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 顔色を変えた凍牙に気を良くしたらしい棠棣が得意げに口を開こうとしたとき、隣にいた赤い獣が棠棣を庇うように飛び出した。乱牙の接近を感じていた凍牙は、棠棣に殴りかかった乱牙に周りが気を取られている間に露珠を助けようと振り返る。しかし、黒い靄に手を掛ける寸前に、朱華が背後から切りかかり、それを妨害する。鬱陶しい、と凍牙がそれを振り払うが、その後ろから朱華を援護するように飛ばされてきた龍の攻撃は、流石に片手間には受け止められない。仕方なくまた露珠を背にして朱華と龍を相手にすることになる。

 乱牙も、赤い獣とその他の多数の妖を相手に、棠棣のところに到達するのには難渋している。


「鬼でもない僕が、牙鬼兄弟を揃って倒せるかもしれないなんて最高の気分だよ。君達のどちらかだけでも倒せれば、またいい『素材』が手に入るし。そこの銀露が生きている限り、妖の強化には不自由しない。白露だって、彼女を泣かせるコツも掴んでき――」


 楽しそうに話す棠棣の左右の頬に赤い筋が入る。凍牙と乱牙、双方からの舌打ちが聞こえて、それが二人からの攻撃で、棠棣との間に妖が割り込むことでその力を軽減したものだと棠棣が理解する。凍牙と乱牙、それぞれの攻撃に割り込んだ妖は消滅している。


 不愉快な棠棣をすぐにでも消し去りたい。凍牙は両頬の傷に驚いた様子の棠棣を視界の端で確認する。露珠を庇いながらでなければ朱華と赤い獣、そして龍以外の、棠棣を含む有象無象はすぐに殺せる。いっそのこと、ここで角を折って露珠に持たせてそうしてしまいたい、とも考える。龍との戦いに苦戦することにはなるだろうが、乱牙がいればなんとかなるだろう。角を折って露珠に持たせる隙さえあればいい。ちらりと乱牙に視線を送ると、彼も同じことを思ったらしい。赤い獣の攻撃を避けながら、自分の角を指差して凍牙に許可を求めている。

 どうやら、乱牙は乱牙で自分の角を折るつもりのようだ。馬鹿が、お前が角を折ったらその後戦闘の続行は不可能だろう、守る対象を増やしてどうする、と凍牙が心の内で乱牙を毒づく。自分がやる、と返そうとしたところで、朱華と龍の攻撃が眼前に迫る。


「余裕だね、凍牙様?露珠を拘束してる妖を抑えるために放っている妖気、あんまり長々続けると、露珠が弱るんじゃないの?」


 正攻法では凍牙に適わない朱華は、攻撃しつつも会話で凍牙の気を引こうとする。その間に繰り返される龍の攻撃が、凍牙を消耗させる。朱華が言うのは事実で、露珠を拘束する黒い妖が、今以上に露珠に危害を加えられないよう、凍牙が妖気で抑えている。そして、朱華の言うとおり、これが続けば露珠も負傷する。悠長に戦っている場合ではないのは確かだ。朱華の問いには答えずに、凍牙も朱華に揺さぶりをかける。


「身体の一部や角を渡してまで、なぜ棠棣の命令に従っている。あの程度の妖鹿、どのようにでもできるだろう」


 瞬間、力が入ったらしい朱華の攻撃が大振りになり、凍牙はそこを見逃さず、背後の龍を攻撃する。会話が出来る分、朱華のほうが戦いやすい。弱っている朱華よりも先に、龍にある程度損傷を与えておきたい。龍への攻撃の余波でよろめいた朱華が、地面に膝を着く。


「皆があんたみたいに言うから」


 聞き取れないほどの声量で、朱華が呟く。


「だって、それ以外に、私が棠棣に渡せるものなんてないから。私が、棠棣から奪ったものには、足りない」


 ゆらり、と立ち上がった朱華に、どれほどの力が残っているのか。凍牙は朱華を視界に入れつつも龍の動向を注視する。


「そもそも、あいつの目的はなんなんだ」

「鬼と同等の、それ以上の力を手に入れたいだけだよ。お前達は、その身を削るだけで価値がある。何もしなくても、持って生まれたそれ自体がね。酷いと思わ……ないか、お前達にはわからない」


 朱華に問いかけたつもりが、当の棠棣から答えが返る。その「お前達」に朱華も含まれていることはこちらに向けられた苦々しげな視線からも分かる。その視線から逃れるように顔を背けた朱華に、凍牙が問いかける。


「お前が奪ったわけではないだろう。こんな状態で、お前、いつまでもあいつを守っていられると思うのか」


 それは朱華も薄々気がついていたことだった。この時点でさえ、凍牙が露珠を諦めれば瞬時に決着がつくだろう。今回をやり過ごしたとしても、棠棣が行動を変えなければ、朱華は力を失う一方で、朱華がいなくなれば作られた妖だけで棠棣を守りきるのは難しい。朱華の角から作られた赤い獣以外の妖は、今も朱華の思念の影響下にある。朱華を失ってもその状態を保っていられるかもわからないのだ。

 朱華の迷いに呼応するように、露珠の拘束していた妖の力が緩まる。


 その隙を逃さなかった露珠は、瞬時に白狐の姿をとる。酷い消耗と拘束されていたことに加え、凍牙の妖気の重圧で声を出すことも適わなかったが、意識はあった。露珠は目の前の凍牙の背に向かって走り、その肩に巻きつくように飛び乗った。


 凍牙はその動きが見えていたかのように、肩に羽でも降ってきたとでも言う程度にさえ身体を揺らさない。当然の様に露珠を受け止め、首もとの毛を撫でてやる。

 緊迫した状況での凍牙のその仕草は、露珠自身も、その様子を見ていた乱牙のことも安心させ、逆に棠棣と朱華を追い詰めた。


 棠棣の焦りに呼応したのか、龍が青白く仄かに光る。凍牙の妖気が爆ぜるのに似たその光は、そこから強力な攻撃が発せられることを予感させた。自身に込められた力全てを解放しようとするような様子で、凍牙を向いたその口を開ける。その光が凍牙に向かって弾けた瞬間、ぱっと、露珠が凍牙の首から飛び降りて、龍と凍牙の間にその身を躍らせた。凍牙が咄嗟に手を伸ばすが露珠自身がそれから逃れるように更に前に出る。妖が放った攻撃は当然進路を変えられず、そのまま露珠に向かう。が、放った攻撃を包み込むように、龍がその形を大きく変えた。


「!?!?」


 閃光とともに、何かが砕け散る音がして、露珠は後ろから強く手を引かれて身体ごと抱きこまれた。ようやく光が収まり、露珠は凍牙の腕の中から辺りを見回す。

 朱華の角から作られた妖以外の、棠棣が作った妖はすべて倒れており、凍牙と露珠に新たな傷はない。乱牙と朱華は傷を負ってはいるものの、辛うじて持ちこたえていた。

 そして、棠棣は――

 乱牙に攻撃をしようとしていたはずが、場所を変えた朱華の妖に抱き込まれ、無傷だった。


「一体、なにが……」

「凍牙の妖が崩壊して、その衝撃でほとんどの妖が死んだ」


 呆然と呟く朱華に、同様に驚いていた乱牙が思わず返事をする。


「わ、たしを……」


 凍牙の腕のなかから進み出た露珠が、龍が最後に居たあたりの地面に落ちている白銀の欠片を拾う。


「私を、護ってくれたの。角が……自分の攻撃を、飲み込んで。私、こんな……」


 凍牙にさえ攻撃していた角の妖は、それでも露珠を護ろうとした。最後に自分が崩壊するときでさえ、その余波が露珠を巻き込まないようにするほどに。角に込められた凍牙の思いがそれほどのものだったのだと、露珠は思い知る。そして、それほどの思いが込められ、凍牙の寿命を削って与えられた角を失ってしまったことに、欠片を胸に抱いて悄然と俯く。


「これは、君がやったの、朱華」


 朱華の妖が、自分の命令を置いてその身を護りに来たことに、棠棣が驚愕を隠せないまま朱華に問いかける。


「今は何も……でも、角を折るときに、棠棣を護ってくれたら、と……」


 棠棣を抱き込んだ形のまま制止していた朱華の妖は、棠棣がその内から出ると、一瞬の炎となって姿を消した。


「もうやめよう棠棣。こんなことやめて、二人で静かに暮らそうよ」朱華が、消えた炎に手を伸ばしている棠棣に歩み寄る。「私、棠棣が鬼でも鬼じゃなくても関係ないよ。だから」祈るような響きを纏わせた朱華の懇願に、棠棣が何か言おうと口を開きかけたが、それは音にならなかった。


「そんな都合のいいことが」棠棣の返答を凍牙の冷たい声が遮る。「この後生きていられるとでも?」


 先ほどの龍が放ったような光が、凍牙の指先に集中する。その先はもちろん、朱華と棠棣だ。朱華は、当然のように棠棣を背に庇うように体勢を変えるが、それを貫くつもりの凍牙は気に留めないし、恐らくそれは朱華にも分かっている。二人が、自らの行く末を理解した様子なのを見て、凍牙が指先を振ろうとする。


「お待ちください、凍牙様」


 ピタリと動きを止めた凍牙が、指先を朱華に向けたまま露珠を振り返る。続いた露珠の言葉を聞いた凍牙は、不快な表情を隠せないでいるし、怪我の酷い露珠を助け起こすようにしていた乱牙も、その言葉に驚いて露珠を見る。朱華や棠棣でさえ、露珠の言葉に呆気に取られたように口をあけている。


「露珠、何を言っているのか分かっているのか」


 凍牙の険を帯びた視線を受けて、露珠の体が小さく震える。その冷たいまなざしが自分に向けられるのが、こんなにも恐ろしいなんて露珠は今まで知らなかった。害される恐怖ではない、殺されるよりも、呆れられ、疎まれ、嫌われる方がよほど恐ろしい。それでも、今すぐに発言を撤回して謝罪してしまいたい気持ちを抑えて、説明を試みる。


「二人を、殺すのは待っていただきたいのです。その者は鬼と銀露のことを調べておりました。鬼の力も、銀露の能力についても、私達が知らないことを知っています。それを、むざむざ失うのは惜しい。せめて、今分かっていることだけでも聞き出し、お許しいただけるのなら、研究を続けさせ、その知識を牙鬼のものに」


 重ねた露珠の言葉を聞いても、凍牙の剣呑な雰囲気は変わらない。この望みを口にすることが、凍牙の不興を買うことは分かっていたつもりなのに、覚悟が足りていなかった。凍牙の目を見返すことが出来ず、露珠は視線を落とす。朱華と棠棣、特に棠棣の助命は牙鬼のためにもなるはず、というのは本心だが、これ以上は更に怒らせてしまいそうで、言葉が思いつかない。視力を失っている側も含めた両目尻から涙が溢れそうになるのを賢明に堪えるが、右目は瞬きさえもできなくて涙が溢れてしまいそうになる。いつも、どんな我儘でも優しく受け止めてもらえたから調子に乗りすぎたのだと、露珠は早くも後悔し始める。凍牙の角を失わせたこと、牙鬼に対する今回の行動、棠棣と朱華を許すような対応など発言するべきではなかった。


 大怪我を負って、立っていることさえままならない妻から、そうさせた張本人の助命を乞われて、露珠を責めるような言葉が口をついて出るのをとめられなかった。思った以上に、自分の声が冷たく低く響く。身体を小さく震わせて俯き、溢れそうな涙を懸命に堪える姿に酷く後悔する。常々言ってほしいと思っていた我儘を、実際に言われてみればこんな風に封じようとするなんて、我ながら狭量だ。

 凍牙の返答がないことに耐えかねた露珠が居住まいを正すよう身じろぐ。


「申し訳ございません。愚かなことを申し上げました。お許しください」


 最近やっと砕けてきたと思った口調を過去に戻して、露珠が発言を撤回して凍牙に許しを乞う。傷ついた身体で無理矢理頭を下げようとする露珠を、身体を支えていた乱牙が慌ててとめる。乱牙は、腕の中で小刻みに震える露珠を見下ろしながら、この場をどう収めるか思考を巡らせる。凍牙の怒りは最もで、立場が逆だったら乱牙も露珠を責めただろうと思う。ふっと重圧が消えて、凍牙の視線がこちら側から朱華と棠棣に向いたのに気がつく。


「二択だ、選べ」


 露珠へのそれよりも明確に殺意の篭った視線を二人に向け、凍牙が言う。


「ここで死ぬか、露珠に隷属し銀露に貢献するか」息を飲む二人を更に睨みつけ「選択肢があること自体を露珠に感謝しろ」


 隷属の先を、凍牙自身ではなく露珠にしたのを聞いて、乱牙が露珠に「大丈夫だ」と耳打ちする。


 凍牙の提案を受けて、呆けた様子の棠棣を後ろに庇うように前に出た朱華が蹲う。


「棠棣が良いといってくれるなら、私は、露珠様に、隷属を」


 朱華のその動きにはっとした棠棣が同様に手を付く。


「角を」


 指先に集めていた妖気を霧散させ、凍牙が朱華に手を伸ばす。その手に吸い寄せられるように、立ち上がってゆっくりと歩み寄る朱華の背中に棠棣が心細げに名を呟く。

 凍牙は、手の届く場所で跪いた朱華の角を掴み、もぎ取るように力を込めた。


「ぐ……あぁっ!!」


 抑えようとしても喉からもれるような苦しげな叫び声に、その痛みを想像した乱牙は露珠を抱く手に思わず力が入る。露珠も、そんな乱牙の様子に痛みの度合いを察して身体を強張らせたが、当の凍牙は眉一つ動かさずに、そのまま朱華の角を折った。うずくまるようにして痛みを堪える朱華には目もくれず、凍牙は棠棣に視線を移す。


「変化を解け。お前もだ」


 言われるがままに棠棣が変化を解く。薄く緑がかった栗色の妖鹿が、うずくまる朱華の隣で角を凍牙に突き出すようにして膝を折る。妖鹿の角は鹿のそれとは違う。2本の角にそれぞれ手を掛けた凍牙が力を込めると、妖鹿がくぐもった叫び声を上げた。


 ★


「しばらくここで大人しくしていろ」とだけ言い残して凍牙たちが去り、朱華と棠棣だけがこの場に残された。自身も怪我を負いながら、消耗しきっている朱華を甲斐甲斐しく看病する棠棣の様子は今までにないものだ。ぐったりと棠棣に手当てされている朱華は、今の状態が信じられないとでも言うように、呆然と自分のために動く棠棣を目で追っている。と、朱華が急に身体を起こして棠棣を庇うように動こうとする。


「朱華!?だめだよ、動いちゃ」

「下がって、棠棣。誰か来る」


 洞窟の向こうの暗闇から溶け出すように現れたのは、暗闇と同じ色をした露霞だった。


「なんだ、露霞か」


 露霞とは面識がないと思っていた棠棣が、自分よりも余程親しげに相手を呼んだことに、朱華が驚いて後ろ手に庇った棠棣を振り返る。そんな朱華に「大丈夫だから」と声をかけ、棠棣が前に出る。


「露霞は、もう良かったの?途中参加してくるかと思ってたのに」

「まあね。痛い目には、お前が遭わせてくれたようだからな」


 大分やりかえされたみたいだが、とぼろぼろの二人を見て露霞が言う。


「……信じられないよね。普通妹があそこまでされてたら止めにこない?乱入してくるなら、凍牙よりあんたが先だと思ってたのに。銀……露珠を攫ってくるのにも手を貸してくれたって聞いたし」

「姉妹に角を折らせたり、散々やってたお前には言われたくないなぁ。鬼の体から鬼を作れるなんて、初めて朱華に会ったときには驚いたよ」


 微妙な緊張感を含んで眼を逸らさない二人だったが、先に露霞が視線を外す。


「まあ、もういいんだ」

「ふうん?」


 露霞の真意をはかりかねた棠棣が胡乱な目で露霞を見る。東からやってきた露霞が神鹿の森近くを通った時に、鬼の力を得ようとその力を調べている棠棣と出会った。後天的に鬼の力を得た露霞の微妙な気配に、鬼の力を研究していた棠棣が気がついた。互いに家族に複雑な想いを抱えていた二人は、その点においては理解者だった。鬼の力を得た露霞を調べる代わりに、棠棣は露霞の求めに応じて白露と銀露の血を調べ、他種族がその血に惑わされない方法を見つけたりしたのだった。時折白露や血を渡すために会っていた二人だが、棠棣は朱華と露霞を会わせなかったし、露霞も棠棣に兄弟がいることは認識していたがそれが朱華だとは知らなかった。


 先ほどの凍牙とのやり取りで、この先も今までどおり露霞に協力することはできない。露霞の真意がどこにあるかを確認することは、今の棠棣にとって重要だ。


「銀露かどうか聞かれなかったんだ。血ならいくらでもあげると。だから」


 もういい。と呟いた露霞が、棠棣に庇われるようにしている朱華を見る。


「お前だって、随分変わってるんじゃないか。どこまでも、搾取し続けるんじゃなかったのか」


「まあ、ね?ちょっとやりすぎたっていうか、あー……うん、朱華に悪いことしたなって反省したのと、凍牙に命乞いして、その条件みたいなものだし」

「命乞い?」

「露珠がね。僕が銀露のことを調べていたみたいだから、その内容を知りたいって。できれば、研究をそのものを続けて欲しい、っていうようなことを凍牙にお願いしてくれて」

「それは……」


 露珠にそれを乞われたときの凍牙の表情を想像した露霞の肌が粟立つ。我が妹ながら度胸があるというか、怖いもの知らずだと思う。怠惰だ、などと非難してみたが、随分と奮闘したようだ。


 露霞が顔色を悪くしたのを見た棠棣が、それに同意するように頷く。


「怖かったよ、凍牙。露珠なんかもう泣きそうだったもん。僕に酷いことされてるときよりよっぽど怯えてたよ」


 露珠を助けに来たはずなんだけどね、と棠棣が言う。気に喰わないと思っていた露珠の立場について思いをめぐらせてしまう程度には、あの状況が恐ろしかったらしい。


 露霞が棠棣に白露や銀露の血について調べてさせたのは、自分自身について知りたい、ということに加えて、銀露の行く末を案じたからでもあった。銀露はもう少し自分達の力について知るべきだ、と。数代前から大雪山に引きこもって外に出なくなり、銀露には子が生まれにくくなっていた。銀露の里の現状を露霞は知らないが、恐らく、外敵の脅威がなくなった今も、種としては先細っているに違いない。多少の犠牲を払ってでも、外に出るべきなのだ。そのためにも、自分達の力をもっと把握する必要がある。

 露珠も同じことを考えて、不興を買うと承知で凍牙にそれを頼んだのだろうか。やっぱり俺も、まだ怠け者だったかなぁ、と露霞が誰にともなく呟いた。


「行くの?露霞。露珠に、結構酷い怪我させちゃったから」


 行ってあげて、とその先を引き取って朱華が言う。


「また凍牙に殴られてくる」と、答えて、露霞は神鹿の森を後にした。

 


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