本の持ち主
四節 本の持ち主
その日のお昼休み。
「終わった〜」
俺はほんの数時間で原稿用紙10枚を書き終え机に突っ伏していた。自分でもよくやったと思う。まぁそのほとんどは前に書かされた反省文の写しだがそれはそれで良いだろう。
そんな優越感のようなものに浸っていると、後ろから声がかかった。
「よー君、あの本読み終わった?」
勘弁してくれ、百々 艶 『ササ エン』今俺が今、どんなに心が高揚しそして衰弱してるか知ってるのか?
「はぁ」
ため息しか出てこなかった。
「あっごめん、江崎先生にスッゴイ怒られたんだっけ?」
「ああ、その通りだ」
こいつは、気づくのが遅いというか、なんと言うか、悪気が無いのは分かっているんだがそこまでストレートに言われると悲哀な気分になるのは俺だけか?。
「あの本、徹夜で読んでたら、遅刻しちまって」
今にも睡魔に倒れそうな自分と奮戦しながら口を開いた。
「えっ、あんな分厚い本1日で読んだの!?」
まぁ、1日で読み終わるはずの無いほどに分厚い本だったのだが、意外とはまる要素が多く、この、読書をたまにしかしない俺でさえ徹夜という哀れな行為をしてしまったのは事実だ。
「ああ、まぁな意外と面白かった、あの本」
「フフッ そうでしょ!やっぱりね〜、よー君ならはまると思って貸したんだ」
「あっ!!」
まずい、あの本を部屋に置いてきたままだ、俺の馬鹿、明日は土曜だから学校ないし、部活もないし、いつ返そうか・・・。
「どうしたの?」
「いや、実はあの本、家に忘れてきちまって」
「あっ、それならちょうど良いや、明日、よー君家遊びに行くね」
えっ、?何がちょうどいいんだ?てか何で明日なんだ?別に月曜でもいい気がするのだが。
「明日?」
「うん、明日!それじゃ私は美穂と約束あるから」
「あっ、ちょっ、と・・・・・」
何も言えずに終わってしまったー。何なんだ?あいつは、俺とそんなに仲が良かったか?俺の脳内では仲の良い友達リストには登録されていないぞ、艶。
一人で納得し、大きく息を吸い、ため息を鬱憤と一緒に吐き出した。
「はぁ〜ぁ〜」
もうどうにでもなれだ。