第十二話 繋がる始まりの過去
彼女は生まれた。
家族に祝福され、村の人々から祝福され、その土地にいる神からも祝福されていた。
その子どもはこの土地にいる神に仕える一族に生まれた。
そのため、村ではお祝いのお祭りが行われていた。
そのお祭りを見守る一人の老人が自分の孫と歩きながら話していた。
「それにしても今回のお祭りは数十年前のお祭りに比べて規模がおおきいのお。今回生まれた子供は特別な子供なのかの」
老人がそんなことを喋っていることに対して孫が話しかけてきた。
「おじいちゃん、このお祭りってなんのためにやってるの」
「このお祭りはの、村を繁栄させてくれている神様に仕える家のところに新たな子供が生まれた時にするお祭りなんじゃよ」
孫はそれをふーん程度に聞いていた。
老人とその孫はお祭りを楽しみ、最後の花火を見ようと村から少し離れた山へと登っていた。
花火はお祭りが行われている場所でも見ることができるがこの場所のほうが人がおらず花火をきれいに楽しみやすい。
そうして山を登り、少し開けた場所に出た時、ちょうど花火が始まった。
それから約十分ほど花火を楽しんでその日のお祭りは終わった。
そして花火が終わった空は先程までの明るく輝いていたのとは打って変わって暗い静寂だけが残っていた。
孫は花火の余韻を感じるように空を見上げていた。
そして空を見上げていた孫はそれの存在に気づいた。
真っ黒な空の中を飛ぶ一つの白い、細長い、蛇のように飛ぶ何かを。
だが、それは一度瞬きをした頃には消えてしまっていた。
その時、孫は気になりはしたがおじいちゃんに聞いても
「何もみえとらんかぞ」
と、言うので自分の見間違いだったのだろうかとすぐに頭の中から消えていた。
孫が見たのは何だったのか。
それがわかったのはそれから十八年後のことだった。
だがこの時、その運命は、その因果は出来上がり、動き始めていた。
因果で結ばれたのは決して人だけではなかった。
この時、時を同じくして、近くの山奥の村で一人の少年が生まれていた。
家族に囲まれて、それ以外に見守り、祝福してくれるような人はいなかった。
この時、一匹の動物がこの世界から魂が消えていった。
どこか大きな屋敷の床の下で寿命を迎え、その体に宿る魂は消えてなくなった。
そしてそこには黒い塊だけが残っていた。
空っぽの別の何かが入れば動けそうななにか普通ではないような何かが。
異端なものに壊された繋がりは一代の繋がりでしかなかったはずのものを未来へと繋がるものへと昇華させてしまった。
そこに人も神も関係ない。
繋がるものたちはひきつけ合い、いつの時代も必ず出会った。
繋がりを持たぬものも時代を重ねて増えて、繋がるものたちの力となっていった。
繋がらず、部外者となるものは少しずつ時代を超えて近づくことさえできなくなっていった。