第一話 繋がる因果
朝から目に映りたくもないものがたくさん写り込んでくる。
そんなものを見ながら憂鬱になりながら高校に向かっていた。
僕はこの目が嫌いだった。
いや、目というよりこの人とは違う何かが見えてしまう力が嫌いだった。
これのせいで今までどれだけの苦労をしたことか。
子供の頃から見えていたせいでそれを周りに喋って気味悪がられたり、悪霊のようななにかに呪われそうになったこともあった。
この力にはいい思い出はない。
僕が住んでいた地元の同級生の間では俺は有名でほぼ全ての人から気味悪がられていたので高校は県外のそれも結構遠い場所を選んだ。
それからはその力のことを誰にも喋らず暮らしてきたためか友人を作って普通の人らしく生活することが出来ていた。
目に変なものが映りはするがそれを無視して暮らす技術を会得したため、目の前をそれが通っても気づかぬふりをして過ごしていた。
そんなある日
「なあなあ、三組にいる美女の話は知ってるか」
と、友人である葉山俊介が話しかけてきた。
「三組の美女って月白さんのことだろ。そりゃあ話くらいは聞いたことあるよ。あれだけ美人な人そうそういないもん」
三組にいる月白天は入学当初からこの学校の話の話題の一つとして常に上がっていた。
常に笑顔を崩さず、誰に対しても優しく楽しげに接してくれているので彼女の人気は凄まじい。
当然のことながらすでに数回の告白を受けているようだがその全てを断っているそうだ。
と、彼女の話を聞かない日はないが僕にとっては雲の上のような存在で外から眺めるくらいがちょうど良かった。
「そういえば、ちょっと風の噂で聞いた話だけど月白さんってなんか神様の声が聞こえるとかなんとか」
「さすがにそんなことはないだろ。そもそも神様がいるかどうかもわからないのにな」
「それもそうだな」
この時はこの話を特に重要だとは思わずに聞き流していた。
学校が終わり、一人で帰っていた俺は途中である大きな屋敷の前を通る時、いつも思っていた。
「なんでここからはなにか不思議な空間の感じがあるんだろうな。後、この少し見える鎖のようなものは何だろうな」
屋敷の壁の奥には壁を隔てて別のこことは別の空間が広がっているようなそんな不思議な感じがしていた。
そして壁から時々鎖のような何かがうようよとしていることがある。
気になりはしたがいつものと同じだろうと思い、そのまま通り過ぎた。
その時の俺には聞こえていたかったが、うっすらと助けを求めるような声がしていた。
その声はなにか不思議な力によってかき消された。
それを近くでなにか不思議な色をした光が見ていた。
「運命とは違う因果はいつの時代も切れぬものなのだな。この時代の鎖は昔よりも強固な物となってしまった。だが今の時代ならその鎖を切れるかもしれないな。それは少年の意志にかかっておるぞ。あの子を神の世界になど連れて行かせないでくれ」
その言葉は誰にも聞かれず虚空へと消えていった。
だがその言葉は言霊として思いを乗せてどこかへと消えていった。