第十三話 神の声を聞ける少女と神様
私はある神様に仕える一族に生まれた。
その神様はこの土地で土着神と呼ばれ、昔からこの土地に住み信仰する人達に豊作だったり繁栄だったりをもたらしていた。
そしてそんな神様を私達は祀りあげ年に一度、その年を無事に過ごせましたと神様に報告して来年もまたよろしくお願いしますと貢物を送るお祭りが行われている。
今年で十八となる私は今年からそのお祭りでの神事での神様に捧げる舞と貢物をお供えする役割が与えられた。
こんな私だが実は今まで一族の中でも類稀な才能を持っていた。
それは神様の声が聞こえるというものだった。
その才能は一族でも私の前の人はもう書物を探しても見つかるかわからないくらい前のことだった。
そういうことで私は生まれた頃から大事に育てられてきた。
六歳を過ぎた頃から色々な教養を学び始めていた。
そしてこの頃から神様の声がはっきりと聞こえ理解でき始めていた。
そして子供ながらに無邪気だった私は暇を見つけては神様とお喋りをしていた。
「ねえねえ、神様はどうしてこの場所でずっと暮らしているの」
私がこんなことを聞くと神様はその姿が見えていなくともわかるような温かさを感じさせる笑いを見せて答えてくれた。
「私はね、昔はもっと力を持った神様だったんだよ。でも神様の世界は時々少し異質なものが生まれてきてね。それは普通の神様よりも力を持っていて、そうすると神様は自分の位を守ろうとするけど、負けるとそこから追い出されて私みたいになるんだよ」
「じゃあ神様は悪い神様になにか仕返ししたりはしたの」
「いいや、私にはそこまでの力は残されていなかったからね。そのまま位を譲ったよ。でもねこれは決して悪いことではないんだよ。鳥さんが虫さんを食べてしまうようにそれが自然のことなんだよ」
神様が色々話してくれたが今の私にはあまりイメージのつくような話ではなかった。
それからも私は時間を見つけては神様とお話をしていた。
周りからは神聖視され、尊敬と少し特異なものとして見られ距離を置かれているようだったが私からしてみれば仲のいい友達の親のような感覚だった。
それから時が流れ、私は十三を超えていた。
昔に比べると色々なことを学んで神様の話が理解できるようのなり、最近ようやく今話している神様がどんな存在なのかがわかってきた。
神様はまだここに誰も住んでいないような昔にこの場所に下りてきた。
理由は新しい神様に負けて位がなくなってすることがなくなったかららしい。
この神様同士による位の争いはよくあることらしい。
時が流れるとともに新しい力を持った神様が現れるため数百年に一度こういったことが起きるそうだ。
そしてこの土地に下りてきた神様は偶然この場所を通りかかった旅人ちょっとした気まぐれで奇跡を与えたそうだ。
その奇跡に感動した旅人がそれを多くの人に伝え広げるとその奇跡を、という人が数十人ほど集まってきたらしい。
それがこの村の原型となった人達だそうだ。
そこから旅人の一族が村の長となり、この場所の開拓と神様を祀るための場所づくりを行っていった。
そして村が完成していくとだんだんと人が集まってくるようになって村の規模が少しずつ大きくなっていった。
今私が生まれてきた一族は最初の旅人によって作られた一族らしい。
地上に暮らす神様は通常、信仰心なんかを得て存在を保っているらしい。
神様は昔は信仰心がなくても存在を保てていたそうだが力を失ってからはそうもいかなかったようだが別に自分が存在することにこだわってはいないそうでそのまま幽霊のような存在としてゆっくりと人の生き様を見ていればいいかと考えていたらしい。
最初に旅人に奇跡を与えたのも本当に気まぐれで別に信仰心を集めるためにやったわけではないそうだ。
元々、縁結びの神の力を持っていてたので偶然の出会いになにかしら意味があると知っていたので助けた結果なにかおもしろい人が見れれば良いなくらいに考えていたそうだ。
ここまでの話を聞いて私はこの神様だけではなく自分の知っている神様はもしかしたら人と変わらないようなものなのではないかと思い始めるようになっていた。