エピローグ
ある所に、何かを…誰かを導く使命を持って生まれた双子が居ました。
「安寧の夜空」と「導きの星」と予言されたその子供は、神守という、町を守る神に仕える一族の元に生まれ、一族を導くと思われていました。
しかし、子供には腐敗し堕落した親族を導く気は、これっぽっちもありませんでした。
それでも、神守の名を背負う以上、神の守る町は守りたいと、妖を退ける退魔士の任に就いていました。
――それは、桜の散りゆく春の事でした。
双子はいつものように妖退治に向かい…そのまま、消息が絶えたそうです。
残っていた痕跡から、退けようとしていた妖と相打ちになり、そのまま2人とも消滅してしまったのだろう、と言われています――。
■ ■ ■ ■
時は流れ。
神守の町から少し離れた、ある大学。
「双理!お前ら課題終わってるか!?」
ドタバタと駆け込んできた友人の姿に、わたしはやっぱり、と恋人を顔を見合わせた。
「「終わってるけど、見せないよ?」」
ぴったり重なった言葉はいつもの事。…まあ、ずっと一緒に居るしね。
「くっ…やっぱダメか…!」
「…写すのはダメだけど、手伝いはしてあげようか?」
「光星、いいの?」
「夜がダメっていうなら諦めるけど、一応こいつも友人だしね」
うん。それはわたしも同じだ。計画性が無いアホなようで案外直感が良いこの男は、なんだかんだ言ってわたしも光星も友人と認めている。
「…まあ、それはわたしも同じだしね。うん、お手伝いならいいよ、黒川」
「! よっしゃあ!」
そう言うと、ぱああ、と笑顔を輝かせてあっという間に元気になる現金さが少しおかしくて、思わず笑みが零れた。
「なー光星。星空の双子って知ってるか?」
「「え?」」
「いくら本好きでも知らないよなー。俺の姉ちゃんが最近出版した本の題名なんだよ」
ああ。そっか。
「…知ってるよ」
「わたしも」
「へ!?知ってるのか!?」
「「うん。大好き」」
「へー…へー!そっか、嬉しいな!」
――星空の双子、という名は、退魔士として…まだ「神守」の名を背負っていた時に、ふざけ半分で2人で考えた2つ名だ。
星と空、2人で1人の退魔士。
…その名前を知るのは、自分たち双子と…あの優しい女教師だけだ。
おしまい
補足コーナー
前話の春子の「死んだふりしてみない?」というのは、つまりは「妖と相打ちになったように見せかけてトンズラする」という事です。おとぎ話風の語り口の所がそれの説明ですね。
つまり、「神守光星」と「神守夜」は死んだ事になりました。そして、双子は双理という苗字を名乗って「恋人(というか夫婦)」として新たな生活を始めた…という事です。
神守のきょうだいは死んだ事になったのだから、素直になっても…関係の名前を変えたいと思ってもいいのでは?と2人が思い、正式に恋人になった感じですね。
それと、黒川の反応から解るかもしれませんが、夜は大学では男装をやめています。普通に女性として通っていますし、光星とのラブラブっぷりは構内で有名です。光星も包帯は必要無くなったので巻いていません。
2人の友人として出てくる「黒川」はお察しの通り黒川春子の弟です。一応名前は夏斗ですが出てこないので覚えなくとも構いません。
以上、お読みいただきありがとうございました!
評価や感想を頂けると作者が狂喜乱舞して喜びます。