始まり
「要、またカラオケかい?」
玄関先で靴を履いていると、姉貴の気だるげな声に呼び止められた。
「…べつに。どこだって良いだろ.」
姉貴の方を見ずに答えた俺の返事に、姉貴はふうん、とどうでもよさそうに鼻を鳴らす。
「…まァ、いいけどネ。車に引かれないよーに気ィつけなヨ?」
「…子供じゃねえし、姉貴は何心配してんの?」
「さァネ?」
「てか姉貴、昨日呑んだろ酒臭い。」
「うるさイ、黙れ、喋るナ。頭痛ぇンだヨ、こッちは。」
自業自得だろ。ため息を吐く.
二日酔いの姉貴が覚束ない足取りで再び寝室に戻るのを尻目に、玄関の扉に手をかける。
「…要?」
振り返ると、姉貴がニッと唇の端を吊り上げていた。
「行ッてらッしャい。」
「…ん、行ってくる。」
今度こそ扉を閉め、歩き出した。
爽やかな風がパーカーの裾を揺らした。路面に散る陽光の鮮やかさに目を細める。
…それにしても。
「…あのメッセージ送ったのに、何でなんの返答もねぇんだよ。」
…忘れられてるか、もしくは。
「……あぁもう考えねぇでおこ。」
頭を振って、思考を振り払う。
そうしているうちに、目的の場所につく。
カラオケ店。パス持ってるくらいの常連だが、友達を連れてきたことはない。別に遊びに行く友達がいないというわけではない。断じて、ない。
「お?はいはいまた君ね。いつものとこでい?」
「あ、ハイ。」
「んじゃどぞ。」
学生証確認するまでもなく、もはや顔パスである。
てか確認しないとはいれませんって書いてるよな?
店員さん、そんなんでいいのか?
まあ俺としても楽で良いんだけどな。
テキパキと準備を終えて、一曲目を選ぶ。
すぅっ、と息を吸う。
吐く。曲が始まる。
「ー〜ーー!!」
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きります。
すっごいどうでも良いんですけど、姉貴さんの喋り方が好きですw