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王弟殿下のストーカー日記  作者: くみたろう
オネェに監禁された幸せの100日間
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監禁31日目


 セルジュにガツンと言われてから慌ただしく4日が経った。

 どうやら受け持ちの仕事にトラブルがあったらしく、走り回っていたのだが現地に見に行かなくてはいけなくなりそうなのだ。

 大見得切って自分を好きなってもらう為に頑張ると言っていた割にはメリルとの時間が作れないザラノアール。

 だからとザラノアールはメリルの部屋の前に立ち、深呼吸をしてからノックした。


「はい」


 メリルの柔らかな声が聞こえる。

 中からアンによって扉が開かれ、ザラノアールの姿を見たメリルは一瞬間を開けた後笑みを浮かべた。


「メリルちゃん、なかなか会いに来れなくてごめんなさいね」


「いいえぇ、ザラ様が忙しいのは分かっていますもの」


「…………そう言ってくれて嬉しいわ」


 先日会った時同様に3人がけソファの真ん中に座るメリル。

 秋も近づき以前のレースで彩られた服から、厚みのある服に変わっているメリルの姿に笑みが浮かぶ。


「いいわね、秋服も似合うわ。髪も結んでいて可愛い」


 ふわりと笑って褒めてくれるザラノアールを本で顔半分隠しながら見るメリル。


「ザラ様、無理して褒めなくてもいいのよ?」


「無理して褒める? 何をかしら」


「…………え」


 不思議そうにメリルを見ながら自然に隣に座ったザラノアールにポカンとする。

 メリルはザラノアールが好きになってもらうようにすると言う言葉通りに褒めたのかと思っていたのだが、どうやら本心で言っていたようだ。

 社交辞令だと思っていたメリルは目を丸くしてザラノアールを見る。


「…………あ……ううん、なんでもないの」


 ちょっとビックリしながらも首を横に振ったメリルは、誰にでも女性は褒めるものだものね、と納得する。

 この世界の男性は女性を褒める風習があるからメリルもすぐに納得したのだった。


「ねえメリルちゃん。大事な話があるの」


「ええ、なぁに?」


「至急現場確認に行かなくてはならなくなって数日城を開けるのよ。それでね、一緒に来て欲しいの」


「え……一緒に?」


 眉尻を下げてメリルをじっと見ながら話すザラノアールは、柔らかくふくふくとしたメリルの手を握った。


「少なくても6日は城を開けるのよ。その間メリルちゃんに会えないのは寂しいわ」


 ザラノアールもこの時は目的達成の為にそばにいる時間を減らしたくないからこその誘いだった。

 距離があり、片道2日はかかるので少なくても6日、もっと伸びる可能性もある。

 2ヶ月しかないザラノアールは1日も無駄にしたくない。

 そんな見え透いた感情はさすがにバレバレで、メリルは困ったように笑う。


「一緒に行くの?」 


「ダメかしら……」


 しゅん……と悲しそうにするザラノアールにメリルはアンを見る。 頷くアン。


「嫌ならお断りして大丈夫ですよ」


「アアァァァァアン!! 言うなら前向きに背中を押してちょうだいよ! なんでお留守番すすめるの!」


「ザラ様最近グダグダ面倒だなと思いまして」


「なんでそんなに容赦ないのかしら! あなたは!!」


 王太子に向かってすごい言葉使いだとアンを思わず見たメリル。

 それに気付いたアンはメリルに視線を向けてからまたザラノアールを見た。


「…………ザラ様の乳母は私の母なので。なので、ザラ様の幼き頃から知っているんですよ」


「幼なじみみたいなものよ。無駄に強く育って。嫁の貰い手がいなくなるわよね」


「余計なお世話です。シバキ倒しますよ」


 アンは今メイドとしてメリルのそばに居るのだが、彼女はれっきとした騎士なのだ。

 強さに憧れ鍛え抜かれた体を持つストイックな女性騎士。

 常にメリルのそばに置いて守らせる意味合いでアンを側仕えにした。

 逃げられないように、とは絶対言わない。


「勿論アンも同席させるから心配はいらないわよ?」


「はい。メリル様がご一緒に行かれるなら、この狼から貞操をしっかりと守るのでご安心を」


「アアァァァァアン!! 貴方はもう黙りなさい!!」


 なんて事を言うのかしら!! と怒ると、アンが鼻で笑っていた。

 ザラノアールにだけ見せるアンの笑顔は特別だと思っていたメリルは、あら? と首を傾げる。

 思っていた以上に2人は仲良しさんだわ……と思った。


 ザラノアールはメリルの良いという返事が貰えるまで手を握り続け部屋から出ようとしなかった。

 何度かお断りを告ようとする度に、別の話で遮られるのだ。

 そして、アンの言い出したらしつこいですよ、という死刑宣告に諦めたのはメリルの方だった。


「わかったわ、行くわ」


「本当? 良かった!」


 ギュッと抱き締めてきたザラノアール。

 余程嬉しかったのだろう、突然の抱擁に驚き体を硬直させたメリルは、ザラの耳元で、え……あ……と小さく言葉を発っした。

 体を離したザラノアールは、腕を回したままアンを見た。

 

「アン! メリルちゃんの荷造りを手伝ってあげてちょうだいね」


「言われなくてもやります」


「うふふ、楽しみねぇ」


「…………そう、ですね」


 まるっきり普段と変わらないザラノアールの笑顔にメリルは困惑した。

 自然と抱きしめられ、今も長くしっかりした腕が背中に回っている。

 フワフワしてあまり動じない図太い神経を持っているメリルでも、流石に男性に抱き締められたら動揺するのだ。

 困惑気味にザラノアールを見上げたが、にこやかに笑う眼差しが更に細まり笑みを深めただけだった。

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