第五話 トラウマを超えて
次の日、俺はいつも以上に憂鬱な思い出重い足を引きづりながら学校へ向かっていた。
今、僕の頭の中には持っている力のことをどう説明しよう、そもそも話すべきなのかという考えでいっぱいだった。
この力が問題になってこっちに逃げてたのにそれをここでも話すのは矛盾しているようにも思えた。
でもきっと彼なら理解してくれると信じて僕は話すことにした。
学校に着いて彼が来るまでのんびりとしていた。
ホームルームが始まる五分ほど前に葉山は登校してきた。
いつもなら三十分は早く来ている葉山がこんなにギリギリになっていることに疑問を持ちつつ僕は葉山の下へ向かおうとした。
が、先生が入って来てホームルームが始まったのでその時は話しかけることが出来なかった。
ホームルームの間、僕は妙に落ち着かない気持ちで先生の話もあまり入ってこなかった。
ホームルームが終わってから話しかけようとしたが葉山は他の人たちと話していて僕の話ができるような雰囲気ではなく、そんなことをしていたら結局放課後になってしまっていた。
教室で葉山が友達と話し終るのを教室で待っていた。
すると葉山が友達との話を切り上げてこちらに来た。
「星影、お前今日ずっと俺に話したそうにしてるけどどうしたんだ」
こちらにきて僕の向かいの席に座って話し始めた葉山。
僕は少し目をそらしながら昨日のこと謝った。
「すまん葉山、昨日勝手に逃げて」
僕の言葉に葉山は
「んなもん気にしてねーよ。別にお前が話したくないなら話さなくてもいいし。それにお前のトラウマがいることは中学の知り合いから聞いてる。今回のことはそのトラウマにつながってるんだろ。なら俺も興味を持つのはやめる」
葉山はそう言ってくれた。
それだけで僕の気持ちは随分と軽くなった。
だから話す気になれた。葉山になら話してもいいと思えた。
「僕は人ならざる何かが見える目をしてるんだ。それのせいで昔嫌われ、いじめられたことがあったんだ。それが僕のトラウマ。それから逃げるようにこの高校を受験して今ここにきてる。この高校でようやく普通の生活ができるようになったんだ」
僕の話を聞いて葉山は
「そうだったんだな。それは随分と無神経なことをしたな。すまなかった」
と、誤ってきた。
そして僕は昨日あったことを話した。
「僕が昨日見たのは月白に巻き付いてる龍だったんだ。そのことについても少し調べた。その結果わかったことは月白の家はあの龍の加護によって繁栄を保っているそうだ。その代償として一定の期間に一人の生贄を捧げなければいけないらしい。それが月白天だ」
葉山はそこまで聞いて
「それは気づいてしまった以上関わるべきものなのか」
僕にそう聞いてきた。
僕は静かにうなずいた。
「僕は昨日、月白と話したんだ。その時、彼女には龍はついていなかった。そして彼女の雰囲気は全く違った。縛られているものから開放されているようだった。だから僕は少なくとも助けられなくとも彼女に幸せというものを知ってもらいたい」
葉山はそれを聞いて勢いよく立ち上がり
「なら俺はそれに協力するぜ。なにか面白そうだ」
僕にそう言ってきた。
僕はそれに
「いいのか。あれに関われば少なからず命の危険があるし、関わってもメリットのなんて少ないだろ」
と、忠告するように言った。
しかし葉山は
「メリットなんて気にしてたらやってらんねえよ」
と、爽快に言ってきた。
僕のその言葉に妙に納得していた。
そうして僕達は月白を絡みつく運命から解き放つため動き始めた。