表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Tamer  作者: 感謝
序章
1/6

魔王を捕まえろ①

魔王城の天守閣、玉座の間。


玉座に座る女。

目を見張るような美貌に銀色の長髪。漆黒の衣を身にまとい、生を感じないほどの白い肌との対比が妖しい雰囲気を醸し出す。


その女こそ、この城の主。魔族を統べし者、魔王である。ただ座っているだけで溢れ出すオーラはどの魔物のものとも、どんな猛者のものとも一線を画す。


圧倒的威圧感、邪悪、強さ。ほぼ全ての冒険者はこの部屋に入った瞬間立っていることはできないだろう。この女が戦えば、どれほどの力を見せるのか……。



魔王の見下ろす視線の先に男が1人。


2000年前、伝説の勇者が魔王討伐に挑戦し、激闘の末敗北してから2度目の挑戦者となる。


その男は黒のスーツの上にローブを纏い、ポケットに手を入れたまま堂々と立っている。魔王の放つ邪悪なオーラに一切動じることなく、堂々と。



「我の元へとよくぞ辿り着いた……人間よ……」


先に口を開いたのは魔王だった。その美しい声は聴いていると魂を吸い取られそうな、そんな不気味さがある。


魔王は続ける。


「よもや……我が魔王軍が全滅とはな。」


玉座の間には男と魔王の2人だけだった。

そもそも、この魔王城にはもはや魔王と男の2人しかない。


魔王は静かにじっと男の姿を見つめ、僅かに笑みを浮かべる。


「だが汝ならばなんの不思議もない。このような猛者がこの時代の人類にいたのだな。世界とは広いものだ。」


魔王は戦いにおいて、孤独であった。圧倒的強さによる孤独。全てを手にした魔族の王は、自分と同等の存在というものを持たなかった。


久々に出会った、〝楽しめる相手〟。


魔王は数千年振りにその胸を少し、ほんの少し高鳴らせていた。


「…………ハハッ……!」


男は笑う。魔王を目にし、嬉しそうに笑う。

まるで、子供が欲しかった玩具を買ってもらったときのように。


「これが〝魔王〟……! 想像以上だ! これで、俺は……!」


「……我を前にして笑うか、人間よ。 」


魔王は感じた。この人間は同族であると。

あまりの卓越した実力のために抱えてしまった孤独を持て余していたのだと。


だが、男の一言で魔王は唖然とする。


「おい魔王。俺の仲間として共に戦え。」


「…………仲間……だと?」


「あぁそうだ。仲間になれ。 旅の伴としてついてこいと言っている。」


「…………」


魔王の思考は混乱した。ここに来る者は皆、魔王に戦いを挑みに来る。


仲間になれ、などとというあまりに予想外の発言に対し、言葉が出ない。


「まぁ、そうは言っても無理だよな……」


男はため息をつきながら手をかざす。


男の手の上に、大きな骨付き肉がどこからともなく現れる。


「ほら、最高級の霜降り肉だ。これをくれてやる……! 高かったんだぞ本当に! 特別だからな……!」


悔しそうに拳を握りしめる男。まぁ、背に腹はかえられないな……とブツブツと独り言。


「…………」


男の期待とは裏腹に、沈黙を続ける魔王。


魔王の表情には少し怒りの色が見える。


「……汝、我を愚弄しているのか?」


男は驚いた表情で肉をいずこかへとしまう。


少し沈黙した男は、渋い顔をして数刻頭を悩ませる。


男の震える手が、空間の中にゆっくりと飲み込まれていく。


引き出された手に握られていたのは、宝石のように輝く脂をまとった骨付き肉であった。


市販最高級だった先程の肉と比べても、オーラさえ感じるその肉は、見ただけでも涎が止まらない代物だ。


「1個しか持っていないが……使うなら今だろう。」


男は決心を固める。


「世界に数匹しか確認されていない〝神話級〟レアモンスター、《宝石豚》の肉だ! 持っていけドロボウめ……」


男は涙を目に浮かべながら、宝石豚の肉を魔王へと差し出す。


魔王は溜息をつき、呆れた顔で男を見下す。


「もう良い。 死ね。」


魔王が男に指を向けると、指の前に禍々しい魔法陣が現れる。


魔法陣から放たれた黒い冷気が、男を一瞬で巨大な氷塊で包む。


「…………」


魔王は呆れながら指をパチン、と鳴らす。


魔王の首元の後ろに先程の魔法陣が4つ現われ、黒い鎖が勢いよく飛び出でる。


鎖は見えない何かを捕らえる。


「〝幻影魔法〟に〝隠密スキル〟。 我にそんな子供だましの手品が通じると思ったか?」


鎖が捉えた先から、短剣を握った男の姿が現れる。 先程の氷塊の中には、既に男の姿はなかった。


「流石だな、魔王。」


ニヤリと笑う男、対して魔王は不機嫌だ。


「……我を舐めているのか?」


「しっかし、宝石豚の肉で捕まらないモンスターとはな……流石魔王だ。格が違う。」


感心する男に対し、混乱した様子を浮かばせる魔王。


「汝、我を肉で捕らえようと……?」


「まぁただ、肉で無理なモンスターにはこうするしかないな。」


「来い、〝青龍〟」


男の呼び掛けに応じ、男の背後から巨大な青い龍が起きな口を開けて突撃してくる。


男を捉えた鎖も、魔王が座る玉座も破壊し、青龍と呼ばれた龍は進む。


開放された男は青龍に飛び乗り、青龍は魔王にめがけて突進を続ける。


涼しい顔で己の前に防御魔法を張り、青龍の攻撃を無効化しながらも押し出される魔王。


「実力で連れて行くしかないッ!」


青龍から飛び降り、両手に片手剣を握った男が魔王に飛びかかる。


男の斬撃が両手から目に止まらぬ速さで魔王の防御魔法に切りかかる。


魔王の防御魔法は一瞬で破壊され、むき出しの魔王に、男は刃を振りかざす。


「大人しく仲間になりやがれッ!」


男の斬撃が、魔王の首筋を捉えたーーーーー


しかし、


瞬時に体をひねり、仰け反るように斬撃を避ける魔王。


彼女の長い足が、下から男の顎を蹴りあげる。


魔力の波動が、まるで隕石でも落ちたような轟音を轟かせる。


「ぐふぉ…………っ」


さらに魔王は体をひねり、魔力を込めた蹴りを横から男の体に叩き込む。


黒い稲妻のような衝撃を纏ったその攻撃に、男はピンポン玉のように吹き飛ぶ。


数十メートル飛ばされ、壁に激突し、崩れたら壁から男はずり落ちる。


血を吐き、壁にもたれかかるように座り込む男の前に、既に魔王の姿があった。


「汝……一体何者だ?」


魔王が問いかけた瞬間、魔王の背後に強力な力を感じる。


男の背後からの斬撃に、魔王は己の魔力で作りだした黒い大剣で応える。


2つの大きな力のぶつかり合いに、周りの柱や壁が一気にくずれおちる。


男は鍔迫り合いの最中、得意気な顔でこう答える。


「ただの魔物使いさ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ