監禁 3日目
「ここからずっと食事が運ばれるのね」
昨日夕飯を食べずに眠ってしまったメリルは空腹を訴える腹部を擦りながら現れた朝食を見た。
また1人分の土鍋があり、テーブルに運ぶといい香りが刺激してお腹が切ない音を鳴らした。
「……いただきます」
ホカホカに湯気を出す土鍋の隣にはご丁寧にミトンがあり、それを使って蓋を取った。
「……あら、これは」
クタクタに煮てある小さく切ったパンが入っていた。
甘いミルクの香りが部屋にふわりと広がる。
「……パン粥?」
あまり食べないわ……と呟いてスプーンをとると、空腹を訴えるお腹が催促している。
「!まぁ……とても美味しいのね」
頬に手を当てて呟いたメリルは、あっという間に食べ尽くしてしまった。
とても満足のいく味にご満悦だが、贅沢を言うならもう半分程おかわりがしたいなと思っていた。
この後食器を下げたメリルはやはりすることがなく1日ボーッと過ごすことになる。
そんな生活が3日続いた時だった。
いい加減に誰か来てくれないか、状況を教えて欲しい……家に返して。
そう食事がくる扉が開いた時に伝えたのだが答えはない。
それに息を吐き食事のトレイを持った時だった。
ふらついたメリルが派手に食器を床に落とし自分自身も膝を着く。
「…………そういえば、朝から体調が悪いのよね……あぁ、ご飯が勿体ないわ」
四つん這いになり落とした食事を見つめる。
お粥からやっと普通の白米になっておかずもボリュームが出てきた頃で。
今がお昼だからメニューもちょっと豪華で、楽しみにしていたのにと、ボーッとする頭で考えていた。
「…………あ、立たなくてはいけないわ……」
「いいわよ立たなくて」
「…………あら?」
肩に誰かの手が触れる。
優しいテノールの声が聞こえて顔を横に向けると、メリルよりも細い女性がそこにいた。
薄い金髪を2つに三つ編みにして、青いメイド服に白いフリルのエプロン。
ホワイトブリムも白と青の華やかなもので、髪を飾り全体的に綺麗で清潔感溢れる格好をしていた。
「…………いつの間に?」
「今よ。食器が落ちた音がしたから見に来たの」
「……ごめんなさい、割ってしまったわ」
「いいのよ、それより怪我はない?」
落ちた食器を片付けてお盆に置き、食べ物も全て片付けた女性はメリルの顔を覗き見た。
ボーッとその顔を見返すと、困ったような顔をする。
「…………あなた、お薬はちゃんと飲んでる?」
「お薬…………?」
「その様子じゃ、飲んでないわね」
「……飲んでないわ」
「ダメよ、ちゃんと飲まないと」
もう1人誰かがいたようで、落とした食器を持ち一礼してから部屋を出ていった。
残った女性は中腰になった後メリルを軽く抱き上げる。
頭が働かないメリルはだるい体を起こすことが出来ず女性の胸に頭をコテンと預けてしまう。
「…………なんの薬かわからないから……怖くて飲めないわ……」
「…………そっか。でもね、飲まないと元気になれないのよ?」
ゆっくりと体に響かないように気を付けて歩いてくれる女性にメリルはスリッと頭を寄せた。
その動きに一瞬止まったが、またゆっくりと歩き出す。
「…………私、どこか悪いの?前、安静にって言われたわ」
「そうねぇ、今は体が頑張って戦っているから貴方はその応援をしなきゃなのよ」
「…………応援」
「そうよ…………下ろすわね」
ゆっくりベッドに下ろされたメリルは、優しい手つきで靴を脱がして貰い布団をかけられる。
すると、あの三日前に来た男性がまた部屋にやってきた。
「いかがですか?」
「薬を飲んでいなかったわ。だから体調を崩したのね」
「…………あぁ、確かに。減っていませんな。今は溜まった毒素を抜く事が先決ですね」
カラカラと音を立てて持ってきた物を見ると、それは点滴で2種類の薬がぶら下がっている。
何の薬かまでは分からない。
「メリル様、これから点滴をしますからね。なぁに、体に足りない栄養を入れるのとちょっと溜まってしまった…………まぁ、体にいいお薬じゃい。心配しなさんな」
優しく笑った男性は、左腕に点滴の針を入れた。
テキパキと処置をして熱も測ると37.9と少し高い。
「……ふむ、メリル様、点滴が終わって2時間程したら体調も良くなってくるでしょう。夕食後はちゃんとお薬を飲みましょうね」
「………………はい」
言われるままに頷いたメリルの頭を優しい手が撫でた。
そちらに顔を向けると、ホッとしたような美女の微笑みがありメリルは頬を染める。
「……きれい」
「ん?…………ほら、少し眠りなさい」
「……いやよ、寝たらまた1人になるもの」
「大丈夫、私がいるわ」
「本当?」
「ええ、大丈夫よ。ほら、手を握ってあげる」
「…………うん」
レースの手袋で覆われた女性の両手がメリルの右手を握る。
それに安心したメリルはやっと目を閉じた。
「……………………眠ったわね。どう?」
「薬を飲んでいなかった事で解毒効果が薄れて、また体に毒が巡っておりますね。そのせいで体力も大幅に落ちておられます。抵抗力が下がり現在熱発もしてますから、また体調は崩しやすくなるでしょうが前ほど寝込むことは無いでしょう」
「……そう」
「なんにしても、様子観察が必要かと」
「…………失敗したわね、やっぱり1人にして置かない方が良かったかしら。……私が着いてあげれたら良かったのだけど……今はどうしてもメリルに人を近付かせたくないから」
「…………仕方ありません」
「目が覚めて誰も居ないだなんて不安よね、ごめんなさいね……」
悲しそうな顔でメリルの頬を撫でた女性は静かに部屋を退室した。




