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ガラスの靴を無くしたシンデレラ

作者: しいたけ

 その衝撃に驚いている余裕も、振り向いている時間も無く、私はひたすらに走り続けた。


 カボチャの馬車はすでに野菜に、御者はネズミに戻っていて、それまで夜の中でも光っていたドレスは、あっという間にボロボロのワンピースへと変わり果てていた。

 元に戻っただけなのに、それなのに、私の中には焦りがほとばしっていた。


 唯一残ったガラスの靴。その片割れを失いながらも、私は懸命に森の中を走り続けた。遠くから狼の遠吠えが聞こえる。早く帰らねば私の命も危ういだろう。とうに12時は過ぎているのだから……。


 舞踏会という別世界は、やはり私の身には重いし眩しすぎた。きらびやかな世界に不釣り合いなシンデレラ(灰かぶり)。不様に逃げる姿が何よりの証拠。


 後少しだけ……女々しい願いが頭の中に浮かび上がる。

 もう少しだけ……すがる思いで空を見上げた。

 一目だけでも……叶わない願いが頬を伝った。


 街はもう既に静けさの中に眠り、私は醜いシンデレラ(灰かぶり)。心は既に王子の中に忘れ去り、ガラスの靴はお城の外。


 頬を離れた涙の雫が、どうか彼の道しるべになりますよう。

 どうか願わくば、彼の心に一滴の潤いを与え下さりますように。


 このガラスの靴だけは、どうか消えて無くなりませんように……これだけが彼との最後の思い出なのですから…………。

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― 新着の感想 ―
[一言] おおーこれは切ない! 一目惚れパターン大好きです!
[良い点] シンデレラが完璧な恋愛小説に! お見事です!切なさにキュンキュンしました!
[良い点] いいですねぇ! シンデレラは帰るときには こういう気持ちだったんでしょうね [気になる点] なんでガラスの靴は残ったんでしょうね [一言] 王子の手元に残ったのが便所サンダルだったら 魔…
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