしたら危険ですね。人から魔力を奪う可能性がありますので、注意喚起した方がいいですね」
卵はいつ魔力を奪うのだろうか。お腹が減った時?攻撃を受けて魔力不足になると?成長するため?謎は深まる。




