第十四話 現れた邪龍
私はあれから十八歳になった。
年を重ねるに連れ神様と話すことが少なくなっていった。
段々と心の距離が離れていっているようだった。
それでも神様からの一方的な声は聞こえてきていたので私が持つ役割には特に問題は出ていなかった。
しかしそれでも昔みたいに話がしたいという気持ちは私に中にあったので時折私は神様を祀る神殿に来て神様に声をかけているがそれでもそれに答えてくれるようなことはなかった。
何も反応してくれない神様に少し悲しみを覚えつつ私は神殿を出ようとした。
その時だった。
突然外から雷が落ちたような轟音が聞こえてきた。
ビクッっと体を震わせた私は音のした方へと扉を開けて向かおうとした。
その時、急に頭の中に声が響いた。
「だめです。行ってはいけません」
神様の声だった。
久しぶりに聞こえた神様の声に私は嬉しく思いつつも疑問を口にした。
「どうして行ってはいけないんですか」
その質問に神様は端的に一言
「あれが邪龍とも呼ぶべき存在であなたが狙われているからですよ」
そう答えてくれた。
邪竜、私が狙われているなどわからないことが多いがそれでも今までに見たことのないくらい焦って警戒心をむき出しにしている神様の様子を感じ取ってそれが危険なものであるということだけは容易に伝わってきた。
わからないがとりあえずこの神殿の中にいれば安全だと神様は言うのでしばらく私はここで身を隠しておくことにした。
外からは何かが歩き回り色々なものが壊されていく音が聞こえてくると共に人々の悲鳴が聞こえてきていた。
私は震える体を抑えながら声を出さないようにしていた。
しばらくしてドンドンとこの神殿の壁を叩く音が響いてきた。
「どうやらあなたがここにいることに気がついたようですね。あなたは私の御神体の後ろに身を隠しておきなさい。時間が稼げればきっとなんとかなります」
神様がそう言うと私はすぐに御神体の後ろに回り込み身を潜めた。
そしてそれと同時に扉が激しく壊れる音と共にはないかがこの神殿へと入ってきた。
必死に息を殺し、気配を隠すことに努めた。
足音がこちらに向かってきた。
私は震え、今にも逃げたい気持ちを抑え祈り続けていた。
バチィと激しい音が聞こえてきた。
その方向を見ると白い細長いヒゲのようなものが見え、それと一緒に光の波紋のようなものが壁になるようにして広がっていた。
それは神様が自身を守るために作っていた結界だった。
そしてそれに干渉されないのは私だけだ。
当然、私以外の存在は結界に阻まれて入ってくることができない。
しかしそれも時間稼ぎにしかなっていなかった。
少しずつ結界にヒビが入ろうとしていた。
ゆっくりと割れようとしている結界に恐怖を抱いていた。
私が覚悟を決めて行動を起こそうとした時、龍の上から一直線に光の柱が降ってきた。
それが直撃した龍はその身を翻し、神殿から出ていった。
何がなんだかわからなかった私だったが龍がどこかへと去って行ったことで体中から恐怖が抜けてそこで意識がプツンと切れた。