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王弟殿下のストーカー日記  作者: くみたろう
オネェに監禁された幸せの100日間
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監禁54日目


「ねぇ、メリルちゃん。これどうだった?ふふ。眠っているから感想言えないわよね……可愛いわ。……こんな無防備に寝顔を見せてくれるのね、ねぇ、ちょっとだけ……抱きしめてもいいかしら」


「(だめよぉぉぉぉ!!)」

 

 行きと同じく夜更かしをしながら読書をしているメリル。

 その為、持参してきた本は読み切れないと思っていたが無事に1冊読み終わっていた。

 本来なら穏やかな気持ちでちょっとえっちなお話を読み、ドキドキしながら過ごすはずが、ザラノアールの押しの強さから逃げ出すように本に没頭して日中眠る帰路を選ぶ。

 確かにザラノアールと一緒にいる時間は減ったが、物理的には何も変わっていなかった。


 ユルユルと意識が浮上して目を開けようとすると、隣から甘ったるい声色で甘ったるい事を言うザラノアールにメリルはビキッと体を固くした。

 ひぇ! と心の中で叫び、学友であるネネリーナがセルジュに押されているのを可愛らしいわねぇ……と笑っていた過去に全力で謝る。


 色々あって結婚は諦めていた。

 心の底から愛してくれる人と逆境の中でも手に手を取りあって……そんな事ができる相手でないと今後の人生幸せになんてなれない。

 だから、それなら一生結婚しなくていい。


 そう決心してザラノアールにも伝えた。

 それを理解しきれていないザラノアールだったが。

 寄り掛かることにしかメリルの存在を認めなかったからザラノアールとの未来はないと思っていたのに。


 この視察でザラノアールのまた新たな姿を見たし、女性に言い寄られる姿に不快感を感じてもいた。

 そんな自分の感情の変化に戸惑いながらも、やっぱり……と考えていたのに。なのに。


「メリルちゃんのふくふくのほっぺ可愛いわ。腕も手も、ツルツルで可愛いし甘い良い香りがするのよね。香水は使っていないって言ってたし……メリルちゃんの香りかしら。ふふ、いいわね好きな香り。どこもかしこもツルツルで、いつまでも触っていたくなるわ」


「(ひぇ……)」


「髪もフワフワで綿菓子みたい。この手触りがいいのよねぇ」


 フワフワと髪を撫でて指を髪の中に沈めるザラノアール。

 2人きりの馬車の中、やりたい放題で楽しそうだ。

 どうにも動くけなくて震えそうな体を必死に抑えようとしていると、頬を優しく撫でられる。


「…………可愛い。ぷにぷに……ねぇ、メリルちゃん……寝たふりをまだ続けるなら、この可愛らしい唇奪っちゃうわよ……?」


 ぐっ……と静かに腰に響くような甘い声と言葉。

 頬を撫でる指先が滑り落ちて、ぽってりとしたメリルの唇を触っている。

 イタズラに唇の中に指先を入れようとして、思わず唇に力を込めた。

 はむっ……と指先を咥えるが、目は開けない。

 

 今すぐ目を開けて、冷静にザラさんを引き離して……そう、だめだって、無闇に女性に触れてはいけないわって言わないといけなくて……


 そうは思うも、恥ずかしさと期待から目が開けられないメリル。

 そんな姿を見て、隣に寄りかかるように座っているメリルを抱きしめてそのまま椅子に押し倒した。


「………………ねぇ、それって期待していいのかしら。あなたの全てを、私、もらってもいいって事? ……もう、やめてあげられたいわよ」


 そう言っても目を開けないメリルに笑って、ザラノアールが優しく髪を撫でた。


「…………ふふ、じゃあ……あなたは私のよ」


 甘く蕩けるような言葉、上から落ちてくるザラノアールの髪が頬に触れたと思ったら、唇が暖かな温もりに包まれた。

 生まれて初めての口付けが、馬車の中の寝たふりをしている時だなんて……と思うが、これはメリルが選択して決めた決断だ。


 優しく啄むように唇を食まれる。

 優しくなぞるように舌先が唇をなぞって、唇の隙間から侵入したいと意志を知らせてくれる。

 唇をしっかりと閉じていたメリルの背中に腕を差し込んでギュッと抱きしめられると、熱い息を吐きだしなが顔を少しだけ離したザラノアールと、初めて目を合わせた。


「…………ふふ。緊張してるの? 可愛いわね。ねぇ、大好きよ、愛してる。あなたの一生を私がずっと守っていくわ。だから、ねぇ……結婚しましょう? 私があなたを好きになってしまったから、今更離してなんてあげられないの。いやなら前みたいに閉じ込めてずっと私だけが愛し抜くわ。部屋から出してあげられないけど、なんの不便もさせないから」


「…………それは、監禁っていうのよ」


「いいわよ、あなたが手に入るなら罪でもなんでも被るわ。それくらい愛しているの」


 真剣に、でも笑顔でメリルに言うザラノアールから視線を逸らす。


「………………いやだわ」


「………………いや、なの」


「だって、それじゃあ私の気持ちを聞いてはくれないでしょう?……私は、ザラさんと幸せになりたいから……だから、目を開けなかったのよ。私の愛は、受け取ってはくれないの?」


 照れたようにはにかんでザラノアールを見上げるメリルに一瞬思考停止した。

 それから直ぐに抱き締められ唇を貪られる。


「ふっ……ぅん?! んっ……んんっ!! ……はっ……あっ! まっ……まって……ま……」


「待てないわ! そんな可愛い事言われて私が待てるわけ……」


 スカートをたくし上げて素足に触れるザラノアールにビクッと体を緊張と不安で跳ねさせた時、バンッ!! と馬車を外から叩く音がした。


「ひぇ!!」


「えっ?! なによ! ちょっ……あ」


 驚き体を離して振り返ったザラノアールが見たのは、馬車の扉が開き鬼のように怒りくるうアンの姿だった。

 すぐに冷静になるザラノアールは、さっ! とメリルのスカートをなおす。


「な、何もしてないわ! 未遂よ!!」


「止めなかったら致していると言うことじゃないですか。 外まで声丸聞こえなんですよ、メリル様が大好きなのはわかりますけど、こんな場所で初めてを散らさせるつもりですか。馬鹿じゃないですか」


「…………それはまずいわ。メリルちゃんの可愛い声が聞かれちゃう。ありがとう、今回は本当に感謝よ。帰ってからよね。ええ、帰ってから……」


 チラッと倒れているメリルを見るオスの顔をしたザラノアールにひぇ……と声が漏れた。


「け……結婚までは……あの……」


「無理よ」


「メリル様、我慢させるのは逆効果ですので、今のうちに予習復習しましょうか」


 そう言われて渡された夜の秘やかな場面が濃厚な小説に、メリルは無理かも……無理かも……と首を横に振った。 

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