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黒猫のオリフィス  作者: くろのわーる
目覚めと鬼ごっこ

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20/27

20話






 2日目の追いかけっこが始まった。

 本日も夜が明ける前に起き出すと宿の人に無理を言って、早めな朝食と昼食用の簡単な食事を作ってもらう。


 宿屋を切り盛りする店主にはかなり嫌な顔をされたが知ったことではない。そういうところが繁盛しない理由だとも言ってやりたい。


 宿から出れば、スキルを全開にして街の中を駆け抜ける。

といっても隠密活動を心掛けながらなので極力、人の目は避けて尚且つ人の密度が高い街の中心部も避けるように外壁の方へ向かう。


 今日の俺は逃走者ではなく、勘違いした間抜けな冒険者達を狩って狩って狩りまくる狩人なのだ。




 陽が昇り街に暮らす人々の活動が活発になってきた頃。

すでに街の外縁付近にて獲物がくるのを今か今かと身を潜めて待っている。


 自慢の猫耳を駆使して集中していると遠くから「今日こそは捕まえてやる」と意気込む2人組の冒険者達が近付いてくるのを察知した。


 俺は狙いを2人組に絞り込み、気付かれないよう『忍び足』で接近を試みると行動を観察する。

 2人組の冒険者達はどうやらペアで行動しているようで右側と左側の建物の間や路地をそれぞれが別れて担当しているようでこまめに確認していた。


 彼らの探索方法は実に堅実で右側の奴も左側の奴も路地や隙間を見逃すことなく確認しているので次の行動が読めるというかわかって当たり前だ。


 まずは左側の奴に狙いを絞り、後ろからゆっくりと近付く。

そして、左側の奴がおよそ1メートル程の建物と建物の隙間を確認の為に覗きこんだところで静かに後ろから首を絞める。相手は俺よりも10cmくらい背が高いが首を絞めたまま、力ずくで路地へと引き摺り込む。

 反対側では路地を確認しようとまだ歩いているところだ。


 首に巻き付いた腕を外すそうとかなり暴れるが力を込めて絞めつければ、次第に身体から力が抜けていき、ひとりめが完了。

 落ちるまでに少し時間が掛かったので焦りながらも冒険者の足が道通りに出るように建物の隙間に放置する。

この措置はわざともうひとりの冒険者に発見させて誘き寄せる為だ。


 俺は冒険者を放置するとその場で飛び上がり、両手足を広げて左右の壁を支えに壁を昇っていく。


 一見、壁を登ったくらいではもうひとりにすぐバレそうではあるがそこには単純明快なトリックが仕掛けてあるのだ。

そう、俺が倒した冒険者をわざわざ見えるように道に出した足だ。


 これは初歩的な手品でも用いられるテクニックで片方の物に目を引き付けて置いて、その間にあれこれするという大概、誰もが一度は引っ掛ったことがある手法を応用させてもらった。


 案の定、もうひとりが異変に気付き駆け寄ってくる。


「おいっ!どうした!いったい何があったんだ!」


 まんまと引っ掛ったもうひとりが倒れた相方に近付いたところで俺は身体を支えるために広げていた両手足をしまい落下する。

 目標は勿論、意識がある方だ。


 駆け寄ってきた冒険者の肩に着地すると相手は重さと衝撃に耐え切れず倒れたのでそのまま背後からお決りのチョークスリーパーをごちそうする。



「だ、だずげ・・・で・・・」


 苦しさから藻搔くように空中に手を泳がすが容赦はしない。


 無事に相手が落ちたことを確認すると一仕事終えた俺は良い汗をかいたといわんばかりにかいてもいない額の汗を腕で拭う仕草をする。


気分はまさに必殺仕事人。


 獲物を仕止め終われば、ここで大事な大事な検証結果を確認する。ちゃんとスキルポイントが増えているかどうかだ。




 結果は1人につき1ポイントがしっかりと増えていた。このことに俺のテンションはまさに青天井。


 たったこれだけのことで貴重なスキルポイントが増えるなんてボーナスステージとしか思えない。しかも、捕まらなければ追いかけっこのお金まで貰えるなんて狩猟意欲を掻き立てる。


「さてと次の獲物はどこかな?」


 これに味をしめた俺は獲物を探し求めて街を徘徊し始めるのであった。






◇◇






 今日も無事に陽が沈み、分厚い夜空と輝く星々が主役になったことで俺の狩りは終わりを迎えた。


 今いるのは街壁に近く比較的貧しい者達が多く住まう地区にある小さな空き地だ。

 周りには俺に伸されて、死屍累々といった具合に冒険者達が仲良く重なって寝ている。


 なぜこんなにも冒険者達がまとまって倒れているかと聞かれれば、それは俺が来る者を拒まずに殴り倒したからだ。

 流石に1人ずつ丁寧に首を絞め落としていくのは手間が掛ることに気付き、途中でじゃあ殴ればいいじゃんって気付いてからは早かった。

 来た奴の顎を殴り、頭を蹴り抜き、腹を抉り、次々と一撃で沈めていく。

なかにはしぶとくなかなか気絶しなくて運悪く俺に複数回も殴られ、武器を抜いた奴らもいてついつい俺も感情的になってしまいは徹底的に殴ってしまったがそこはご愛嬌ていうことで。


 それでも頑張った甲斐があり、スキルポイントも貯まっているだろうし、ホクホク顔で冒険者ギルドに報告へ向かえるがその前にポイントの確認をしておく。



【名前】:オリフィス

【種族】:猫人種[黒猫]

【レベル】:3

【クラスⅠ】斥候Lv3

【クラスⅡ】格闘家Lv3


【スキル】44P

地図化Lv-、聴覚強化Lv7、暗視Lv5、危険察知Lv6(up!)、隠密Lv7(up!)、忍び足Lv6(up!)、逃走術Lv1(new!)、短剣術Lv2、格闘技Lv6(up!)、奇襲Lv4(up!)、身体強化Lv6(up!)、回避Lv3、自然治癒Lv7(up!)



 ポイントは40Pも増えており、スキルレベルも軒並み上がっている。

そして、新たに覚えたスキルがひとつ。


[逃走術Lv1]

・スキルレベルに応じて、逃走時、身体能力が上昇する。

※10人以上の追跡者から捕まることなく逃走し続ける。


 このスキルさえあれば、明日からの追いかけっこが更に楽になりそうだ。


 冒険者ギルドに向かう前に武器を抜いて襲い掛かってきた馬鹿共から冒険者カードを忘れずに回収する。


 気を失って倒れている冒険者達はこの後、生活が苦しいこの地区の住民達によって身ぐるみを剥がされることになるが俺は何も知らないまま、意気揚々と冒険者ギルドに向かうのであった。








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