第九話 屋敷を知るために
僕の発言に葉山は目が点になったような表情をしていた。
「お前正気か。普通に考えてあの屋敷に無断で入ったことがばれたら即警察じゃすまないかもだぞ」
葉山が言う通り僕も普通のことでは済まないような気はしている、が
「それでもそれをする価値があの屋敷の中にはあるような気がする」
僕の目を見た葉山があきらめたように
「はあ、お前も出会った頃に比べて随分と変わったな。あの頃の自信なさげな姿はどこへいったのやら。いいぜ付き合ってやる。やるからには全力だ」
そうして二人で屋敷に侵入することが決定した。
そうして決行は七月の後半、夏休みに入ってから行われることになった。
それまで僕たちはあの屋敷のことを調べながら屋敷の周りを歩きどこからが入りやすいかや航空写真を見てどういう経路で進むかを考えていた。
ミスがないようにしっかりと綿密に計画を立てて行った。
現在は六月の後半から七月に入ろうとしてる週だ。
そしてその週末、僕たちは近くの小高い山に登っていた。
「さてさて、ここからだと良く見えるな。登ってみて正解だったな。屋敷の構造が良く見える」
僕たちは航空写真だけじゃ建物の判断がつきづらいからと近くのマンションなどから見て回ったがそれでも全体像がつかみづらかった。
この場所は屋敷の構造について調べている時
「あの屋敷どこから見ても見づらいよな。どっか全体が見渡せる場所ってないのか」
葉山が屋敷の見づらさに文句を言っていた。
「まあ、明らかに何かしらこの屋敷の圧力がこの地域一帯を操作してるんだろうな」
「そういえばあの屋敷のせいでお前の家の辺り交通悪いよな」
「まあそうだね。あの広大な屋敷がなければ通りそうな道がいくつもあるもんな」
などと二人で屋敷なついての愚痴をこぼしていた。
そうしてこの辺りの地理を調べていると一箇所小高い山があることに気づいた。
そこは少し町から離れていて田舎であり交通が悪いことからあまり人が近寄らないため、そこにこの町を見渡せる展望台があることをこの地域に住んでる人でも知らない人が多い場所だ。
「ここってたしか展望台があったはずだ。もしかしたらここから見えるかもしれない」
僕がそう言うと葉山は
「そうなの。ここってただの少し高いだけの山じゃないのか」
少し驚いていた。
「そうなんだよね。ここあんまり知られてないけど地味に展望台があって知ってる人からはちょっとしたスポットになってるんだよね」
色々知ってることを話して七月に入って最初の週末にこの場所に行くことになった。
計画を立てて、次の週は随分と早く時間が流れたように感じていた。
そして金曜日になりその日は明日のことを考えていてよく目に月白の姿が映っていた。
相も変わらず月白の姿は微笑んでいてもそれが本心ではないと思える顔に張り付いた笑顔だった。
そしてその背中には龍が巻き付いている。
その龍を見ていると僕の頭にはまるで鎖のようなものに見えてきた。
この前、公園で話した時には屋敷や家族のことはあまり聞けなかったがその姿はありのままの姿に感じれていた。
それを考えると彼女の人生はもしかしたら龍に縛られているのかもしれないなという考えが頭を巡ったがそれを決めるのはもっとあの屋敷について調べてからでいいかとそこで思考を切った。
そうしてその日も終わり次の日、屋敷の見えるかもしれない山へと向かっていった。