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王弟殿下のストーカー日記  作者: くみたろう
王弟殿下のストーカー日記
10/81

ストーカー日記 10


 〇月✕日


 今日は初めてのネネ様のお茶会の日だよ。

 15日前から準備を始めたネネ様は、最初溢れるくらいの食事を指示していたんだ。

 可愛い、食事会をしたいのかな? お茶会だよね。

 もう、やる事なす事可愛くて可愛くてたまらないよ!

 飲み物どれくらい頼むの? もう20人分くらい用意しようとしてるよ、3人だよね?

 どうしよう、慌ててるネネ様可愛い。僕もお茶会したいな、ネネ様と2人で。

 美味しいケーキとか用意するのにな。



「…………ふふ、かわいい」


 お茶会を開催する場所はネネリーナの屋敷の花が咲き乱れる庭になった。

 そこに可愛いテーブルと椅子、綺麗なテーブルクロスを敷いていて、沢山の軽食やスイーツが並んでいる。

 明らかに多いが、足りなかったらどうしたら?! と本気で心配したネネリーナに負けたメイド達が可愛さに泣きそうになりながら準備をしたのだ。

 初めてのお茶会開催にドキドキとテーブルの周りを歩くネネリーナを、お屋敷の一室を借りたセルジュが窓から眺めていた。

 可愛すぎて死んじゃうっ! と胸を抑えながらも少しも目を離さないと瞬きすら鬱陶しそうにしながら。


「あー、可愛い…… 可愛すぎた……」


 今日も絶好調にストーカーだ。

 そんなセルジュを冷めた目で見るカイン。

 こちらもブレずに相変わらずのストーカー……と見ていた。

 たまに来る我慢できずに悶えながらカインを叩くセルジュに遠い目をしながら一緒にネネリーナを見守った。



「よ……よく来たわね!! 」


「お招きいただきありがとうございます」


「この日を楽しみにしていました。うれしいです!! 」


 フワフワと笑って、綺麗に手を揃えて頭を下げるメリルは、ふくよかな体をシンプルな紺色のワンピースで飾っていた。

 フリルが控えめについている、地味とも取れる訪問着のドレスである。体のボリュームがあまりわからないように努力をしているのだろう。

 大ぶりのレースもフリルもリボンも、どうしても体積を大きく見せてしまう。

 仕方無しにメリルのドレスはふわりと揺れるような飾りはない、シンプルでいて華やかな模様が入った物を好むようになった。今日も、シンプルだが美しい刺繍が入っていてスカートの裾を鮮やかに見せている。


 反対に、ミネルヴァは鮮やかな黄色のふわりと広がるスカートが可憐なドレスを着ていた。

 ミネルヴァはどちらかと言えば細身でボリュームのある服を好む。

 正反対な2人だが、何故か気が合うようだ。

 そんな2人が、時間ピッタリにネネリーナの屋敷に到着した。


「さあ、こちらにいらして。私がおもてなしするのだから、光栄に思いなさい! 」


 真っ赤な顔で言うネネリーナ。

 2人はウフフと笑ってネネリーナの後について行く。

 既に照れ隠しだとわかっている2人には、ただただ可愛らしいお嬢様にしか見えない。

 着いた先には美しく手入れされたガーデン、その場に準備し尽くしたお茶会会場が出来上がっていた。


「さあ! お座りなさい!! 」


 生き生きと椅子を示して言うネネリーナに、2人は顔を見合せて笑いながら椅子に座った。


「今日は遠方から取り寄せたダージリンよ……紅茶、好きかしら」


 自信満々に言ったが、直ぐにハッとして確認するネネリーナに、2人は笑顔で頷く。


「はい、好きです」


「ええ、私も」


 まずは紅茶の話で軽い挨拶を交わす3人。

 お茶会に慣れないネネリーナは、赤らめた顔のまま話をしていて、それに相槌を打つふたり。

 慣れない緊張からずっと話をしてしまっているのだが、2人は笑顔で頷き聞いてくれる。

 そこに忖度は無くて、微笑ましいとミネルヴァは見ていた。

 メリルは穏やかに、ポヤポヤと見つめている。


 話に夢中だったネネリーナは、ハッととして話を辞めて口に手を当てる。

 眉を下げて2人を見るが、不満気な様子はなくホッとしつつも視線を下げた。


「あの……私ばかりが喋ってしまって申し訳なかったわ……その……お茶会にはしゃいでしまって……」


 ゴンッ!


 急なデレの供給にミネルヴァはテーブルに頭を打ち付けた。

 時同じくして、セルジュも盛大に壁に頭を打ち付けていた。


「えっ……なにあれ可愛い……部屋に閉じ込めたい……」


「それ、監禁ですからね」


 セルジュのお目付け役として同行しているカインの眼差しが既にどうしようも無い人を見る眼差しになっているが、ネネ様可愛すぎっ! と悶えているセルジュは気付いていない。



 

「ネネリーナ様……」


「な! ……何かしら! 」 


「お可愛らしいぃぃぃ」


「…………え? え………………えぇ?! な、ななななにを言っていますの?! 」


 ミネルヴァがテーブルに顔をくっつけたまま唸るように言うと、すぐに理解できなかったネネリーナがじっくりと言葉を飲み込んでから顔を真っ赤にさせた。


「私もネネ様可愛らしいと思いますよー。あ、ネネ様って呼んでもいいですかぁ? 」


「か、かまわなくてよ!! 」


 フワフワと笑って言ったメリル。

 ネネリーナよりも家格は低いのだが、片意地はらずに穏やかに話をする姿はむしろ貫禄すらある。

 失礼とも取れる話し方だが、ネネリーナはいっぱいいっぱいでそれどころではない。

 返事をしたあと、また言われた内容を理解して首まで真っ赤になった。


「おおお落ち着くのよネネリーナ! たかが名前を呼ばれるだけ……ああぁぁぁぁ……」


 動揺して紅茶を零す失態を犯すネネリーナのポンコツ具合に、ミネルヴァは可愛らしいと頬を染めてメリルは目を丸くして立ち上がりネネリーナの隣に行く。


「ネネ様大丈夫ですか? ドレスは濡れていません? 」


「はぇ?! ああぁ、だ、大丈夫ですわ!! 」


「いえ! びしょびしょですよ?! 」


 スカートに盛大に零した紅茶にミネルヴァが驚き着替えを促さすと、よろよろしながら立ち上がったネネリーナ。


「ちょっと……失礼しますわ。少しお待ちになっていて……」


 真っ赤な顔のまま、足早に離れるネネリーナの代わりに2人のメイドが近ずいて来る。


「申し訳ありません、少し拭かせて頂きます」


 ネネリーナが零した紅茶を片付けテーブルの上を綺麗にきていく2人のメイドは、ネネリーナに対して機嫌を損なっていないかチラリと確認をした。


「ふ……うふふ……ネネリーナ様は本当に可愛らしい!! 」


「そうねぇ、お顔が真っ赤になっていたわ。恥ずかしがり屋さんなのねぇ……あら、紅茶新しくしてくれたの? ありがとう」

 

 メリルは、用意されているクッキーをサクッと食べていると、差し出された新しい紅茶に頭を下げた。

 静かに頭を下げたメイドは、機嫌を損ねるどころかクネクネしながら喜んでいるミネルヴァと、穏やかに笑っているメリルにホッとして、掃除が終わった後にテーブルから離れたのだった。


 

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