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黒猫のオリフィス  作者: くろのわーる
目覚めと鬼ごっこ

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11/27

11話






 朝日が昇り優しく部屋の中を照らす頃、俺はベッドから起き上がり伸びをする。


 今日は延びに延びていた依頼を受ける日だ。

 初めての依頼ということもあり、いつも以上に気合いが入っている。


 簡単に身支度を済ませると宿の食堂へと向かい、よく噛んで朝食を頂く。


 朝食が済めば、脛当てを身に付けて忘れ物がないかを確認する。準備が整ったら冒険者ギルドへと直行。混雑していようが満員電車で鍛えられた俺の身のこなしを見せてやる。




 依頼が張り出されているボードから人混みを避けて、遠回しに依頼を物色する。

 俺の身のこなしを見せてやるなんて言っといて、このていたらく。

 別に怖気づいた訳ではなく、このオリフィスの視力が良くて近付かなくても見えることに気付いただけだ。


 この街に来てから2週間以上が経つが初めて受ける依頼には目星をつけていた。

 俺が受ける依頼はずばり常設依頼だ。


 まあ、まだ低ランクだから受けられる依頼には限りがあるし、ダンジョンに潜るにもEランクにならなければ潜れないので自然と常設依頼しかなくってしまうのだがゴブリンの討伐やらホーンラビットの毛皮と肉の入手、そして、薬草の採取などそこはファンタジー物のテンプレでもあるし問題ないだろう。


 常設依頼を確認すると俺はギルドを出て、街の外を目指す。


 入街の際は身分の確認を求められたが出る時は自由なようで素通りだ。街を出れば、すぐ近くには森が広がっている。

 奴隷として輸送されていた時も思ったがこの世界にはとにかく森が多い。

 自然が豊かといえば、聞こえは良いが単なる未開拓地だ。特にこの街にはダンジョンがあるので産出される資源を輸出して儲けているから領主も今更、農業に力を入れて開拓するつもりがないのだろう。


 俺的には狩り場が近くて助かるからいいか。


 森に着けば、自慢の猫耳をまっすぐに立てて辺りの音を聞き分ける。


『カサカサ』


 前方100メートル程から枯れ葉を踏む音を捉える。

 さらに音の発生源に耳を向ければ、音の強さや間隔から獲物の大きさや何をしている最中か頭にイメージが浮かぶ。


 獲物は『ホーンラビット』。体長は40cmほどで餌となる草や木の実、キノコでも探しているのだろう。そんな足取りだ。


 ホーンラビットの方はまだ俺の存在に気付いていないがうさぎな訳だし奴の自慢も耳だろう。後は跳躍力か?

 ここは人生初めての狩りなので気付かれないように慎重に行こう。


 足音に気をつけて、なるべく落ち葉が少ないところや倒木の上を歩いたりとホーンラビットの後方に回り込む。

 教官との訓練では感じなかった猫人種としての狩りの本能が呼びまされるようだ。

 獲物に近付くにつれて、感覚が研ぎ澄まされていく。


 ホーンラビットまでの距離は一跳びの距離。相手は咀嚼に夢中で完全に油断している。

 ゆっくりと鞘からダガーを引き抜き、小さく息を吐くと飛び掛かる。狙いは急所である首だ。


 俺が着地するのとダガーがホーンラビットに突き刺さるのは同時だった。


 「ギュイッ!」と小さく曇った喘ぎをあげるがしっかりと首に刺さったダガーでホーンラビットはほぼ即死を迎える。

 近付くまでに時間は掛かったが初めての狩りにしては完璧だったと思う。


 仕留めたホーンラビットは手早く解体していく。

 解体自体は村で過ごして時に何度も親の手伝いでヤギを解体した経験が活かされた。

 毛皮を剥き、不要な内臓は軽く地面を掘ってそこに捨てる。残った食べられる肉の部分は持ち運べるように毛皮で包みコンパクトにしておく。


 一区切りついたところでお楽しみのステータスを開く。レベルが上がっておれば、嬉しいのだがはてさて・・・。



【名前】:オリフィス

【種族】:猫人種[黒猫]

【レベル】:2

【クラスⅠ】斥候Lv2

【クラスⅡ】格闘家Lv2


【スキル】30P

聴覚強化Lv5、暗視Lv5、危険察知Lv3、短剣術Lv1、格闘技Lv5、身体強化Lv1、回避Lv2、自然治癒Lv1



「よしっ!」


 ホーンラビット一匹でレベルが上がっていたのは重畳だ。そして、予想通りにスキルポイントも増えている。しかも、1レベル上がることにスキルポイントが10ポイントなら悪くない。


 この程度のモンスターなら俺の実力でも苦戦することはないと思うからすぐにスキルポイントを使うこともないだろう。


 油断は大敵だが初めての狩りで興奮したのか、はたまた獣の本能によるものなのか判別出来ないが気分は最高だ。


 この調子で今日は狩りまくってやる。


 再び猫耳に神経を集中させて辺りを探っていく。


「(見つけたっ!)」


 僅かに口角が上がる。


「(やや右方向、距離は30メートル程でこちらに近付いて来ている)」


 解体した時に出た血の匂いに誘われてやって来たのだろう。体長は20cmくらい。

 足取りのリズムや歩幅がホーンラビットとは異なることから恐らくトゥースラットだと思う。


 この森に生息するモンスターは資料室にあった資料で一通り、確認し記憶している。

 本来ならギルドの受付で情報料と引き替えに教えて貰えるのだが資料室ならレティシアさんの許可さえあれば、タダで読み放題なのだ。


 匂いの元を辿るようにゆっくりと迫ってくるトゥースラットを待ち構えるべく近くの木の影に隠れて息を殺す。

 何も追っ掛けるだけが狩りではない。待ち伏せするのも立派な手法だ。


 「カサカサ」と這いずる足音が徐々によく聞こえてくる。


 そして、俺の近く。内臓を埋めた辺りで足音が止むと土を掘り返す音に変わる。

 集中して音を聞き、逸る気持ちをまだ早いと抑え込む。狙うは餌を見つけた瞬間だ。


 音が止まった。


 すでに握りしめていたダガー片手に一気に飛び出す。

 思った通り、資料室にあった本の挿し絵と同じモンスターが掘った穴から内臓を取り出すところだった。


 こいつも目の前の餌に気をとられているようで俺に気付く間もなく、命を散らしていく。


 呆気ないものだと思いながら討伐証明部位のしっぽを切り落とし、残りは掘り返された穴に捨てる。

 頑張って自分で掘った穴に埋められるとはなんだか憐れだがこれが弱肉強食というものだ。

 ちなみにトゥースラットの肉も食べられるらしいが美味しくなく売ることも出来ないとのことなので捨てた。


 一狩り終わり、気持ちも新たに次の獲物を探す。

 森に来て早々に2匹も狩れたのは素直に嬉しい。

 この調子で夕方までに狩れるだけ狩ってやると決意をし再び集中するのであった。









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