第三話 謎の龍
僕は朝早くから屋敷の門の前の近くにある公園に座ってゆっくりしていた。
理由は昨日図書館で調べて納得行かなかったこと、気になったことを調べるためだ。
昨日見たあの車の中に僕の疑問はあると思っていた。
そして数十分経って、門が開き昨日と同じ車が現れた。
そして昨日と同じようにとてつもない気配を感じた。
気配にやられないように我慢しながらできる限り車に近づき、中をこっそりと覗いた。
そこには学校で見覚えのある人が後部座席に座っていた。
そして確信に至った。
その見覚えのある人の体の周りにはうなぎのような体に鱗と背びれのように毛がある何かが絡まるようについていた。
それが数瞬の時であったにも関わらず俺の感じた時間の長さは数分にも数時間にも感じられた。
そして車が僕の真横を通ろうとした時、反射的に体を隠した。
このまま見ていれば良くないことが起こると直感的に感じたからだ。
そうして車は走り去っていった。
似たような感覚を感じたことはある。
だがあそこまで恐怖を感じるようなものは初めてだ。
あれに近づいてはいけない。あれと関わってはいけない。
僕は心の恐怖に従ってこのことを調べることをやめた。これ以上は取り返しのつかないことになる。
それからはいつもどおりの日常を過ごした。
朝、起きて眠い目をこすりながら学校へ行く準備をして、あくびをしながら登校する。
学校に着けば教室で「おはよう」と、言ってくる友人がいた。
午前中の授業を受けながらのんびりと外を眺めていた。
昼食は友人数人と一緒に食べ、アニメや漫画などの話で盛り上がった。
午後からの授業を眠くなりながら寝ないように必死に我慢しながら受けた。
授業が終われば多くの人は部活に行き、部活がない人はこれからどこに行こうか話しながら教室を出ていき、教室で友人と喋ってゆっくりと過ごす人もいた。
僕も友人たちと六時前くらいまで喋って過ごし、時間が来たらそれぞれ帰路についていた。
そんないつもどおりの日常が続いたおかげで僕の中からあの屋敷のことはすっかり抜け落ちていた。
いつもどおり学校生活を送り帰ろうとしたある日、友人が教室に俺の知らない人を数人連れて来ていた。
女子の友人だったため、来たのは二人の女子だった。一人遅れてくるそうだ。
話を聞くとこの学校のイベントの夏休みにあるキャンプファイヤーについて考えておかなければならないことがあるそうだ。
僕と一人の女子を除く葉山と女子二人はその実行委員になっていた。
女子の一人が先生から借りて来た資料に目を通しながらどうするかを考えていると遅れて来た女子が来た。
来た女子を見て俺は持っていた資料を落とした。
そこに姿を現れたのは月白天だった。
その後ろにはこの前見た何かが憑いていた。
その姿をはっきりと見たのは今が初めてだがその漂うオーラでそれが先日車の中にいたものだとわかった。
その姿は龍そのものだった。
細長い体に白く輝く鱗、背中には金色に近い白色の毛が光っていた。
顔の周りには顎髭のようなものと左右に一本ずつ細い髭が伸びていた。
僕は龍に気づいたが全力で気づかぬふりをしていた。
認知しているとばれれば何が起こるかわからない。
これには関わらなくて正解だったと思った。
「どうしたんだ、空」
葉山が近寄って来て資料を拾いながら聞いてきた。
「いや、すまん。急に人が入って来てびっくりしただけだ」
僕は答えながら拾ってもらった資料を受け取った。
彼女との関わりを持ちたくなかったと思っていた矢先まさか彼女からこちらに来るとは思わなかった。
彼女の体に巻き付くようにしてくっついている龍、僕はその存在に気づいていることに気づかれないようにビクビクしながら今日の話し合いを聞いていた。
話し合いは実行委員の三人を中心に進んでいった。
話し合いが行われいる間も月白は微笑みを崩すことはなかった。
噂に聞いていたとおりの姿だったが僕にはその笑顔の奥になにか黒い靄に囲まれて見えない部分があるように感じていた。
俺は彼女のことが気になりはしたがこの時は話し合いだけでそれ以上のことは何も話さなかった。
話し合いが終わりそれぞれが帰っていって教室には俺と葉山の二人だけが残された。
校舎には他の生徒もいないので静寂が流れていた。
そこでは葉山は一言言ってきた。
「星影、お前のその目には何が見えているんだ」