少し昔のお話
ソレが人を食べ始めて少ししたこと.
ある時,人間の中でいちばんの年寄りが,神様に助けてほしいとお願いしました.
大切な人を食べられた人は泣きながら,ソレを殺してくれと頼みます.
そんなことを言われて神様少し困ってしまいました.
なぜならソレは神様と全く同じ力を持っているので,神様がソレを殺すことは不可能だったからです.
でも神様は,大好きな人間たちを幸せにしてあげたいと思いました.
なので神様はたくさん考えます.
ソレを作った時と同じくらい,お月様が空を昇り,お日様が空を昇り,それを幾度となく繰り返さほど長い長い間考えました.
助けを求めてきた人間が死んで,その孫が年寄りになって死んで,またその孫の孫の孫の,そのまた孫が死ぬという,人間にとっては気の遠くなるような長い時.
神様にとっては,瞬きほどの時が流れました.
それほどの長い時が経って,ようやく神様はいいアイディアを思いつきました.
この頃に,ソレはもう人間を食べることはやめました.
「そうだ!!」
「人間言うことをよく聞く,僕よりも強い新しい『生きモノ』を作ればいいんだ!!」
神様はそう思いつき,新しい『モノ』を作ることにしました.
人間たちよりも大きくしてしまうと,人間たちが怖がってしまうので,少し小さめに.
人間たちとそっくりにしてしまうと,人間たちが困ってしまうので,色を反対の白色に.
神様よりも強い力をつけて.
そして,人間たちより弱い部分も作ります.
そんな『モノ』を神様はたくさん作って人間にあげました.
人間たちは,また,喜んで神様にお礼を言います.
神様は満足して,長い眠りにつくことにしました.
人間たちは,神様にもらった,白い『生きモノ』たちを村に連れ帰りました.
そして,その白い『モノ』たちにソレを倒しに行くように命令しました.
でも,その白い『モノ』たちは,ソレを倒しには行きません.
なぜなら『モノ』たちには,ソレを倒す理由はないからです.
『モノ』たちが,言うことを聞かないことに怒った人間たちは,人間の作った神様ですらしらない,『じゅう』でたくさんの『モノ』を殺してしまいました.
神様が長い間かけてたくさん作った『モノ』は,ほんの少しの間で,たった一つになってしまったのです.
たった一つ残ってしまった『モノ』を村人たちは,
『13459』と呼び,村に閉じ込めました.
そして,村人たちはソレを倒すために『13459』にたくさんのことを教えました.
ソレの特徴.
ソレの住んでいるであろう場所
銃の使い方
『13459』はソレを殺すためにたくさんのことを学びました.
ソレを殺すためのことだけを学びました.
もう『13459』には,ソレを殺すことしか生きる理由は無くなってしまったからです.
『13459』はソレのこと以外何も知りません.
『13459』は学ぶことが終わったら,村の地下の部屋に閉じ込められます.
『13459』は,暗いその部屋で,たった一つで涙を流します.
でも,もう,同じ生き物は,この世界中に,たった一つしかいません.
『13459』と同じ生き物たちは,人間たちによって殺されてしまいました.
誰も助けてくれません.
これによって,この世界で,黒以外の色を持つ生き物が『ソレ』と『13459』の,たった二つしかいなくなったのです.
『モノ』たちは,名前はつけられず,番号で呼ばれていました.
約2万ほどの数がいましたが,人間が殺しました.
13459が殺されなかったのに,理由は何もありません.
たまたまです.
13459は運がとても良かったようです.
13459は16年ほど,この村で生活しました.
それまで,楽しかった思い出はほとんどありません.
ソレとほとんどの人間のことを敵だと思っています.
でも,13459は村でたった1人だけ,自分に優しくしてくれた人間を知っています.
その人は,とても高齢でした.
その人は,アカネという名前でした.
その人だけは,13459のことを番号ではなく,『シロ』という特別な呼び方と,素敵な赤い頭巾をくれました.
なので,13459は自分のことをシロだと認識しています.
13459は作られてから,一度も自分の顔を見たことがありませんが,人間が,髪の毛が自分と同じで白いからシロと教えてくれました.
赤い頭巾を被った,シロを見て,人間は,アカネはとても綺麗だと言ってくれました.
アカネは,赤い頭巾を渡した次の日に殺されています.
そのことを知った13459いえ,シロは,髪の毛をとても短く切りました.
もうシロと呼んでくれる人はいなくなったからです.
髪の毛が白いからシロ.
大事な人がいなくなってしまったシロは,村から出ていく計画を立てています.
暗い暗い部屋でもシロはへっちゃらです.
もう慣れっこです.
ほんとは寂しい.