第十一話 そこに佇む一軒家
恐怖心を感じながら一歩ずつ僕はその家へと近づいていった。
近づいてすぐに何かが起こるわけではなさそうだがそれでもいつ何が起こるかわからない以上は気を抜くことは出来ない。
何事もなく家の扉の前まで来ることが出来た。
が、その目の前の扉を開けることを躊躇してしまっていた。
建物の中から一つ謎の気配を感じた。
それは今までに感じたことのないほどの神々しさを感じ、それに近づくどころか見ることさえも難しいものを扉を一枚挟んで感じていた。
しかし、その気配はあの龍から感じた気配とは全く異なっていた。
もしここが龍に関連知る場所ならば建物の中にあるのは龍と関わりのあるなにかだ。
ではなぜ感じる気配は龍のものとは全く違うのだろうか。
僕の経験上、なにかとなにかが関連知る場所には必ずといっていいほどに同じ気配を少なからず感じていた。
ならばここには龍に関わるなにかは何のだろうか。
そうだとするのならばあの屋敷の姿の説明がつかない。
距離が離れているから姿が違って見えたトするならばそれは航空写真でも同じことが起きるはずだ。
しかし、それが起きたのは航空写真よりも距離がないこの場所だけだ。
ならば、この気配は確実に龍に関わるなにかだろう。
そして僕は覚悟を決めて扉に手をかけて、開いた。
そこにあったのは十名ほどの白い着物を着た人達とその中央になにか朱く浮かぶ球体の何かが見えた。
その中の一人が僕の方に目を向けてきた。
そして僕を数秒眺めたかと思うと急に立ち上がり僕の目の前に飛ぶようにしてきた。
そしてその人は言った。
「ようやく、ようやくこの場所にあなたが来てくれましたか。私達はあなたが来てくれることを待ち望んでいました」
その言葉は急すぎて頭の理解が追いつかなった。
「え、は、えっとどういうことですか」
困惑の様子を見たその人達は
「ああ、申し訳ありません。少々興奮しすぎました」
冷静さを取り戻し落ち着いた。
そして僕を家の中へと招き入れ、置かれた座布団の上へと案内した。
中には特にこれといった何かはなく、真ん中のあたりに囲炉裏のようなものがあるだけだった。
その空間には生活感といったものが感じられず、まるでこのために用意されたような場所のように感じれた。
案内された座布団の上に座るとそこにいた人達は少し移動して朱い球体の何かを僕の目の前にしてその後ろに整列して座った。
そしてその列の僕から見て右端にいる人が話し始めた。
「これより本題に入る前にどうしてあなたがこの場所にたどり着くことが出来たのか教えてもらえませんか」
そう言われたので僕はここまで来た経緯を話した。
するとそれを聞いてさっきの人が
「説明ありがとうございます。今の説明で確信が生きました。あなたはやはりあの御方を助けられる唯一の人なのでしょう」
と、言われるがまったくわけがわからない。
(いや、もしかするとこれはあの屋敷や龍に関わるものかもしれない。とりあえず話を聞いてみるか)
少し思考を巡らせて僕はその人に質問した。
「すみません、あなたの言っていることはよくわからないのですが先程言われていたあの御方とは誰のことなんですか。そしてそれは僕とどう関わりがあるんですか」
僕のその問いにその人は
「そうでしたね。それらに関する説明がまだでしたね。それでは少しお話に付き合ってもらいますがよろしいですか」
そう聞かれ僕は静かに頷いた。
そうしてその人は話しだした。
それは昔、昔、龍と人が生み出した絶望と悲劇、そして糸よりも細い希望を持つ因果の話だった。