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王弟殿下のストーカー日記  作者: くみたろう
オネェに監禁された幸せの100日間
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監禁17日目


 バタン! と音を響かせて開いた扉にメリルは驚き体をびくりと震わせた。

 思わずザラノアールの腕を掴むと、安心させるようにその手を握りしめる。

 ザラノアールの体の横からチラリと見たメリルは、脂ぎった小太りの男をどこかで見たことがある……と眉をひそめた。


「これはこれは……ザラノアール王子殿下では御座いませんか」


「……ここは王族の居住区なんだけれど? だれの許可を得て来てるのかしら」


 2人の会話にメリルは驚く。今、ザラノアール王子殿下と言った……? と口を手のひらで抑えて目を見開いた。

 後ろから見てもザラノアールの顔を覗き見ることは出来なかったが、握りしめるザラノアールの手に力が入った。

 思わずその大きな手を見る。

 女性の手にしては大きな手で剣だこもある骨ばった手をしている。

 男性の手。そう言われたら、そうとしか思えない手だ。

 ギュッと握りしめる、絶対離さないという意思が感じられ、メリルは困惑しながら佇んだ。


「まさかザラノアール王子殿下が彼女を匿っておいでで? そのようなことをしたらキャロライン様が嘆きますよ? それに、あなたのお祖母様はそのような事を望んではいないじゃないですか」


「これは、我々王家の失態だし彼女は巻き込まれただけよ。彼女は何に変えても守らなくてはいけないの。貴方は……それを1番分かっているでしょう?……あと、キャロラインが嘆くとか、ありえないわ」


「おや、これは手厳しい。私はしがない子爵ですからね。王族の皆様の難しい話など露知らず……」


「…………自分は悪くないって言いたいわけね」


 自分が主犯だろうと言ったが、全てはテイゲティーナからの指示で自分は何も知らないと言い切ったエンイール子爵に顔を歪ませるザラノアール。

 何の話かいまいち分かっていないメリルは静かにザラノアールの後ろに佇んでいる。

 今、口を挟む所じゃないくらいはわかる。


「さあ、貴方は王子らしくなさった方がいい。時期にキャロライン様をお迎えするお立場。他の女にうつつをぬがしている場合ではないでしょう。さ、そのご令嬢を私に渡してください」


「渡したらどうするつもりかしら。今度こそ……殺す?」


 予想もしなかった言葉にメリルはもう片方の手もザラノアールの背中の服を掴んだ。

 目を見開きふらりと体が揺れると、体の向きを変えたザラノアールがしっかりと肩を抱いてくれる。

 密着するザラノアールの体は確かに男性のもので、見上げるといつも喉元を隠す服が妙に出っ張っている。


「………………ザラ……さま? 」


「……待ってちょうだいねメリルちゃん。貴方には私からちゃんと話すから」


 視線はエンイール子爵に向かったまま優しく言ったザラノアールを見て小さく頷いた。

 服の上からでもわかる喉仏に、ああ、本当に男性なんだと理解する。

 いや、様々なところで男を感じてきたのにメリルが意識しなかっただけなのだ。


 キュッ……と握る手に力がこもるのをザラノアールも分かっていた。

 王子殿下と言われて混乱もある。

 身支度や周りの世話を目覚めた時からしてくれていたのがザラノアールだ。

 まさか、王子自ら世話をしていたなど思いもよらない。

 さらに、今どうやら自分は命を狙われているらしいと、よく分かってない状況下でそれだけは理解した。

 

 何故? 私何かした?


 勿論メリルには検討もつかない。メリル自身が何かをした訳ではないのだから。


「見つけた! エンイール子爵!! 」


 後ろから走り込んで来たのは髪を乱したセルジュ王弟殿下。

 それを見て、メリルは目を見開く。

 クラスメイトのネネリーナ・カエサエル侯爵令嬢の傍によく現れる美しい王弟殿下。

 その姿はもう見慣れたもので、可愛らしい笑みを浮かべてネネリーナを眺める姿をよく見ていた。

 だが、今は眉を寄せ目を眇めて厳しい顔付きをしている。


「……これはこれは王弟殿下ではないですか」


 チラリとセルジュを見たエンイール子爵はその後ろにいる騎士も確認する。

 10人以上居る騎士に舌打ちしながらザラノアールもセルジュも見える場所に移動する。


「如何しました、物々しいですな」

 

「随分とふざけた事を言うじゃない。君に捕縛命令が下ったよ、まあ、わかってると思うけど。もう君が雇ったゴロツキも自供したし、娘のレイナー嬢からも話は聞いている」


「…………レイナー? レイナーがここに?」


 流石に娘の名前が出て動揺した様子を見せる。

 王太后の指示で今回のメリル誘拐を決行したのは娘のレイナーが開いたお茶会からだ。

 考えればわかる事なのに、後がないと思っているエンイール子爵はすっかりと頭から抜けていた。 もはや自分が助かる道しか考えていなかったのだった。


 ぐっ……と下唇を噛みしめて歪んが笑みを浮かべる。


「私はあなた達に囲まれるような事は何一つしておりませんよ。ただ、我が国に将来立つ王、そうザラノアール様。あなたの為を思い動く王太后様の涙ぐましい思いやりに少しだけお力をお貸ししただけ。貴方にとって不必要なものを消し去ろうとしただけ!!」


 声を張り上げて言う姿を全員が見ている。

 ここは王室の居住区だ。

 勿論ロイヤルファミリーが生活する場、これだけ騒がしいと家族が集まってくる。


「あ!! メリル・ラクシーン?! なんでここに……お兄様?! まさかお兄様が隠していたの?! 」

 

 現れたマリアンヌがザラノアールに守られるメリルを見て金切り声をあげる。

 そのすぐ近くには王太后テイゲティーナの姿もあり、顔を歪ませていた。


「…………何をしている……エンイール子爵、ここは我々の居住区で立ち入り禁止なのだが?」 

 

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