第六話 運命との出会い
いつからだっただろうか。
私が部屋の奥で大事に大事に囲まれて暮らすようになったのは。
小学校に入った頃はまだあまり厳格な縛りはなく、遊びに行ったりが出来ていた。
それが少しずつ変わり始めたのは中学に入った頃だったかな。
私が外へ出るのは学校に行く時だけだ。
その時も車に乗ってでしか行けない。自分の足で歩いて行くことはなくなった。
そんな日々に疑問といら立ちをためていた。
なんで皆が自由に部活をしたり、遊びに行ったりしているのに自分は家の中で囲まれて過ごしている。誘われても出来ないからと、断るしかなかった。
自分に少しずつなにか変化してきていることに気づいていたがそれに気づいてしまえば自分が自分ではなくなってしまう。
そして自分で変化が抑えきれなくなったのは中学二年生のときだった。
初めに出てきたのは夢の中だった。
私は白いなにもないどこまでも続きそうな空間に一人立っていた。
周りを見渡してなにかないかと動こうとした時、その声は聞こえてきた。
「貴様がこの時代の巫女か。これは随分と力を持った者だな。だがこの力、昔にも何度か感じた力の波動だな。これはなにか乱れが起きるかもしれんな。やつには気をつけさせるか」
そこには大きな白い龍がいた。
口元の長い二本のひげに全身にある鱗と輝く毛。
その姿に私は見覚えがあった。
この家に語り継がれる伝承の絵の中に出てきた龍神そのものだった。
龍が喋ることにも驚きだがそれよりも龍が言っていた事にいくつか聞きたいことがあり聞こうとしたがなぜだか私は口を開いても喋ることが出来ない。
そうしているうちに龍はどこかへと去って行ってしまった。
そして私もそこで意識を失い、気がつけば自分の寝室で目を覚ました。
なにか夢を見ていた気がする。
それがどんな内容だったかは思い出せないが、あまり良いものではないといこうとと龍が関連していることだけは頭に浮かんでいた。
思い出せないことは仕方ないと部屋を出て移動しているとそれは中央の神事を執り行う場所にいた。
私がそこの前を通りかかった時、なにかいつもは感じない気配を感じた。
別に私は霊感とかそういった類の力は持ってないので不思議に感じた。
その気配につられて私はその場所に向かっていった。
その建物の扉の前まで来ていた私はそこで立ち止まっていた。
心のなかに好奇心こそあるがそれを上回るほどの嫌な予感と恐怖があった。
龍にまつわるなにかを夢で見たこと、この家に伝わる龍の話、などから私はなにかに誘導されているのではと思ってしまっていた。
私は考え、結局扉の先を見ずに支度をしに部屋へと向かっていった。
少女の去る後ろ姿を見ながらその者は呟いた。
「あそこまで誘導されて扉を開けぬとは、これはやはりあの娘はなにかあるな。これが我にとって厄とならねばよいが」
そう言ってその者は姿を消した。
そしてその者が姿を消すのを見て安堵している光がそこにはいた。