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「むー、たずな〜!たずなはなんか無い!?世界があっと驚くようなことっ!」
抱き着きながら無理難題を求めてこられても困る。だいたい秘密が好きでここにいる訳でもないし。
「無いですよ、引っ付かないでくださいっ。力強っ!」
一旦文庫本に栞を挟んで机に置いてから引き剥がそうとするも両肩を抱きつかれ上手く体を動かすことも出来ない。
ハグというよりも取り押さえに近かった。
挙句、スベスベな肌を擦り付けて来る。
「あ」
「何かおもいだしたっ!?」
「最近くらいニュース聞かないですよね」
「くらいニュース?」
「はい」
朝学校へ行く前に時間確認のためにテレビをつけているのだけれども、犯罪についてのニュースを聞かない。
というよりも、規則正し過ぎている気がする。
そうだ、よくよく思い返して見るとマイナスになるような事がない。
「それっていい事じゃん」
「そうかもしれないですけど、変じゃなりませんか?人に対してもイラつきすらないんですよ?どんな事があっても」
人の感情の1つが潰されてる事になる。
それは普通じゃない。
「あー、あー、あー!!本当だっ!あれ?じゃあ電車でスカート捲ってきた奴居たけどなんであの時の私は何も思わなかったんだ!?」
「痴漢ですやんって、それ犯罪……」
前は未成年がお酒を飲んだだけで一大ニュースみたいな感じだった。
たったそれだけの事で騒ぎ出すか?
で、センパイが実は痴漢されてました。でも、違和感なしでした。今気付いて憤ってますって変だ。
「おっほー、なんかヤバいことに気がついちゃったんじゃないの!?」
「忘れましょう。本当にヤバいことな気がして来ました」
センパイの言う通り洗脳に近い何を感じる。その洗脳に近い何かが溶けてしまったとしたら、どうなるか。
「いいじゃん!ねね、みんなにも言ってみない!?」
「それこそ危ないかもしれないじゃないですか、せめてあの人だけなら」