第七話 龍との契約
龍のことは気になることが多いが今は関わるべきではないと判断した私は縛られながらもいつもどおりの生活を送っていた。
あれ以来、夢を見ることはなくなったし、この前感じた気配を感じることもなくなったし、結局偶然見た夢に少し考えすぎてしまったなと結論づけていたがそれでも気になりはしたので私はこっそりと行くなと言われていた蔵に入って昔の書物を漁っていた。
そこは長年人が入っていなかったのかそこかしこにホコリが積もっていた。
少し歩けばホコリが舞い、咳き込みそうになっていた。
ラフな服装とマスクを持ってきていて良かったと思いながら蔵の中を探していった。
蔵の中は電気が通っていないため懐中電灯がなければ歩くのすら難しかった。
そうして一時間ほど探していると蔵の右奥のほうからなにやら「ゴトっ」という音がした。
それを見に行ってみるとそこには崩れた木箱が落ちていた。
落ちている様子を見るに劣化で今偶然木箱が壊れたようだった。
それを拾い上げ、開いてみると最初のページに一枚の絵が書かれていた。
そこにはこの前私がみた龍と同じ姿をした龍が描かれていた。
そしてその横にこう書かれていた。
「これを子孫が見つけ読んでくれていることを願っている」
と、書かれていた。
私はとりあえずこれを読んでみることにして蔵を出た。
彼女が去った後の蔵には暗く静かな静寂が流れていた。
そこ暗い中にはいくつかの光がうっすらと浮かんでいた。
そしてその光たちはどこか安心した様子で崩れるように消えていった。一つの一際強い光を残して。
蔵で見つけてきた一冊の書物を私は部屋に帰りゆっくりと読んでいた。
そこに書かれていることに私は驚きを隠せなかった。
そこには昔、この一族はこの地域に住まう土着神によって繁栄をもたらされていた。
そしてその対価として一族は人々から信仰心を集めていた。
しかしある時、一体の龍が下りてきた。
龍は土着神を滅ぼし、この地域の信仰心を自分のものしようとした。
しかし、一族の者たちはそれに反対し、龍に信仰心が集まらないようにしようとした。
それに怒った龍が一族を滅ぼそうとした。
それをある一族の者が龍と交渉をした。
それは力をもった子供が生まれた時、その者が十八になった年の中秋の名月の夜、生贄に捧げること。
これを了承した龍はまた一族に繁栄をもたらした。
しかし、これにより一族は分裂した。
一方は龍との契約に反対し
「こんな邪龍に頼るくらいなら滅んだほうがましだ」
と、言い
一方は龍との契約に賛成し
「たった一人の子供を生贄にして一族の繁栄がもたらされるのだぞ。今までよりはるかに楽じゃないか」
と、言った。
そしてそれは一族による戦争となった。
初めのうちは反対派に昔から土着神を信仰していた人々が加勢して押していた。
しかし時が経つにつれ、龍が力を貸し賛成派が押し返していった。
そうして一年と経たずに戦争は終わり、龍との契約で一族の繁栄は保たれ続けた。
そうこの書物には書かれていた。
しかしその最後には
龍との契約によって一族の繁栄は保たれた。
しかしそれは子供を生贄にしてまでするべきことなのだろうか。
私達はそうは思わない。
だからいつかこの一族の者以外からこの龍との契約を壊してくれる者が現れることを待ち望んで希望の芽を私の子孫に残し続ける。
その者たちは常に本家の使用人としてそばにいる。
その者たちはこの一族には似つかわしくない朱い目をしている。
最後にそう書かれてこの書物は終わっていた。
そしてこれを読んだ私はこのことをその朱い目をした使用人を探して伝えようと思い立ったがすぐに行動を起こすのはどうなのだろうと思い、もう少し情報を集めてから知らせることにした。
彼女がこの時、行動を起こさなかったこと。これは幸運だった。
なぜならすでにこの一族の中には味方となる者たちは消させていたからだ。
もし知らせていたら彼と出会うことはなかっただろう。
そして彼に出会うことが出来たことこそが彼女にとっての最大の幸運であった。