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王弟殿下のストーカー日記  作者: くみたろう
王弟殿下のストーカー日記
9/81

ストーカー日記 9


 あの昼食の日から1週間が経過した。

 あの時の慌てるネネリーナを見た生徒達は、印象が違うと目を丸くしていた。

 高飛車でキツイ物言いをするネネリーナ。

 クラスメイトの1部以外の認識がそうだったのだが、この間のセルジュとの会話を見聞きしてネネリーナへの好感度が上がったようだ。


「ネネリーナ様、おはようございます」


「え? ええ、おはようございます」


 前の席の男爵令嬢は今日もにこやかに挨拶をしてくれる。

 その隣には、ふわふわボディの子爵令嬢もいて。

 昨日席替えをしたのだが、ネネリーナの前にはまたいつもの男爵令嬢がいる。

 偶然にもまたすぐ近くの席で、喜びに男爵令嬢はこっそりガッツポーズをしていた。

 ふわふわボディな子爵令嬢は今回初めて近くになり、ほぼ交流がなかったはずの少女だがツンツンするネネリーナに初めから笑みを浮かべていた。

 ふわふわボディと同じようにふわふわした子で、ネネリーナは昨日挨拶をされてかなり挙動不審になりながらも高圧的に挨拶を返した。

 キョトンとしたから、しまった! と後悔をしたが、すぐににっこり笑ったふわふわボディ男爵令嬢にホッと息をつく。

 嫌われたい訳では無い、むしろ仲良くしたいのにツンツンしてしまうネネリーナは心底安心したのだった。


 こうして、新しい席での日常が始まった。



「ネネリーナ様、マドレーヌなのですが如何かしら? 」


 ふわん……と笑って出された個包装のマドレーヌ。

 ピンクの花柄の可愛らしい小さな袋をテーブルに置かれ、え? ……と見る。

 すぐ隣に立つふわふわボディ子爵令嬢を見ると、ニコニコしていた。

 実は燃費の悪いネネリーナ様。すぐに空腹になりやすく、日々お腹の音と戦っている。

 軽食が欲しいっ! と泣きそうになる日常を過ごすネネリーナの前に出されたマドレーヌに、釘付けになった。


「マドレーヌはお嫌い? 」


「べつに! きらいじゃなくてよ?! 」


「では、どうぞー」


「…………貰ってあげてもいいわ! 」


 差し出されたマドレーヌは3つで、それなりな大きさをしている。

 ドキドキしながら受け取ると、嬉しそうに見てきたふわふわボディ子爵令嬢をチラリと見る。


「……………………あとで……あとで大事に頂くわ」


「はい、お好きに食べてください」


 ネネリーナは喜んでいた。

 友人という友人がいないネネリーナは、お茶会などに呼ばれてもこの喋りのせいで孤立しやすい。

 だがら、誰かに何かを貰うという事は稀であった。

 しかも、手渡しなど数えるくらいである。

 店でセルジュに貰ったカップケーキに喜んだネネリーナは、それと同じくらいこのマドレーヌも喜んでいた。

 なによりも、ネネリーナに好意を見せてくれる子爵令嬢に喜んでしまうのだ。

 人前だから、必死に表情を保とうとしているが、赤らめた顔で口はにょにょにょと笑ってしまうネネリーナは鞄に大事にしまったマドレーヌをチラチラと見てしまう。

 そんな可愛らしいネネリーナを2人の令嬢はニコニコして見ていた。

 勿論、ネネリーナ様可愛いな……とクラスメイトからの視線が増えている事に気付いていない。


「メリル様! グッチョブですわよ!! 」


「え? なぁに? ミネルヴァ様」


 ネネリーナがソワソワしている時、2人の令嬢が話をしていた。

 いつもの男爵令嬢こと、ミネルヴァ・カブラス男爵令嬢と、ふわふわボディ子爵令嬢のメリル・ラクシーン子爵令嬢。

 早々にネネリーナの可愛さに気付いたミネルヴァは、更なる可愛さを引き出したメリルにグッチョブと親指を立てるが、メリルは首を傾げふわふわと笑っている。

 重厚に乗せられた体のお肉が気になる年頃のメリルはご飯やおやつが大好きで、気にはするけど辞められない……とお腹のお肉を掴みながらもおやつを食べる。

 そんなメリルを下に見る人は沢山いるのだが、ネネリーナはメリルの好感度を爆上げさせた。


「あの! 」


「はい? 」


「……………………お返しは、なにがいいかしら」


「お返し……」


 ん? と首を傾げるメリルに、怒鳴るように言った。


「だから!! マドレーヌのお返しは何がよろしくて?! 」


「…………あ、では一緒にお茶会をしませんか? ミネルヴァ様と3人で。いかがかしら? 」


「お……お茶会!! 」


 カタン! と立ち上がるネネリーナに、メリルは眉を下げた。


「お嫌だった? 」


「…………………………いいわ。準備してあげないこともないわよ!! 」


「わぁ! 楽しみが増えましたー」


 パチパチと手を叩くメリルのどこが抜けた反応にもネネリーナは胸の中で喜び咽び泣いた。


「(私が!! 私がお茶会!! しかも、開催するのは私だわ!! どうしましょう、楽しみで仕方ないわ! これが女子会なのね!!! )」


 座り直して何を準備しようか頭の中をぐるぐるしている頃、安定のストーカーなセルジュが頬を赤らめてドアの隙間から見ている。

 もう見慣れたクラスメイトは、椅子を用意するべきか? と労りを見せはじめ、他のクラスや違う学年の女子までも集まりセルジュと見られているネネリーナ観察が始まっていた。

 しかし、自分の事でいっぱいなネネリーナは今日もセルジュの存在に気付いていない。




「ネネ様がお茶会?! え、行きたい……いや、女子会って喜んでるし無理だよね……えぇ、可愛すぎてどうしよう……いつもよりお洒落するんだろうな。近くで見たいよネネ様……………………近くで見ようかな」


「セルジュ様? 何をお考えで? 」


「うん。女子会には出れないから、屋敷に入らせてもらってコソッと見ればいいかなって」


「ちょっ……やめてください?! 」


 カインの小さな叫びに耳を貸さないセルジュは、うんうん……と頷きにっこりした。


「お友達が出来て良かったねぇ、ネネ様」


 孤独なネネリーナに友人が出来るのは賛成だった。

 あまり沢山作ってセルジュとの時間(まだそんなに会わないけれど)を減らされるのは嫌だが、仲良しな友人を作るのはいい事だと思っている。

 このままだと社交界でもぼっちになってしまうし。

 男友達を作るのは断固拒否であるが、女子ならいいのだ。


「メリル・ラクシーン嬢ね。身辺調査しないと」


 勿論、ネネリーナに合う子か確認の為調査は必須。

 ミネルヴァは既に調査されていて、合格点を出している。

 良い子だといいなー、と呑気に思っているセルジュをカインは死んだような目で見ていた。


 

  

 ネネリーナはまだ社交界デビューはしていない。

 社交界デビューは、セルジュの婚約発表のある王城主催舞踏会の日である。

 もう少し先の舞踏会にソワソワしはじめている他の生徒を見ながら、ネネリーナのドレスを思い出す。

 勿論チェック済なネネリーナの真っ白なドレス。

 それに合わせて、こっそりティアラと装飾品を用意して渡すように手配済なのは内緒である。


「気に入ってくれるといいなぁ」


「……………………ストーカーレベルが上がった」


「なんか言った? 」


「いえ、とんでもない」

 

 

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