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Take6

 昼過ぎ。

 また、勇者召喚が始まる。


「『我、神に祈らん。我らが祖国を魔の手から守るための力を、我の手に。異界の勇者を時空を越えて、我らの救世主をここに喚ばん。我らが信ずる神の名の下に』――勇者召喚」


 召喚の間が光に包まれる。皆はすでに慣れている。


((((さすがに魔物はもう出ないよな……))))


 皆がさりげなくフラグを立てたために召喚されたのは――











「「うおおおおん、うぉぉぉぉぉぉぉぉん、しくしく」」

「きゅい! きゅい! きゅいいいいいい!」

「「「「何だあれ……魔物?」」」」











 召喚されたのは魔物だった。十数匹のゴブリンとそれぞれ色が違う九匹のスライムだった。しかしただの魔物ではない。


「あれは魔物の森に棲まう、オモイゴブリンとノネット(九重奏)スライムです。オモイゴブリンは数が多いですが滅多に人前に出ず人畜無害な魔物です。ノネットスライムは火水風土雷氷光闇木の九属性をそれぞれ司る九匹のスライムで各属性の魔法を使えます。それに世界にこの九匹しかいませんので出来るだけ殺さないでください。これも人畜無害です。他の特徴は……まあ、イリスさんと同類ですよ」


 魔物に詳しいウルトが教える。


「オモイゴブリンにノネットスライム?」

「はい、オモイゴブリンはその名の通り重いんです」

「重い? 体重がですか?」


 イリスはそう言い、オモイゴブリンに近づく。

 するとオモイゴブリンの一匹が突然、泣き出し――


「うぅ、おいおい聞いてくれよぉ。俺はなぁ、昨日妻に逃げられたばっかなんだよぉ。子供は残して金を持ってってよぉ。これからどうしろってんだよぉ」


((((重い……))))


「この通り、話が重いんです」


 他のオモイゴブリンが喋り出す。


「一週間前、片想いをしている女の子から「念話友達になろうよ」と言われ喜びました。その日からずっと話しかけても無視されるようになりました。男友達から聞いたら、俺のことがウザくてやったそうです。死にたい」


((((お、重い……))))


「一ヶ月前、村のアイドル的存在の女の子から告白されて付き合うことになりました。両想いでした。でも、二日で浮気されました。早すぎだろ、せめて徹底的に隠せよ。それか、俺に告白するなよ。ただただツレぇよ」


((((お、重い……))))


「二週間前――」

「もうやめろ」


 イリスが強制的にやめさせる。

 皆ももうもう聞きたくないといった様子だ。


「そんな感じで重い話をするだけなんです、この魔物は」

「こいつらの村どうなってんだ、カオスだろ」

「オモイゴブリンの村は森の奥深い所にあるんです。近くには大狼もいますし、直接見たものはいないんです。まあ、その分謎に包まれているので研究者もいます」

「ちなみに私もオモイゴブリンの研究をしてますよ」


 副団長のアルマが答える。


「えっ、マジ?」

「はい、本当です。里帰りする際に森に寄り道をしているのですが今までに二度しか見たことありません」


((((二回も見たことあるのか))))


「ウルトさん、少し借りますね。端の方で研究してます」

「あ、はいどうぞ」


 アルマがオモイゴブリンを連れて、彼らの話を聞く。重い話なのでそこだけ暗い雰囲気が漂っていた。


「それでこっちは?」


 イリスがノネットスライムは指差す。


「ノネットスライムは先程言った通りです。大きな特徴は……彼らと話せば分かりますよ」

「話す?」


 イリスがノネットスライムに近づく。


「おいおい、そんなに近づくんじゃねーよ。俺の地獄の炎で燃えるぜ」

「へ?」

「俺らは!」

「九属性を司る」

「精霊的魔物」

「「「「「「ノネットスライム!」」」」」」

「俺は、火属性を司る、灼滅(しゃくめつ)のクリムゾン・ナーガ」

「私は、水属性を司る、水葬(すいそう)のアクア・ソーテ」

(わたくし)は、風属性を司る、嵐條(らんじょう)のウェントゥス・ファース」

「俺っちは、土属性を司る、大帝(だいてい)のエーアトボーデン・ラージ」

「アタシは、雷属性を司る、雷紅(らいこう)のトニトルス・ジッタ」

「ワタシは、氷属性を司る、雪雹(ゆきひょう)のニクス・ジュネー」

「我は、光属性を司る、光華(こうか)のルーメン・アード」

「余は、闇属性を司る、深淵(しんえん)のプロフォンドゥム・デート」

「僕は、木属性を司る、樹羅(じゅら)のアルボル・ノート」


 それぞれが香ばしいポーズを取りながら自己紹介をする。スライム体型だがなんとも痛々しい。

 最後のスライムだけイヤイヤやっていた気がする。


「あぁ、確かにイリスと同類だな」

「なら私も自己紹介をしましょう」


 ノネットスライムにつられてイリスも自己紹介するらしい。


「私は全属性を操る、滅神(めっしん)のイリス・ラック・マーテンダー、ふっ決まった」


 一瞬の沈黙が訪れる。正確には、オモイゴブリンの泣き声だけが聞こえる。


「「「「イリス様! 弟子にしてくれ!」」」」

「全属性を操れるとは、先代魔王のよう」

「ぜひ、私たちの師匠に!」

「それか、我らを使い魔に!」

「ふっ、構いませんよ。全員、私の弟子兼使い魔にしますよ!」

「「「「ありがとうございます!!!!」」」」


 ノネットスライムがイリスの弟子兼使い魔になった。


 木属性のアルボルがウルト達に近づく。


「なんかすみません。僕たち、勇者召喚に巻き込まれただけなのに……弟子兼使い魔になっちゃって」

「なぜ勇者召喚だと?」

「魔法陣が先代ノネットスライムから教えてもらったものと似ていたので」

「先代?」

「はい、僕たちは17代目です。僕たちも寿命があって、数千年周期で変わるんです。ちなみに僕たちが生まれたのは23年前ですよ」

「そうでしたか。しかしあなたは彼らと特徴が違いますね」

「あぁ、実はノネットスライムの特徴はスライムそれぞれなんですけど、皆んなクー君、火属性のクリムゾン君に影響受けちゃって」

「そうだったんですか」

「おーい、アルボル! お前もこっち来いよ!」

「分かった! ノネットスライムの中で知識人で常識人なのは僕ですから、これから聞きたいことがあったら僕に聞いてください」


 アルボルはそう言い皆んなの所に戻っていく。


「良いノネットスライムだな」

「はい、後でノネットスライムについて聞きたいです」


 ウルトと国王が話しているうちに、イリスとノネットスライムが使い魔の契約を完了していた。


「うむ、もう明日するか。お主ら! 次の召喚は明日じゃ! 明日!」


 その日も勇者召喚が失敗に終わった。しかし、アルマはオモイゴブリン――後々、ウルトが送還した――の研究、イリスは使い魔が出来たので結果オーライだろう。イリスとノネットスライムはとても幸せそうだった。ちなみにその日のイリスの仕事はとても捗ったという。

読んでいただきありがとうございます。

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ツイッターの方もよろしくお願いします。


この作品はTake9までとエピローグで終わりますので、エピローグまで毎日投稿します。よろしくお願いします。

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