同じ穴のムジナ
「同じ穴のムジナ」は、別々のように見えても、実は同じ仲間同士でつながっており、悪い集団を指すことが多いです。
ムジナはタヌキまたはアナグマのことです。
タヌキがいなくなった巣穴にアナグマが住み着いたり、逆のパターンで同じ巣穴を異なる動物が再利用することから、ことわざができました。
アンマンマン様主催『たぬき祭り』参加作品です。
「今回は野生のタヌキのことを教えてくれるんだって?」
「んとね。タヌキのことを誤解している人が多いの。風評被害が甚だしいの」
「えーと、人を化かしたり、昔ばなしで悪役になっていることかな」
「それはいいの。日本の昔話ではキツネやタヌキが悪者になるのが多いの。これは畑を荒らされるからなの。でも西洋ではオオカミが悪役になることが多いの。狩人が森で襲われたり、放牧した羊やヤギがオオカミに襲われるからなの」
「まあ、西洋にはタヌキはいないし」
「ボクが気にしているのはタヌキが『ふとっている』と思われることなの。これは毛が長いのと、顔の毛が横向きに生えているから、そう見えるだけなの」
「イヌやネコの長毛種も太ってみえるよな」
「んとね。じっさいのタヌキはスタイリッシュなの。イヌと違って塀の上を歩けるし、木に登ることもできるの」
「まぁ、身軽なのは確かだな。木登りはクマでもできるから、痩せている証拠にはならんが」
「んとね。タヌキのおまたの袋が大きいというのもウソなの」
「信楽焼きのタヌキ像のイメージだな。他に『たんたんタヌキの……』で始まる歌とか」
「歌の方は『まもなくかなたの』という賛美歌の替え歌なの」
「元は賛美歌だったのか。ただ、袋の大きいのは江戸時代の浮世絵にも描かれているみたいだぜ」
「んとね。誤解の理由は諸説あるけど、金を溶かす炉に空気を送る『ふいご』がタヌキの皮で作られていたの。大きく広がるタヌキの皮と金のイメージが結びついたという説があるの」
「ことわざでも八畳敷きという表現で使われているな」
「んとね。金の小粒をタヌキの皮でつつんで叩くと、八畳の金箔になるらしいの」
「なるほど。そこからあの袋のサイズに変わったという説もあるかもな」
「んとね。他にも誤解されやすいというか、他の動物と間違えられることがあるの。タヌキと似た動物ではこういうのがあるの」
タヌキ
イヌ科。目の周りに黒い模様。尻尾は短くて、先っぽが黒い。
アナグマ
イタチ化。目の上下に黒い模様。ツメが長い。
ハクビシン
ジャコウネコ科。鼻はピンクまたは黒。鼻の上に白線が通っている。尻尾は細長い。
アライグマ
アライグマ科。目の周りに黒い模様。前足が長く、指も長い。尻尾はふさふさした縞模様。
レッサーパンダ
レッサーパンダ科。顔の横に白い模様。目の上に眉毛に似た模様。尻尾はふさふさした縞模様。
「たまにタヌキの絵で、尻尾にしましまが描かれることもあるな」
「タヌキの尻尾に縞模様はないの。あるのはアライグマかレッサーパンダなの」
「アライグマってこういう色だっけ。もうちょっと明るい色を想像していたぜ」
「それはアニメ『あらいぐまラスカル』のイメージだと思うの。そのアニメではテレビでの見栄えを優先して、レッサーパンダに近い色になったの」
「アニメの影響で、日本でペットとして買う人がでたんだな。飼いきれなくなって、アニメみたいに森に放つ人がでたとか」
「『あらいぐまラスカル』は実際にあったできことがモデルなの。アライグマは幼獣は人間になつくけど、成獣になると飼い主にもかみついたりひっかくようになるの。動物好きの主人公でも成獣は飼えなくなったの。このお話では元々野生のアライグマがいる森に返しているけど、日本でそれをやると生態系がおかしくなるの」
「今では日本で野生化したアライグマが畑や果樹園を荒らしまくっているみたいだな」
「日本では都市部でもタヌキやアライグマが出没するかもしれないの。もし尻尾にしましまがあったら、それはタヌキじゃないの」
「ところで、タヌキの目の周りの黒い模様は左右が別れてるんだよな。子狸くんのは模様がつながっているように見えるが?」
「んとね。そこは気にしないで欲しいの」