最凶教師
三節 最凶教師
廊下を、音を立てずに歩くのは少し疲れるがそうしなければならない理由が俺にはあった。保健室にこもりっきり(保健の先生)の谷口 愛香『タニグチ アイカ』みんなは可愛いというが『愛』に『香り』で『愛香』だぞ、俺からしてみれば、気持ち悪い名前だった。そいつに見つかるとなぜか俺は恐喝を受け金を巻き上げられる。いわゆるかつあげ。理由を聞きたいが会うたびに金を奪われるので、できれば・・・いや絶対に会いたくない人物だ。そんな、戦場の最前線を歩いているような緊迫した雰囲気の中を突破し、無事自分のクラスの教室に辿り着くことができた。そして俺が授業中の教室のドアを開けるとみんなの視線が一気に集まり少し照れながらも、今が何の授業なのかを確認するために黒板を見た。
「佐野崎!!何してんだ、ちょっとこっち来い」
最悪だ、社会科担当の、江崎 美紗『エザキ ミサ』この学校の中では1,2を争うほどの最凶教師だ。特に遅刻をしてきた者は今では?昔でもなかったかもしれないが珍しく原稿用紙10枚分もの量の反省文を書かせるという仕打ちを受けることになる。そんなに何を書けば良いのかも分からない紙を渡されたときの脱力感は何者にも勝るものがあると俺は思っている。
「授業の確認してくればよかった」
自分を哀れみながら静かに周りの笑い声や視線を感じながら、美紗の元まで重い足を引きずるように歩いていった。
「お前らは、教科書の問題やっとけよ」
「はーい」
みんなさらさらやる気はないのだろうが、怒られないように素直に返事をしている様子で。そんな最低なやつらを一瞥し俺は入室したばかりの教室をたった数分足らずで出て行く羽目になったのであった。