ストーカー日記 14日
〇月✕日
今日は先触れを出したデート当日。
どうしよう、楽しみすぎて気分が上がる!
今日のネネ様はどんな服装だろう!
可愛いネネ様を見たいから、今日の服装は聞いてないんだよね!!
あぁ、楽しみだなあ!!
今日はカフェでお茶して観劇を見るよ!
いきなりディナーまでギッチギチに予定を入れたらネネ様も大変だろうしね、初めは軽くで。
ネネ様の家に帰ってからも少しお話出来たらいいなぁ。
「セルジュ」
「ん?……あれここにいていいの? あの子は? 」
「うん、まだ目を覚ましてないわ」
「そっか……ザラはずっとあの子についてるんだよね? 」
「ええ、目を覚ました時に不安にならないように少し一緒にいるつもりだけど……」
「大丈夫だといいけど……早く解決して家に返してあげないとね」
「ええ……まったく我が妹ながら面倒な事をしたわ」
ため息を吐くザラノアールは、邪魔してごめんなさいね、と謝罪をしてから部屋を出ていった。
それを見送ったセルジュは、少し考えてからネクタイを結びジレを持って部屋を出る。
歩きながらジレを着て、すぐに馬車に向かうセルジュは1度立ち止まり王城の一室を見てから馬車に乗り込んだ。
「いらっしゃいませ、セルジュ様」
「おはようネネ様…………すごく綺麗だね、似合ってるよ」
「…………あ、りがとう……ございます」
赤らめた顔でお礼を言うネネリーナの可愛さにセルジュはギュッ……と手を握った。
そうしないと、手を伸ばして抱き締めてしまいそうだったからだ。
今日のネネリーナは、真っ白なふんわり軽いワンピースドレスの上から若草色のドレスを重ねている。
若草色のドレスには鮮やかな刺繍がされていて、艶やかなサマードレスとなっていた。
パニエがスカートをふわりとボリュームを出しているが、生地がかるいので風が吹くと捲れてしまいそうだ。
ちょっとセルジュがいらない心配をしたが、上から着ている若草色のドレスがスカートを保護してくれるだろう。
白と若草色のコントラストが美しいドレス姿はネネリーナによく似合っていた。
「ネネ様……手をどうぞ」
「はい……」
ネネリーナの手を優しく握り微笑むセルジュに俯きながらも返事をする。
そんな2人をメイド達は頭を下げて見送ったが、隠れた顔は、にこやかな笑みどころかニヤけた顔でこっそりグッ……と手を握りしめた。
「緊張してる」
「はい! い……いいえ?! 」
馬車に乗ってから、セルジュはネネリーナの向かい側に座り問いかけると、ネネリーナは軽く首を横に振りながら答えた。
明らかに緊張しているのがわかり、セルジュは小さく笑った。
「リラックスして、楽しもうよ」
「は……はぃ」
「ネネ様はチーズケーキが好きでしょ? この先に美味しいチーズケーキが売ってる店があるから食べようね」
「はいっ! ………………あの……チーズケーキが好きって私言いましたっけ……」
「…………ネネ様ここを真っ直ぐ行った先に紅茶専門店があってね? 」
「セルジュ様? 」
明らかに誤魔化したセルジュに首を傾げるが、笑顔で押し切られて紅茶専門店にも行こうと言われ頷く。
「前にネネ様が言っていたお気に入りのローズティも売ってるよ」
「…………ローズティが好きと言いました? 」
「………………うん! 」
「そう、でしたか? 」
首を傾げて、いつ言っただろうか……と考えるネネリーナのポンコツ具合もセルジュには可愛くて仕方がない。
この自分に対して抜けているネネリーナ。
頭脳明晰で侯爵令嬢としての立ち振る舞いは見事としか言えないのに、プライベートとなったらコミュ障を発揮してツンツンしてしまう可愛いポンコツ。
自分でもどうにかしたいと頑張っているのだが、セルジュとネネリーナを観察するように見ている同学年の生徒は、すでに今のネネリーナの方が好感を持っている事を本人であるネネリーナだけが知らない。
「さあ、紅茶を見てみよう? 」
おすすめのチーズケーキが売っているカフェに向かう前に紅茶専門店へと入った。
大きなケースに、たっぷりの茶葉が入っている。
その大きなケースがずらりと並び、丁寧な説明が書かれた紙が一緒についていてた。
「いらっしゃいませ。試飲も出来ますのでお気軽にお申し付けください」
貴族御用達の紅茶専門店で、高級茶葉ばかりが並んでいる。
ネネリーナはお気に入りのローズティを買うと決めていて、他に気になるのはあるかしら、と歩きながら説明の紙を見ていく。
最近はドキドキしすぎて呼吸が苦しいので、気持ちが落ち着くものや、安眠作用のあるものがいいな……と見ていく。
そして、ローズティ以外に2つ選び購入する事にした。
可愛らしい紙袋に入れてもらい、受け取ったネネリーナ。
支払いをしようとしたら、隣で颯爽とセルジュが済ませてくれる。
「あっ……セルジュ様……」
「いいから、受け取って」
高級茶葉なので決して安くは無いのだが、当たり前のように支払いするセルジュにネネリーナが恐縮する。
だが、ここで素直にありがとうございますと言うのが淑女らしいのだ。
ネネリーナは軽く頭を下げてしっかりとお礼を言うと、またセルジュの蕩けるような眼差しを向けられたのだった。




