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プロローグ
あれは確か、小学校に上がる前の事。
「夜、光星。よく聞きなさい」
父親の怒鳴り声から逃げ出した僕たちをクローゼットの中に匿ってくれたあの人は、見た事のないほど真剣な顔をしていた。
「貴方達は、確かに予言の子、導く星であり安寧の夜空である双子よ。
でもね、誰を導くかは、誰に安寧を齎すかは、貴方達が自分で選んで良い事なのよ」
息をひそめて、手を繋ぐ僕たちに告げる声も、怖いぐらいに真剣で、真面目で。
幼心に、いつも楽しそうにふざけているこの人でもこんな真面目な声が出来るんだ、と思った事を覚えている。
最後に僕たちの髪をぐしゃぐしゃと力強く撫でてそのまま部屋を出て行ってしまったあの女性は……、今、どうしているのだろうか。