監禁4日目
「…………ん……」
メリルが目を覚ました。
体を起こすと初めてこの部屋で起きた時のように体が重く汗をかいている。
はぁ……と息を吐き周りを見渡す薄暗くなった部屋には誰も居なかった。
「…………いない」
あの美人の女性が居ない。
メリルは悲しそうに俯き呟くと、控えめなノック音がした。
パッと顔を上げて扉を見ると静かに開けて入ってくるのは、あの美人の女性だった。
「目が覚めたのね、よかった」
お盆を持っている女性はサイドテーブルにそれを起きベッドの端に腰掛ける。
そしてメリルの頬を両手で触れた。
「体調はどう?どこか辛いところはあるかしら」
「体が、凄く重いの」
「体力がね、無くなってるのよ。具合悪いとかはないかしら」
「大丈夫……」
「そう、よかったわ……ご飯の前に着替えをしたほうが良さそうね」
女性が立ち上がりクローゼットを開ける。
そして水色のネグリジェと下着を持ちメリルの元に戻ってきた。
「暖かいタオルを持ってくるわ。待っていて」
メリルの返事も聞かずに出ていった女性をメリルは目で追っていた。
「…………これも可愛い」
少しだけ持ち上げたネグリジェは小さなリボンが付いた可愛らしいものだが眠りを妨げないデザインをしている。
薄手の生地が肌をうっすらと透けさせるが、それも袖やスカートの裾だけで心配は無さそうだ。
「お待たせ」
3枚温められたタオルを持ってきた女性は1枚をメリルに渡し、女性は背中側に斜めに座る。
「見ないから安心して。ちょっと手を入れるわね」
「え?」
「大丈夫、背中は拭けないでしょ?」
「……ありがとう」
「いいのよ、困ったことがあったら遠慮なく言ってちょうだい」
スカートをたくし上げられ下から手を入れた女性は背中を拭いてくれる。
驚いて体をひねるが、女性が拭く強さがまた気持ち良く目を細めてしまう。
汗をかきべったりと張り付く服が気持ち悪かったから。
しかし、自分の付き過ぎているお肉を触られると思うと同じ女とはいえ恐縮してしまう。
「…………ここは、どこ?」
「………………………………そうね、貴方も知っている場所よ」
「え?知ってるの?」
「ごめんなさいね、詳しくは言えないの」
柔らかなテノールが申し訳なさそうに答える。
「…………貴方は誰?」
「私はザラよ」
「ザラ、さん……お家に帰して欲しいの」
「それはダメ」
「え?なぜかしら?」
「ダメなものはダメなの」
「……こまるわ」
振り返りフワフワと本当に困っているのか?と質問したくなるような言い方のメリルにザラは思わず笑ってしまった。
「あなた、可愛らしいわね」
「え?」
「ふわふわしていて私好きよ」
「……お肉ですか?」
「ふっ……ふふ……やだ、違うわよ……あなたのこのふっくらとした体も、可愛らしいけどね?」
自分の腕をむにゅっと掴んだメリルに思わず笑うザラは口を抑える。
「私はあなたのような細さが羨ましいわ」
「あらそう?ありがとう。でもね、ギュッと抱きしめるのは少しふっくらしている方が良いと思うわよ?」
はぁ、苦しい……と口から手を離した凄まじい美女はメリルの体型を馬鹿にしなかった。
昔からぽっちゃりなメリルを誰もが口にはしないが笑いものにしている事を知っていた。
「少しと言うような優しいお肉じゃないの」
「っ…………もぅ…………笑わせないで……」
腰を少し折ってまた笑い出したザラをメリルは黙って見ていた。
メリルを見る視線は必ず体型に行く。
ぷくぷくと膨らんでいる体にボリュームのあるドレスは更に幅を大きく見せるし、かといって体の線が出るようなスマートなドレスも着れない。
結局流行りから外れたドレスで体を隠していたメリルにとって、目の前の美女は理想を形にしていた。
「…………そうだ、ザラさん腕や腰は大丈夫?」
「え?」
「私を運んでくれたのザラさんよね?よく私を持ち上げられたねぇ?」
「あぁ、大丈夫よ、私鍛えているの。筋肉が付いているから腕の出るドレスが恥ずかしくて着れないくらいよ」
「…………羨ましい」
「筋肉が?」
「私、筋力トレーニングも出来ないの。お腹がつかえて呼吸困難になってしまうから」
「ふふ…………うふふ…………もぅ……ふ……苦しい」
また笑いの波が来たらしいザラ。笑い上戸なのだろうか。
涙が出るくらいに笑うザラが思いの外話しやすかった。
閉じ込められて全然説明もされないのに、メリルは呑気にザラと話をしている。
「さぁ、背中は終わったわ。前を拭いて足とかもね。そして着替えてしまいましょう……それとも手伝って欲しいかしら?」
「お肉を直視されるのは忍びないから自分でやるわ」
「もぅ…………ふふふ」
また笑うザラは1度出るわね、と使ったタオルを持って部屋を出ていった。
その間にメリルは服を脱ぎ体を拭いていく。
このお肉め……とムニュリと押しながら重なった間も丁寧に拭き水色のネグリジェを着る。
薄い色合いの服はあまり着ないのだが、これはとても可愛らしい。
脱いだ服などを畳んで置くと、いいタイミングでザラが戻ってきた。
手にはピッチャーがあり果実水が入っている。
「汗をかいたから先にお水を飲んでくれるかしら、脱水になったらいけないから」
「はい…………お肉だけ干からびたらいいのに」
「ッ………………ふぅ……お肉が干からびたらもったいないわよ?」
「いいえ、体積が減って万々歳です」
「ふふふ…………貴方は本当に可愛らしいわね」
コクコクと飲む水には桃の甘い味がした。




